2016年12月31日をもって、私 shao1555 こと澤田は Supership を退職した。前身となるビットセラーを川村氏と共同設立したのが2011年。最初の4年はビットセラーの経営者として、直近の1年はSupershipの従業員というかたちで5年ほど関わらせていただいた。
ビットセラーの設立から取締役を退任するまでについては以下のエントリを参照していただきたい。
Supershipという会社でやってきたこと
Supershipは、KDDIの出資により、アドテク企業のスケールアウト、ハウツーメディアなどを運営するnanapi、そしてビットセラーの3社が合併してできた企業だ。さらに本日 (2016年12月28日)、動画広告を手がけるアップベイダー、ECの接客プラットフォームを手がけるSocketもここに合併することが発表された。
多くの会社を一つの旗標のもとに集結させ、広告とメディアの両面をを広くおさえることで、インターネット領域で強い存在感を示しつつある。
そんな経緯でSupershipに多種多様なバックグラウンドのメンバーが集まっていることから、現場には様々な価値観や手法が入り交じっている。それらを掛け合わせることで業務が効率化することもあれば、時には軋轢を生むこともある。
僕はいちエンジニアとして実装の傍ら、各所のよいところを集めて開発プロセスの整理をしてきた。それに加え、テクノロジーを開発の現場以外、日々の煩雑な業務などにもあてはめ、社内の業務負荷を軽減する取り組みを推し進めた。
幸いなことに、Supershipは意思決定が速く、試行錯誤を繰り返していく中で業務効率を改善する施策を数多く打ち出すことができた。また、こうした取り組みは社内全体に広がりつつあり、多くの部署で業務負荷の低減に向けて取り組むようになった。
Makers for Workplace という考え方
ソフトウェアの開発においては、コンポーネント化とオープンソースコミュニティの興隆により、アリモノの部品を組み合わせることで機敏な開発プロセスを構築できるようになった。
インターネットインフラでは、Amazon Web Services に代表される IaaS により、高額なハードウェアの購入なしに、必要なリソースを即時に調達することができるようになった。
ハードウェアの領域では agile manufacuring や公板 / 公模 といわれる再利用可能なモジュールの流通が存在する (参考: 深圳のエコシステム) ことにより、多種多様なハードウェアが生まれ、イノベーションの源泉になっている。
ソフトウェア、ハードウェア、インターネットサービスに一貫して再利用可能な部品が大量に存在し、低いコストでシステムを構築できるようになったというのは非常に重要な変化である。こうしたコンポーネントを組み合わせ、ガレージからハードウェアを創り出す活動のことは「メイカームーブメント」と呼ばれている。
※ メイカームーブメントについて、 深圳観察会でお世話になった高須さんのスライド Maker Movement in Asia -Shenzhen, Singapore, ChengDu- がわかりやすいので紹介する
メイカーの原動力は「自分の生活をよりよく、より楽しくするための創造的活動」であり、大きな投資や専門知識を不要としたエコシステムの存在がこれを支えている。Supership では Slack の bot や IoT デバイス、Google スプレッドシートの自動化など、様々な DIY があちらこちらで行われていて、そのモチベーションは「自分たちの仕事をよりよく、より楽しくしたい」というものであった。それは、まさに職場で発生しているメイカームーブメントと言えるのではないだろうか。
次の挑戦: 社会のメイカーズを増やす
インターネットがパソコン通信より魅力的になったのも、スマートフォンがガラケーを圧倒したのも、開発のための障壁が圧倒的に低くなり、成果を共有する仕組みがそこにあることから、作り手が身近な存在になったからだと思う。だから仕事のためのシステムもベンダーに発注するのではなく、自分たちでつくり、その成果を広く共有できるようになれば、圧倒的に楽しくて効率の良いものになると信じている。
Supership をはじめとしたエンジニアに恵まれた企業はRaspberry Pi や Amazon Dash ボタンでアクションを実行し、AWS で動作させ、G Suite (Google Apps) の社内ディレクトリを参照し、蓄積した過去のパターンをもとに TensorFlow が判断して Slack の bot と連携させるようなシステムを書けるが、世の中の多くの企業にとってはまだまだ敷居が高い話だと思う。
どんな (会社や役所などの) チームであっても、自らの手で仕事をハックし、その成果を広く社会に還元できるようにする。そのために必要なエコシステムを作るために、ここに Supership を飛び出して、新たな挑戦をはじめることとした。
具体的なプランについて
たいそうな話を書いてしまったが、今のところ「次にこれをやる」という具体的な内容は決まっていない。ノープランである。
向こう半年ぐらいかけて、次のアクションのために足元を固めていく所存である。前述の通り、再利用可能なモジュールはいくらでもあり、僅かなコストで挑戦することができる。まずは個人でできるところまで、プロトタイピングを進めていきたい。
幸いなことに、いくつかのお仕事もいただいており、こうした繋がりを最大限に活かし、計画をブラッシュアップしていきたい。
結びに
Supership ではチームメイトに恵まれ、幅広い仕事をやらせてもらったことで次の挑戦へのきっかけを得られた。今の会社では、僕の目指すステージ (自分の手で新たな挑戦をしたい) を実現することが難しいから退職することとしたが、とてもよいチームを抜けることとなり名残惜しさも否めない。ビットセラーから数えて5年余り、支えてくれたすべての方に感謝の念を表したい。
みんなが欲しがるような、そして自分が欲しくてたまらなくなるようなプロダクトづくりを目指し、来る年は全力で励んで行く所存である。
来年もよろしくお願いいたします。どうぞよいお年をお迎えください。
追伸: 次の仕事にむけて気になっているものをまとめました。ご覧いただけると幸いです。
*1:ITエンジニアが退職エントリを書くときによく掲載される画像。ref: ssig33.com - この画像なんなの?