岡山、広島両県でミッションスクールを運営するノートルダム清心学園(岡山市北区伊福町)の理事長で、ベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」の著者としても知られる渡辺和子(わたなべ・かずこ)さんが30日死去したことが、関係者への取材で分かった。89歳。死因は不明。
渡辺さんは北海道旭川市生まれ。聖心女子大を卒業し、上智大大学院修了後の1956年、ノートルダム修道女会に入会した。米国留学を経た63年に36歳の若さでノートルダム清心女子大(岡山市)の学長となり、90年に同学園理事長に就任した。
岡山の地で半世紀にわたって学生に寄り添いながら、学科の増設や大学院の開設など教育内容の充実を図り、地域の女子高等教育の発展に貢献。付属の幼稚園長や小学校長なども兼務し、私学振興にも取り組んだ。生涯現役にこだわり最晩年まで教壇に立った。日本カトリック学校連合会理事長を歴任するなど修道者としても精力的に活動した。
9歳の時には軍事クーデター「二・二六事件」で、陸軍教育総監だった父・錠太郎が凶弾に倒れた現場に居合わせ、無数の銃弾を浴びた父の最期を見届けた。2012年に出版した「置かれた場所で咲きなさい」は数々の困難を乗り越えてきた実体験に基づく言葉が広く共感を呼んだ。
功績がたたえられ1979年に山陽新聞賞(教育功労)、89年には岡山県三木記念賞を受け、今年4月に旭日中綬章を受章した。