セレブ人気は「やらせ」

2016-01-18

日本人は西欧人のダブル・スタンダードを理解できない

聖と俗が截然と分かれていれば、神との関係から生まれた原理原則は「絶対」だが、人間社会の原理原則は必要とあらば修正を加えたり例外を認めたり破棄したりしてもよい「相対的」なものだ、ということになるのは論理的必然である。これは神との契約は絶対だが、人間同士の契約は理由がつけば変更したり破棄してよいのと同じことである。

だから、西欧人の考える「自由」は日本人の考えるそれよりはるかに神聖で宗教的な概念であり、それゆえに「われに自由を与えよ、さもなくば死を与えよ」とか「自由のためには死を恐れず、銃を取って戦う」ということになるのだが、わが国にはそのような歴史はなかった。日本人はいつも「主君」や「天皇陛下」といった偉い人のために死ぬのであって、「自由」のために死ぬことなど思いもよらなかったのである。

「自由」は西欧では死をかける価値のある神聖な理念なのだが、他方、憲法などは人間同士の取り決めであるから、必要とあらばいくらでも変更してよいということになるし、現に西欧諸国では始終変更している。

同様に、真理は神のみが知り得ることであり、したがって人間の考える真理はすべて仮説にすぎない、ということになるから、「不動の真理」と思われたユークリッド幾何学の平行線の公理を否定することから、非ユークリッド幾何学が生まれ、ニュートンの絶対時間と絶対空問の概念がアインシュタインによって時空の相対性の概念へとパラダイム変換されたのである。

「科学革命」は人間の号える真理はすべて仮説にすぎない、という土壌から生まれるのである。ゆえに、西欧文明においては、俗間界の�詬�原則はなにもゲーデルの「不完全性定理」などを持ち出さなくとも、「例外があって当たり前」ということになる。

ただ、例外を設ける際には、それをもっともらしい川屈で説明したり説得できるようにしておくことが肝要で、これさえぬかりなければ、後はいくらでも自分たちの都合のよいように例外を設けることができるのである。これを「原則−例外思考」と呼んでいるが、この「原則−例外思考」から発展したものがダブル・スタンダード（二重基準）なのである。これが西欧人のしたたかさの源泉の一つなのである。

実際、西欧社会は今日までダブル・スタンダードだらけである。「犯罪者にも人権があり、裁判を受ける権利がある」などと言ってはいるか、犯罪者が武力抵抗するとこの原則の例外扱いをしてあっさり射殺するし、「市場原理主義」を唱える一方で、大手ヘッジファンドのＬＴＣＭが倒産しそうになるや「経済恐慌を回避する」という大義名分でさっさと救ってしまう、などのケースはいくらでも見られる。

ところが、日本人はこのダブル・スタンダードが理解できない。ついつい目本流の「犯罪者の人権」がタテマエ、「凶悪犯は射殺してしまえ」がホンネ、あるいは「市場原理主義」がタテマエ、「金融機関の救済」がホンネの「使い分け」という解釈をしてしまうのである。だから西欧流のダブル・スタンダードを見ると「欧米人にもタテマエとホンネがあるではないか」と思いがちなのである。

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