| 高知県立のいち動物公園が展示しているニホンカワウソの剥製(同公園提供)
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県生物学会員で五島市上大津町の映像作家、上田浩一さん(47)らが、環境省のレッドリストで「絶滅種」になっている国特別天然記念物ニホンカワウソが、かつて五島列島に広く生息し、高知県須崎市で生きた姿が最後に目撃された1979年以後も五島市内に生息していた可能性を26日、日本哺乳類学会誌「哺乳類科学」で発表した。
上田さんと、国立研究開発法人・森林総合研究所九州支所(熊本市)森林動物研究グループ長の安田雅俊さん(48)が共同で調査・執筆し、発表した。
ニホンカワウソはイタチ科で体長1メートル前後。戦前は全国に生息していたが、毛皮目的の乱獲や河川の汚染で生息地が破壊されるなどして激減した。同省は2012年、生息を30年以上確認できていないことから絶滅したと判断。レッドリストで「絶滅危惧種」から「絶滅種」に改訂した。
論文では、現在の五島市岐宿町川原で育った90代男性が、81年秋に近くの川のふちで見つかったニホンカワウソの死がいを見たことを紹介。男性の妹の入院の時期と重なって正確に記憶していたことや、男性がそれまでもニホンカワウソを見たことがあることなどから、信ぴょう性は高いとしている。
論文によると、既に個体数が減っていた20年代以降も、ニホンカワウソの生存に必要な淡水が多く存在した五島列島では30〜50年代、福江島や黄島でその姿を見たり、鳴き声を聞いたりすることが珍しくなかった。ほとんど知られていない鳴き声については、聞き取り調査した複数の高齢者が「オギャーという赤ん坊のような声だった」と証言したことを記載している。
一方、同様の目撃情報は県外でもあり、愛媛県は県版レッドデータブックでニホンカワウソは絶滅種ではなく絶滅危惧1A類に指定。同県自然保護課によると、79年以降の目撃情報を基に、数年前からは県内に監視カメラを設置し、現在も県を挙げて生きた姿を確認しようとしている。
ただ、愛媛も五島も物証はない。上田さんと安田さんは「埋もれている話はまだあるはず。当時を知る人は既にかなり高齢。さらに範囲を広げて早急に調査する必要がある」と、ニホンカワウソの写真や毛皮などの物証を求めている。