追悼 キャリー・フィッシャーさん
- 2016年12月28日
俳優キャリー・フィッシャーのキャリアでは、映画「スター・ウォーズ」シリーズのレイア・オーガナ姫が何よりも圧倒的な存在だった。
レイア姫として一気に脚光を浴び、地球上で最も有名なひとりとなった。
しかし名声には代償が伴い、私生活では結婚や恋愛関係がたびたび破綻し、精神病や薬物・アルコール依存症と闘い続けた。
「スター・ウォーズ」の最初の三部作が公開された後は、小説や回顧録を相次ぎ発表。2015年公開のスター・ウォーズ新作「フォースの覚醒」で、約30年ぶりに将軍となったレイア役を復活させた。
キャリー・フランシス・フィッシャーさんは1956年10月21日、アカデミー賞候補女優デビー・レノルズさんとポップス歌手エディ・フィッシャーさんの間に生まれた。
エディさんが妻の親友で女優のエリザベス・テイラーさんと不倫関係となったのを機に、夫妻は1958年に離婚。エディさんは後にテイラーさんと再婚した。
幼いフィッシャーさんは詩や古典文学が大好きな、本好きの子供だったという。高校時代にミュージカル「アイリーン」で母親と共演して以来、演劇の世界に夢中になり、高校は中退した。
ロンドンの演劇学校セントラル・スクール・オブ・スピーチ・アンド・ドラマに1年半通った後、ニューヨークに近いサラ・ローレンス大学に入学した。
映画デビューは1975年の「シャンプー」で、ゴールディ・ホーンやウォーレン・ベイティ、ジュリー・クリスティと共演したものの、初めて本格的に注目されたのは1977年の「スター・ウォーズ」だった。
レイア姫についてフィッシャーさんは2011年に英紙デイリー・メイルに対して、最初に選ばれた時は「ちょっとしたSF映画」の役がもらえたから楽しもうと思ったと話している。
「それなのに、ロボットと3カ月つるんで過ごした、このちょっとしたおかしな映画は、予想外の展開を見せた」
「大衆文化を覆う大空で大爆発して、私たち全員を巻き込んだ。おかげで私もひょんなことからスターになってしまった」
「大昔の経験」
フィッシャーさんは2016年に発表した最新回顧録「The Princess Diarist」で、19歳当時の自分が共演者のハリソン・フォードさんと不倫していたことを初めて明らかにした。フォードさんは当時、メアリー・マーカートさんと結婚していた。フィッシャーさんとの関係は3カ月で終わったという。
回顧録でフィッシャーさんは、「どの場面をどういう順番で撮ったかとか、最初に誰と仲良くなったかとかは、あまり覚えていない。それに、この大昔の経験をいつの日か思い出せと言われるはめになるなど、誰も口にしなかった」と書いている。
1980年にはシリーズ2作目「帝国の逆襲」に、1983年には「ジェダイの帰還」にも出演した。
同じ年には5年前から交際していた歌手のポール・サイモンさんと結婚したが、翌年には離婚した。
1980年代には舞台出演のほか、ウディ・アレン監督の「ハンナと姉妹たち」(1986年)や、ロブ・ライナー監督の「恋人たちの予感」(1989年)など数々の映画に出演した。しかし「スター・ウォーズ」ほどの影響力はなかった。
依存症と病気
薬物とアルコールの依存症を克服したものの、1985年には睡眠薬と処方薬を誤って過剰摂取し、病院に救急搬送された。
この時の経験を元に書いた半自伝的な初の小説「Postcards from the Edge(邦題「ハリウッドに口づけ」)」で、フィッシャーさんは自分の薬物依存症や、母親との時に困難な関係について、風刺的に描いた。
小説発表から3年後には自身で脚本化し、メリル・ストリープ、シャーリー・マクレーン、デニス・クエイド出演の同名映画となった。
その後ほかにも「Surrender the Pink」と「Delusions of Grandma」の、小説2作を発表した。
様々な映画で小さい役をいくつも演じたが、「スター・ウォーズ」のレイア姫ほどの注目を集める役には恵まれなかった。
双極性障害を患うフィッシャーさんは、薬物依存や精神病と闘い続けた経験についても、執筆や講演活動を続けた。
2001年には心理学専門誌「サイコロジー・トゥデイ」に対して、「薬のおかげで自分が普通だと思えた。薬のおかげで落ち着いた」と話している。
実に正直
2006年には、同じく双極性障害を患う英国の作家・司会者・俳優のスティーブン・フライさんが司会するBBCドキュメンタリー「スティーブン・フライ――躁鬱(そううつ)病患者の秘密の生活」に出演した。
1990年代の終わりから2000年代初頭にかけては、他の脚本家による映画脚本を修正して磨き上げる「脚本ドクター」として有名になる。フィッシャーさんが改稿に参加した映画脚本には、「フック」、「ウェディング・シンガー」、「Sister Act(邦題「天使にラブ・ソングを…」)、「リーサル・ウェポン3」などが含まれる。
2007年には、自伝的な自作の1人芝居「Wishful Drinking」(訳注:「wishful thinking=希望的観測」という慣用表現をもじったタイトル。「希望的飲酒」のような意味)に出演。翌年には同名の本として出版された。
2013年には「スタ・ウォーズ エピソード7」にレイアとして出演すると発表された。2015年に「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のタイトルで公開されたこの作品では、フィッシャーさんのほか、ハリソン・フォードさんもハン・ソロ役を、そしてマーク・ハミルさんもルーク・スカイウォーカー役を、それぞれ復活させた。
「ジェダイの帰還」の続編として世界公開された「フォースの覚醒」は、「スター・ウォーズ」シリーズでも最多の興収を記録した世界的大ヒット作となった。
フィッシャーさん演じるレイア・オーガナ将軍は、銀河帝国軍の残党が結成した新勢力「ファースト・オーダー」と戦う抵抗勢力を指揮しながら、行方不明のルークを探し続けている。この演技でフィッシャーさんは、SF・ファンタジー・ホラー作品を対象とするサターン賞の最優秀助演女優賞に選ばれた。
「フォースの覚醒」公開から間もなく、2017年公開予定の「スタ・ウォーズ エピソード8」にもフィッシャーさんは出演すると発表された。
ポール・サイモンさんとの結婚のほか、フィッシャーさんは芸能エージェント、ブライアン・ルードさんと3年にわたり交際。2人の間には娘ビリーさんが生まれた。
俳優キャリー・フィッシャーの名声は、「レイア」という1つの役によって作られたものだった。しかしそれは、映画史上最も有名で成功した映画シリーズのひとつに登場する、重要な役だった。
フィッシャーさんは、私生活の様々な困難に自分がどう立ち向かい、克服してきたか、実に忌憚(きたん)なく正直に語り続けた。
「自分の経験について話せるなんて勇気がありますねと人に言われると、ある意味、驚いてしまう。私が勇敢だったのは、生き抜いたという、そこの部分だったので」
(英語記事 Obituary: Carrie Fisher)