電通の女性新入社員の過労自殺問題で28日、厚生労働省が同社と幹部1人を書類送検した。まずは立件対象を過労自殺した社員の上司に絞ることで、11月の強制捜査から1カ月半での「スピード捜査」となった。同社では長時間労働が常態化していたとされ、今後は他の幹部らの刑事責任追及が焦点となる。
今回の捜査は、ベテランの労働基準監督官で構成する「過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)」を中心に行われた。ただ過去のケースをみても、違法残業での書類送検は一般的に強制捜査から半年以上かかる事例が多い。残業時間を特定するため、大量の労務関連の資料を分析するのに時間がかかるためだ。
遺族側の代理人弁護士によると、過労自殺した高橋まつりさん(当時24)は上司からの指示で残業時間を過少申告していたとされる。厚生労働省関係者によると、電通では高橋さん以外にも複数の社員が過少申告をさせられていた疑いがある。
労基法違反の容疑で書類送検するためには、実際の残業時間などを特定する必要がある。高橋さんに関しては今年9月に労災認定を受けた際、残業時間の解明も行われている。違法残業の実態がある程度明らかになっており、当時の上司については先行して書類送検することが可能だった。
厚労省は本社の別の幹部のほか、支社でも違法な残業を社員にさせていた疑いがあるとみており、年明け以降も捜査を継続する方針だ。