Metal Hammerが廃刊の危機にあるらしいが、BABYMETALの具体的な犠牲者がついに現れたということだろう。メタル雑誌がBABYMETALに肩入れしたら、メタルに忠実であればあるほど、自家撞着に陥ることは自明の理である。しかもシャレではなく本気で持ち上げてしまったのは、あまりにもナイーブと言うしかない。"Smashing Boundaries" とか、BABYMETALに呑気な見出しをつけてるうちに、自分らが真っ先に粉砕されたことになる。
即効性があったとしても、ゼッタイに手を出してはならないクスリがある。Metal Hammerは毒杯をあおってしまったのだ。前にも言ったが、BABYMETALはメタルを使いながらメタル的なものにトドメを刺す方向で命を持ったプロジェクトである。メタル側がそれに気づかない限り、メタルの無意味化、民族浄化、ジェノサイドはそのまんま進行する。BABYMETALがメタルとは何の関係もない工芸品だって認識すれば、その時点で崩壊は免れるはずだ。問題はBABYMETAL自身がいつのまにかメタルに肩入れしていることだが、それはまた別の話である。
邪気も悪意もない娘っ子が「メタリカさん」「アイアン・メイデンさん」と親近感を露わに口走った瞬間、言葉のレベルからメタルの無意味化が始まるわけだが、日本語の世界がわからないMetal Hammerには、「なんや知らんけどメタルに味方する感心な娘ども」にしか見えなかったのも無理はない。
しかし中元先生にとってはHammerさんも「ハリーさん」も同列であった。
BABYMETALのイニシャルは「BM」ではなく「KY」である。徹底して空気が読めないところに、世界で一番硬いBABYMETALのダイヤモンドがある。ハードロックやパンクやメタルにアイドルを乗っけることは日本のお家芸だし、それはゴールデン・ハーフの時代から連綿として続く伝統であると言ってもいいが、そういう存在が「品性」みたいなものを獲得したことはなかった。BiSHでもBAND-MAIDでもいいし、BABYMETALのセカンドなんかと比べたら、少なくともおれにとってはFRUITPOCHETTEのほうが聴いててぜんぜん面白いが、そもそもそんなところに「品」などは求められていない。下衆でいっこうにかまわない。むしろ気取らない普通の人間として振る舞えば、気持ちよく自然に下衆になれる。しかしそれは下衆の予定調和であって、ハードでダークな音楽の世界で本当に暴力的で破壊的な威力を持つのは、いっこうに空気が読めない「品」である。それを、無意識で無自覚で前後不覚の小児的な暴虐として、初めて表現したのが中元すず香であった。
破壊神は無自覚であるから神になれる。そのまんま行って、いろんなものを壊しておくれ。アオるとか、つまんない自覚で下衆の真似なんかしなくても大丈夫だから。むしろ呆然と立ち尽くすほうが君にふさわしい。