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【回顧2016】美術 林立する芸術祭、国内開催は大小100超…再考のとき

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【回顧2016】
美術 林立する芸術祭、国内開催は大小100超…再考のとき

空から隕石が降ってきたかのように、駐車場に出現した英美術家、ライアン・ガンダーの彫刻。今秋、岡山市で開かれた「岡山芸術交流」では質の高いアートが“投下”され、街の姿を変えた 空から隕石が降ってきたかのように、駐車場に出現した英美術家、ライアン・ガンダーの彫刻。今秋、岡山市で開かれた「岡山芸術交流」では質の高いアートが“投下”され、街の姿を変えた

                  

 展覧会を振り返ると、最高5時間超の待ち時間を記録した「若冲展」(東京都美術館)は社会現象となった。ダビンチやフェルメール展ならいざ知らず、「日本美術がこれほど老若男女を集める日が来るとは…」(美術史家の山下裕二・明治学院大学教授)と、空前の若冲ブームに専門家らも感慨ひとしおだった。日本美術では他にも、禅文化に焦点を当てたさまざまな展覧会、ゆかりの地で代表作が集結した「岩佐又兵衛展」(福井県立美術館)が充実していた。

 西洋絵画で特に見応えがあったのは、国立西洋美術館(東京)で開催された「カラヴァッジョ展」と「クラーナハ展」。同館といえば今年7月、ル・コルビュジエ設計の本館(昭和34年)が世界文化遺産に登録され、モダニズム建築に対する世間の関心や理解を深める好機となった。それに続けとばかり、ル・コルビュジエに影響を受けた丹下健三の代表作「国立代々木競技場」(39年)を世界遺産に登録しようとする運動も、建築家らを中心に始動した。

 美術家、中西夏之さんが10月に死去。高松次郎さん、赤瀬川原平さんに続き、昭和30年代後半に前衛芸術をリードした「ハイレッド・センター」のメンバーはこれで全員鬼籍に入った。1964年五輪にわく東京の街で繰り広げられた、奇抜かつ冷徹なパフォーマンス。芸術の概念を拡張する若い芸術家たちの格闘は、今も語り継がれている。(黒沢綾子)

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