先に断っておくが、大した話ではない。
しんざき家の朝は遅い。
午前5時58分。すでに外は明るくなり始めているが、しんざき家で起床している者は誰もいない。
しんざき家では、「布団部屋」と呼ばれる一室に隈なく布団を敷き詰めて、そこで一家5人が並んで雑魚寝するという就寝形式をとっている。長女次女(どちらも5歳)は添い寝してあげないと寝られないのと、長男(9歳)も寂しんぼうであって「パパが隣で寝てないと落ち着かない」と未だに主張すること、また子どもたちをベッドで寝せると百発百中夜の間にベッドから落ちることなどの事情を勘案した措置である。
そして、冬のこの時間帯だと、長女はしんざき奥様の、次女はしんざきのそれぞれ布団にもぐり込み、抱き枕になっていることが多い。場合によっては長男もしんざきか奥様どちらかの布団にもぐり込んでいる。
ところで午前6時ちょうど、携帯電話の目覚ましが鳴り始める。何故か、目覚まし用の音声ではなく「ピピピピピ、メールが届きました」というメール着信音声である。
しんざきのスマホではない。しんざき奥様のガラケーである。彼女は未だにガラケーを使い続けており、スマホに切り替える気配は一向にない。
しかし、その目覚ましで奥様が覚醒する気配は全くない。彼女は布団をかぶったまま微動だにしない。ついでにいうと、長女次女も全く起きない。基本的に、しんざき家奥様長女次女の女性陣チームは非常な寝坊助である。長男はたまーーに起きて、特に不満もなくリビングに漫画を読んだり本を読んだりしにいく。
目覚ましに敏感なのは、いつ会社からシステムトラブルの電話連絡が来るかわからない生活をしていたしんざきの方である。遅刻せず出社するには7時に起きれば十分なので、6時という時間はまだ惰眠をむさぼっていていい時間である。覚醒するも、しんざきはまだ眠いので、奥様のガラケーを手探りでつかみ取って目覚まし音を消す。で、二度寝する。
その約5分後、スヌーズ機能が動作し始める。音声は変わらず、「ピピピピピ、メールが届きました」である。しんざきは再び覚醒して、眠いながら携帯のボタンを押して音を止める。以下、これを数回繰り返す。
何度目かの「ピピピピピ、メールが届きました」の後、これはスヌーズを止めなくてはならないと流石に気づいたしんざきは、携帯の画面を開けてスヌーズを止める。その直後、まるでその行動を読んでいたかのように、「ピピピピピ、6時30分です」というアラームが鳴り始める。なぜかこちらはちゃんとした目覚まし音声である。
こういう格闘を、しんざきはほぼ毎朝繰り返している。別に寝不足という訳ではないのでいいのだが。
こういった、「奥様の携帯の目覚ましなのに何故か起きるのは自分だけ」という状況をここ数年繰り返してきたのだが、本日、まさに本日、初めてこういう疑問を持った。
「いやちょっと待て、そもそも奥様は何故、起きる必要もないし実際起きてもいない6時台に目覚ましを掛けているのだ?」と。
「もっと早く疑問に思え」と言われれば一言もない。そもそもしんざきには問題発見能力というか、問題を自分の問題として認識する能力が薄いのである。
問題の解決はまず話し合いから。しんざきはゆっさゆっさと奥様を揺り起こした。
「ねえねえ奥様(実際には名前呼び)」
「えー?なあに?(ねむそう)」
「君は何故6時台に起きることがないのに6時台に目覚まし時計をセットしているのか」
「zzz…」
「ちょっと待って寝ないで」
「いやほら、ずっとかかってるとじわじわ効いてくるでしょ?6時台からかけておかないともっと起きるのが遅くなるんだよ」
「遅効性の毒ですか」
どうも奥様の言いたいことを総合してみると、
・目覚ましはそもそも「鳴ったから起きられる」というものではない
・鳴るとなんとなく「ああ、そろそろ朝なんだな」という認識は得られる
・繰り返している内にだんだん覚醒に近づいていくのでスヌーズ機能は重要
・目覚ましさえ鳴っていれば最終的には大体ちょうどいい時間に起きられる
・最終的には私が起こしてくれるので安心
ということであるらしい。「目覚ましで起きられない」という経験がほぼない(というか目覚ましなしでも大体決まった時間に目が覚める)私にとっては、この話は衝撃的であった。
「えー絶対たくさんいるよそういう人」というので本人の許可を得て記事化してみた。そういう人いますか?
なにはともあれ、しんざき家の就寝事情についてお伝えした次第であった。
全然大した話ではないのだが、今日書きたいことはそれくらい。