だが、このように実利も歴史的業績も不透明になった今、真珠湾訪問は安倍首相にとって「次善策への突破口」という見方もある。真珠湾を訪問することで、広島を訪問したオバマ大統領への「義理」を守りつつ、真珠湾で謙虚に慰霊する姿を演出し、新政権を担う共和党のタカ派に対して日米同盟の重要性を強調したということだ。安倍首相はこの日、オバマ大統領に「在任8年」を象徴するパールが8つ付いたカフスボタンを贈った。
こうした行動には「日本=罪深い敗戦国」という構図から抜け出したいと考えている安倍首相の個人的所信が作用したものと見られる。安倍首相は真珠湾訪問発表直後、側近たちに「私の任期中に『戦後』から脱却する」と言った。安倍首相は同日、真珠湾の記者会見会場で前列に座った米国の退役軍人3人に語りかけ、抱擁した。その中の1人で真珠湾攻撃の生存者アルフレッド・ロドリゲスさん(96)は「期待以上だった。謝罪する必要はない。(安倍首相は)ナンバーワン」と言った。
しかし、オバマ大統領と安倍首相が作り上げた現在の構図が今後も続くかどうかは未知数だ。米紙ニューヨーク・タイムズは「安倍首相の真珠湾訪問は、両首脳にとっては象徴的な業績だが、トランプ政権になったら両国関係は試験台に載せられるかもしれない」と書いた。ロイター通信は「安倍首相は真珠湾訪問という『ショー』で米日同盟を強調しようとしているが、中国とトランプ氏に対してかえって(米国に依存する)「安保ただ乗り」というイメージを与える可能性がある」と評した。