リポート:宮川俊武(おはよう日本)
都内に住む、71歳の男性です。
ひきこもる41歳の長男と2人で暮らしています。
これまでは再就職をしてほしいと働きかけてきました。
しかし長男が40歳を越えてから、考え方が変わってきました。
父親(71)
「どうしたらいいか、わからなくなってしまった。
八方塞がり。」
今は、できるだけ資産を残そうと、切り詰めた生活を送るようになりました。
毎月26万円の年金のうち、18万円を貯金。
食費を抑えるため、自分で野菜を作っています。
外食や趣味などを極力控えていますが、これで十分なのか不安はつきません。
父親(71)
「子どもが働けない、じゃあどうするんだ、自分の資金をこれにあてようか、でもそれもいずれ限界につきあたる。
ぐるぐる同じことを考えて、出られない。」
父親は、地元・町田市が開いたファイナンシャルプランナーによる勉強会に参加しました。
3年前に、ひきこもりの実態調査を行った町田市。
高年齢化が予想以上に進んでいたことから、この講座を開くようになりました。
ファイナンシャルプランナー
「先送りしてもいいことは何もない。
親が年を取るだけです。」
講座では、親子が避けがちな将来の話をお金の面からすることで、気づきを促すことが狙いです。
講座を受けた父親は、まず資産や年間の収支を洗い出すことにしました。
貯金や自宅の土地など、現在の資産は6,500万円。
これに加え、毎月貯金を続けていきます。
子どもは全部で4人。
資産はできるだけ平等に分け与えたいと考えています。
ファイナンシャルプランナーが提案書を持ってきました。
現実を知ってほしいと、父親は長男にも話を聞くよう働きかけました。
ファイナンシャルプランナー
「こちらが将来のお金の見通しで。」
まずは長男の住まいを確保するため、マンションを購入。
残ったお金を兄弟で分割すると、1人あたり1,300万円相続できることが分かりました。
次は、長男が今後40年生きると仮定し、必要な貯金を計算します。
生活費は、毎月10万円。
父親が亡くなると想定した15年後までは、年金でまかなえます。
しかし、その後、8年間は収入がなくなります。
65歳からは年金がもらえますが、毎月3万円ほど足りません。
必要な金額は?
ファイナンシャルプランナー
「だいたい2,400万〜2,500万円くらい。(特別支出など含め計算)」
このままだと1,200万円が足りないことがわかりました。
そこでファイナンシャルプランナーは、65歳まで毎月いくら貯金をすればよいのか計算して見せました。
ファイナンシャルプランナー
「月に5万円の収入があるとしていくと、81歳の時も貯金が残る。
どうです?」
長男(41)
「数字として明確に見えるのは、ありがたいという気がする。
これは希望になるんじゃないか。
長い間続くとこれだけ違うとわかれば。」
4日後、親子が見ていたのは…。
父親(71)
「日給で1日8,000円だって。」
週1日から始められる求人。
久しぶりに交わす、仕事についての会話でした。
父親(71)
「正直びっくりしました。
働くことに興味も失う状況でしたから、生きる選択肢もいろいろあるとわかって、やはり非常にうれしいことだと思う。」
11年間ひきこもり続けてきた長男。
今後は徐々に外に出てみたいという気持ちになったといいます。
長男(41)
「週1回でも働いて、慣れてくれば、週に2回とかに増えていけば、もっと楽になっていくわけですから、それが一歩目になるのかなという感じ。」
この新たな取り組み。
心理面での効果も大きいと専門家は指摘します。
精神科医 斎藤環さん
「ライフプラン(生活設計)は、大きな治療的意味を持つと考えています。
正確な危機感を持つことができ、これくらい働けばいいという目安を新しく考えることができる。
部分的に就労してみようという気持ちになってもらえるというか、動機付けという意味でもプラスになると思う。」
阿部
「この取り組みを行うファイナンシャルプランナーのグループは現在、都市部などに限られている活動を、支援団体と共に全国に広げていきたいとしています。」
和久田
「また、ひきこもり以外でも、子どもの収入に悩みを持つ親にぜひ活用してほしいと話しています。」