【エルサレム大治朋子】ケリー米国務長官は28日、イスラエルとパレスチナの和平問題についてワシントンで演説した。国連安全保障理事会が23日に採択した対イスラエル非難決議で、米国は、これまでのように拒否権を発動せず、決議採択を容認した。ケリー氏はその理由について、イスラエルが、国際法に反して占領地での入植(住宅)地建設を拡大させていることへの警告だとの認識を示した。
70分におよぶ厳しい口調での演説の大半は、イスラエル批判だった。米主要閣僚が、同盟関係にあるイスラエルを公然と酷評するのは極めて異例だ。
イスラエルは1967年の第3次中東戦争で占領、併合したヨルダン川西岸地区や東エルサレムにユダヤ人入植地を建設している。米政府は、パレスチナ経済を支える一方、同盟関係にあるイスラエルに巨額の軍事支援を提供。入植活動を批判しながらも、安保理での入植地非難決議には拒否権を行使しイスラエルの国際的孤立を回避する「二重基準」を保持し、双方の生命線を握る形で中東での影響力維持に努めてきた。
ケリー氏は2013年夏に再開された和平協議を積極的に仲介したが、イスラエルが入植活動を停止せず、14年春、交渉は頓挫した。23日の決議採択について、ネタニヤフ首相は「友達なら、(イスラエルを批判する)安保理に連れて行ったりしない」と猛反発。これに対しケリー氏は演説で「米国の友情」とは、やみくもに支持することではなく「厳しい真実を語り合う」ことだと反論。現在のネタニヤフ政権は「イスラエル史上最右翼で、(入植活動推進を求める)過激派に突き動かされている」と酷評した。
イスラエルの現閣僚には、入植者も含まれている。最近では、既存の大規模な入植地とは別に、パレスチナ自治政府の統治エリアに深く入り込んだ飛び地での新たな入植活動を合法化する法整備を検討し、過激化している。
ケリー氏は、オバマ政権発足後の09年以降、こうした飛び地で入植者が建設した住宅などが2万戸増加し、既存の大規模入植地を連結させ、将来のパレスチナ国家の領土を分断する役割を担い、イスラエル領土拡大の既成事実化を促すものだと指摘。パレスチナ国家樹立による「2国家(共存による)解決」ではなく、イスラエルが占領地を併合する「1国家解決」に傾いている、との強い危機感を示した。
ただ、ケリー氏が演説で具体的にあげた中東和平に向けての「六つの方針」は、クリントン元大統領が退任直前の00年に発表した基本概念をほぼ踏襲する内容。パレスチナ国家を米国が一方的に承認することもないとの考えを示唆した。演説は、親イスラエルを鮮明にする次期トランプ政権や、国内外に向けて、米国が堅持してきた「見解」を改めて明示。現状に警鐘を促す狙いがあったと見られる。