滋賀夕刊新聞社は滋賀県長浜を中心に政治、経済、文化の情報をお届けする新聞です。



「気になる子」の脳内汚染

 今、ぼくは、致知出版社発行の長い名前の本を読んでいる。
 著者は教育や社会問題の権威者で、明星大学教授の高橋史朗氏。本の名前は「日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと」。この長い本の名前の表紙に、さらに副題として訴えている文字がぼくの眼を射すくめた。
 「こうして日本人は国を愛せなくなった」。
 本の名前の珍しさはともかく、その内容がぼくの心をしびれさせた。一口に言えば、「日本人よしっかりしろ」という天の声である。
 著者は、この本を書いた動機を次のように語る。
 「戦後思想とか戦後教育の問題は、すべて占領軍の目を気にしたおびえのような自虐意識から生まれてきている。その原点をきちんと実証的に解明して、それは誤解である、と、世界に向かっても日本人に向かっても明らかにして、日本を取り戻したいから」。
 この本の中身は、日本を取り巻く国際的、国内的問題を多岐にわたる研究を出発点にし、「経済的な成功を収めながら、その一方での精神的な荒廃は目を覆うばかりだ」と慨嘆し、政治、教育、文化、国民生活、人権、ジェンダーフリー、その他多くの問題に警告を発し、見逃すことのできぬ好著といえよう。
 その中の一つ、第4章、「今、日本の子供と親に何が起こっているのか」をかいつまんで紹介する。この章のトップ記事は「急激に進む子供の脳内汚染」。
 占領政策によって、日本の教育はゆがめられたが、子供の脳内汚染は子供の生体リズムが狂い始めているということ。最近の特徴は「気になる子」の増加。「気になる子」は発達障害と同じ症状を持つ子供のこと。いま小学校段階で1割を超えている。それが学級崩壊につながる。第1期は平成9年から始まり、児童が先生に反抗する「反抗型学級崩壊」。第2期は平成16年から増えた「馴れ合い型学級崩壊」。これは家庭での親子関係が「友達親子」に、学校での先生との関係が「友達先生」になり、秩序やルールを子供に示すことができず馴れ合い型が急速に学級崩壊を広がせた。第3期は「新型学級崩壊」。授業中に教室内を立ち歩く子がいて、授業が成立しなくなる。この背景に軽度発達障害児の増えを指摘している。
 教育技術法則化運動の全国調査で、6000人の教師を対象にしたデータによると通常学級に存在する発達障害の可能性のある小中学生は16・2%を占めている。
 このほか最近の顕著な心配は「うつ」の増加。平成21年に行ったある市の小中学校10校の調査によると抑うつ傾向の小学6年生の割合が14・4%、中学1年生が17・8%。別の市の小中学校の統計では「よく眠れない」子が男子26・8%、女子23・1%。このほか「ひきこもり」の調査も出ている。ある全国調査で、6カ月以上のひきこもりは70万人と推定されているが、数カ月の「ひきこもり」予備軍を含めると150万人になるという。最も引きこもりの多い年代は30代で、その割合は46%。これは10代のころの不登校傾向を20代、30代とひきずっているからだと分析しているが、育児放棄、育児怠慢、親の教育怠慢として世界に恥ずかしい状況だという。【押谷盛利】

2014年07月05日 22:09 |


過去の時評


しが彦根新聞
滋賀夕刊電子版
滋賀夕刊宅配版
滋賀夕刊デジタルトライアル
 
長浜市
長浜市議会
長浜観光協会