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電通社長辞任へ 過重労働一掃の契機に

 一人の新人社員の過労自殺が大企業のトップを辞任に追い込むことになった。長時間労働が横行している会社は相変わらず多いが、社員の命の重さを自覚し、過労死・過労自殺の一掃へ取り組むべきである。

     広告代理店最大手・電通の新人社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺した問題で、東京労働局は高橋さんの上司と同社を労働基準法違反の疑いで書類送検し、これを受けて石井直社長が辞任することを表明した。

     「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは」。電通の行動原則である「鬼十則」には過重労働を促す文言が並ぶ。社員は入社直後から長時間の残業を余儀なくされることが多く、高橋さんの残業時間も過労死ライン(月80時間)を大きく超える105時間だったと労働基準監督署は認定した。

     電通ではこうした違法残業が常態化している疑いがあるとして、各地の労働局が11月に全国の本支社を家宅捜索した。同社は過去にも若い社員が過労で自殺し、2010年、14年、15年に労基署から長時間労働の是正勧告を受けている。上層部への捜査は越年して継続されるが、改善されない企業体質には徹底してメスを入れるべきだ。

     電通だけでなく、社員教育や業績アップのためには厳しい長時間労働も必要と考える経営者や幹部社員は多い。

     音楽・映像ソフトの製造販売会社「エイベックス・グループ・ホールディングス」は長時間残業や時間外の割増賃金の不払いで今月、労基署から是正勧告を受けた。松浦勝人社長は「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」とブログで主張し、物議をかもしている。

     企業トップの意識や労務管理のあり方が根本的に変わらない限り、社員を追い詰める長時間労働は改善できないだろう。

     厚生労働省は労基法違反を繰り返した企業名の公表対象を拡大し、違法残業時間を「月100時間超」から「月80時間超」に引き下げ、労基署の指導を受けても改善しなければ公表することを決めた。

     サービス残業をなくすため、企業に社員の労働時間を正確に把握させる仕組みも導入する。

     現在も労働時間は週40時間と法で定められているが、労使で「36(さぶろく)協定」を結べば時間制限を外すことができる。相反するダブルスタンダード(二重基準)を許してきた責任は政府にもあるのだ。

     「働き方改革」の長時間労働是正の議論は年明けから本格化する。抜け道を許さないような労働時間の規制が必要だ。

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