空き家率が上位5市のうち、平成20~25年(3)の5年間の「その他空き家」の量が増加するスピード(図表2)を見ると、福井市以外は総じて、「その他空き家」の量が増加しており、その増加スピードが顕著に早いのが、甲府市と太田市である。
また、5年間の市全体の住宅総数の増加率(図表3)を見ても、太田市は1.10倍、甲府市は1.06倍と、両市ともに住宅総量が5年間で約1割も増加しており、新築住宅の開発圧力はそれなりにあると見てよい状況だ。
しかし、両市は、全国的に見ても、空き家率が高く、かつ「その他空き家」が早いスピードで増加していることから、これまで多額の税金を投入して整備してきたような、古くからあるまちでは――老いた住宅・老いた居住者が多いこともあり――「その他空き家」が急増、「まちのスポンジ化」が今、まさに進行していることが推測される。
これら2つの市には共通点がある。
太田市も甲府市も、平地で郊外には農地が広がっており、自家用車の依存率が高い。そのため、住宅を買う側も、自家用車を利用すれば、買い物、通勤、通院といった生活に支障がないと判断するため、だらだらと広く薄く居住地が拡大しやすいという点だ。
そして、両市ともに、条例で開発規制の緩和を行い、農地関連等の法規制や各市の開発許可の要件を満たせば、市街化調整区域(都市計画法で原則として市街化を抑制すべき区域)に指定されている農地エリアでも新築住宅の開発を許容している。
その結果、どうなったか。
甲府盆地では、市街化区域(市街化を促進すべき区域)等の人口密度は低下しているのに、郊外の農地エリアの市街化調整区域等で人口密度が上昇したのだ(4)。
太田市でも、市街化区域よりも地価が安く、都市計画税も不要ということもあり、市街化調整区域の農地エリアに、虫食い状に多くの住宅が建ち並んだ。
太田市といえば、自動車産業をはじめとする産業都市であり、産業立地のニーズが高いまちだが、農地の中に虫食い状に住宅が立地し、営農環境だけでなく、自動車産業を支えてきた既存の工場の操業環境(騒音・振動や大型車両・フォークリフトの往来)にも影響を与えている。
また、虫食い状に住宅の立地が進んだため、産業立地の受け皿となるまとまった土地が少なくなり、せっかくの産業立地の需要を取り込めないというもったいない状況も生み出している。
この背景には、農地エリアにある既存集落の活性化や農業の後継者不足・耕作放棄地の増加といった問題や、開発規制が緩い他市への人口流出を食い止めるために、市街化調整区域での開発規制を緩和せざるを得なかったという面もあり、本稿は、甲府市や太田市に対する批判を意図しているわけではない。
なぜなら、こうした市街化調整区域の開発規制の緩和は、何も甲府市や太田市だけが特別なわけではなく、他の多くの自治体でも行われているからだ。
甲府市と太田市の共通点
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