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社説

ネットの偽情報 玉石混交と呼ばれまい

 インターネットへの信頼が内外で揺らいでいる。国内では大手IT企業が医療・健康問題で誤った情報を出していたことが分かった。米大統領選挙では偽ニュースが勝敗に影響したという。

 よく玉石混交と言われるインターネットの情報だが、最近、意図的な偽情報が目立つ。

 発端はディー・エヌ・エー(DeNA)だった。今月初め、キュレーションサイトと呼ばれる、まとめ記事を掲載する十サイトすべてを閉鎖した。事実誤認や無断引用が多いとの指摘が外部からあった。中には医療・健康情報のサイトも含まれている。

 記者会見で、著作権の問題を逃れるためのマニュアルを作成していたことも認め、原因は「成長を追い求めすぎた」と説明した。要するに、手間やコストをかけずに読者を増やし、広告収入を得ようとしていたということである。

 南場智子会長は「二〇一一年時点で、ネットの医療情報は信頼できないと考えていた」が、昨年開設された自社の医療サイトは「報道後、知った。愕然(がくぜん)とした」と話した。南場さんは日本では数少ないIT分野の女性創業者。家族が闘病中だったとはいえ、知らなかったというのは寂しい。

 いくつかの大手企業が運営する医療・健康情報のサイトも、一部の記事の公開を止めた。ネット情報が信頼をなくせば、企業の存立が脅かされるという危機感はないのか。経営者の猛省を促したい。

 米大統領選挙では「オバマ大統領が『イスラム国』をつくった」というデマが流されるなど、トランプ氏に有利に働く偽ニュースが相次いだ。多くは、会員制交流サイト(SNS)フェイスブックを通じて広がった。

 別の偽ニュースを信じた男がワシントンのピザ店で発砲事件を起こしたことからフェイスブックは十五日、対応策として「真偽がはっきりしない」という警告ラベルを付けると発表。「フェイスブックの記事は正確で役に立つことが重要だ」とコメントしている。閉鎖するだけが対処法ではない。

 情報量が膨大で全体像を把握できない、真偽の判断が難しいといった欠点はあるが、ネットは人類の公共財だ。

 ネットを使えば、誰でもほとんど無料で、世界に向けて情報を発信できる。近い将来、自動翻訳で言語の壁もなくなる。より良い世界をつくるツールとなりうる。企業も利用者も協力して、大事に育てたい。

 

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