1999年11月5日 中部経済新聞掲載 |
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岐阜県八百津町の久田見高原菓子工房 藤乃屋は特産の「栗きんとん」等を全国発送し着実な業績を上げている和洋菓子の店である。八百津と言えば美濃加茂市から車で約40分ほどの標高500mくらいの高原地帯で平地よりもかなり温度差があるように思える。久田見高原菓子工房藤乃屋 後藤英夫社長(43歳)は和洋菓子店の2代目で、当時、金融機関に勤めていたが長男の責任から4年後、退職し家業を継いだ。ところがいざ店に入って商売に専念するようになって感じたことは立地の悪さだった。しかし、こればっかりは変える事はむつかしい。逆にこの立地条件をプラスにして、この地だからこそ自然の素材が沢山あるからとプラスに転換して行った。 | ||
そして、和菓子は色や形で表現するだけでなく口の中にいれた時の味で季節の旬の味覚を出す事を思いたった。味が命と考え「おいしい」ための研究をし続けた。いまや5000件となった地方発送も最初は、この美味しい栗きんとんをまちの人にも食べてもらいたいと15年前にDMを発行したことから始った。地元周辺へ500〜600通のDMをだしたところ、45件の注文がはいった。地元の人が遠くにいる嫁いだ娘さんや仕事で都会に出ている家族や親戚に送るという人の注文だった。その45件の顧客名簿が基本となって毎年どんどんと増えていくことになった。一度食べたお客様がおいしかったからと次の別の知り合いや親戚に地元特産品を送りたいと注文が入る。このようにして次から次へと拡大して行った。 | ||
昨年は東京のお得意さんから小渕総理に送りたいと注文があった。女優の吉永小百合さんへもこのお得意さんから注文があり発送した。こうした有名人ばかりの注文名簿がいつもこのお得意さんからは送られてくる。もう10年来の上得意さんだ。最初はこの顧客名簿をお買い上げ金額により5つの段階にわけていたがいまでは15段階にまで細かく顧客の買い上げランクをしている。特Aクラスのお客様には「今年の栗きんとんができました」と言って手書きの手紙をつけ商品をお届けしている。それが何十倍にもなって返ってくることになってしまうが、待って頂いているお客様へのご挨拶と思って送っている。勿論料金は頂かない。いま、5000件にまで増え続けた顧客名簿は大切な店の宝となった。 | ||
可児市への出店と5ヶ所の販売店は「山の上まで買いにくるのが大変」と言うお客様の声に応えて設けたものである。そしていま次なる新たな挑戦を始めた。第2段階としてインターネットへの出店でありインターネットによる顧客名簿をつくることに挑戦をしようと動き出した。独自のホームページも2年前に立ち上げ体制は十分整ってきた。これは支店を設けると言った発想で取り組んでいる。タイムリーな情報を発信する為にはその場で映した写真が全国・世界どこにでもその場で送信できるデジカメで撮影し、添付ファイルでメール送信する。その機器はすべて整い駆使している。 | ||
菓子製造についても初代の父親秀吉さん(70歳)が長年の腕を生かして「あんこ」の味付けをしたり、長男隆宏さん(21歳)も今年4月から家業に入り親子3代が一丸となって和洋菓子づくりに取り組んでいる。急速に進展をし続けるインターネット市場は見逃せない販路となった。そこに注目して見逃さない先見性がこれからの事業経営にとって最も大切なことといえる。次なる方向を常に見極めることが企業存続の決め手になる。立地の悪さを売りにして全国展開する当店は、親子3代の汗の結晶だ。美味しいものを精魂込めて創り続ける、その心意気がお客様の心をつかんでいるのに違いない。 ●藤乃屋 〒505-0422 岐阜県加茂郡八百津町久田見2839 TEL:0574-45-1892 FAX:0574-45-1892 |
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トピック履歴一覧へ | 中部経済新聞連載記事(毎週金曜掲載) 『うつりゆく商業環境と躍進するまちと店』 広野 嘉代子 |