本記事は「経営の踊り場問題」と勝手に呼んでいる問題とその対策について、わざわざクリスマスの夜に行った4つのツイートをまとめ・補記したもの。主にスタートアップや新規事業など「急速な成長」を前提とした組織体を想定している。
停滞期に起きること
踊り場を抜けるにはユーザーやプロダクトと向き合い切る以外に解はないと思ってるんだけど、「これまで順調に伸びて来た売り上げがストップ」みたいな状況は社内の雰囲気を悪くする。
— Yamotty (@yamotty3) December 25, 2016
結果、マネジメントが組織や人間関係の問題にフォーカスしがちに。これを「経営の踊り場問題」と呼んでる。→続
踊り場が目線を内に向ける
リリースした直後は底にいるので、サービスは伸びるしかない。難しいのは伸ばし続けること。ふとしたきっかけで、「日常的な成長」は幻だったと気づく。
こういう時にマネジメントがやりがちな例を挙げると、
- 「問題の原因や解決策をいろんな目線から多角的に議論する」
- 「見落としが無いよう、細かなロジックを組み、精緻な計画を再構成する」
- 「社内の信頼を取り戻すため、組織イシューに着手する」
すべて一見正しそうに見える。しかし内向きで、本質である顧客を向いていないことが多い。これは全て自分が過去にした失敗でもある。
売上は全てを癒す
「売上(トラクション)は全てを癒す」という名言があるけど、それは「経営の踊り場問題」のためにあると思ってる。
— Yamotty (@yamotty3) 2016年12月25日
たとえその時期にイケてるヒューマンマネジメントをして「仲の良い弱者連合」を作っても誰も幸せにならない。売上が伸びれば結局雰囲気なんて回復するし、そんなもんだ。→続
組織でなく痛みに向き合う
「経営の停滞問題」に直面すると、「良いヒューマンマネジメント」「良いチームづくり」に重きが置かれ、納得感を生み出すことに多くの時間と心が消費される。しかしそれは「問題からの逃避」であると気づかなくてはいけない。
停滞している理由はチームマネジメントに失敗したからではなく、顧客の痛みを特定し、解決することができていないからだ。*1
解決策は一つしかない。トラクションの成長を取り戻すことだ。こういう状況下で、顧客の痛みを探し出しあてるのはチームの力ではなく、一人の頑固な嫌われ者の熱狂だったりする。*2痛みを突き止め取り除くことだけに集中できるか。
トラクションの成長が戻るとチームは自然と「外向き」に戻る現象もよく観測される。
必要な「嫌われ者」
結論として「経営の踊り場問題」には「頑固な嫌われ者」が必要。周囲の心が荒んでいる時に本質的な問いを投げかけ、人じゃなくてコトに向かう嫌われ者が。優先度が間違っている時に違うといい、無駄な会議や作業にNoという。
— Yamotty (@yamotty3) December 25, 2016
村八分が怖くてサービスなんてやってられるかというメンタルですね。
プロダクトマネジメント
周囲が内向きな仕事をしている時にNoを言うのは非常にカロリーが高い。内向きな仕事というのはやっている本人からすると「チームみんなのため」というメンタルになり、それを否定する行為だからだ。特にマネジメント層が内向きになった時に、下の立場からNoを伝えるのは相応の勇気が要る。
このブログのテーマの「プロダクトマネジメント」はまさにこの状況下で顧客に向き合い続けることと同義だと思っている。プロダクトマネージャーはただの役職名だが、プロダクトマネジメントは「状況に流されずプロダクトに向かう」姿勢を意味する(と、思っている)。
積極的に嫌われていこう。顧客に愛されないプロダクトを創るチームに、価値はないのだから。
追伸
と、偉そうなことを書いていたら少し前にnaoyaさんが同じようなことを書いていた。
マネジメントって業績伸ばすためにやるんですよね? 業績伸びてないのに俺たちはマネジメントうまくやってますって語るの意味あるんですかね
— Naoya Ito (@naoya_ito) December 22, 2016
また、一連の「踊り場問題」はターンアラウンドのケースには本当に”よくある話”。最もわかり易い例だと三枝3部作のひとつが、「組織の自己変革の難しさ」を描いており、そのまんまである。
V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)
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なぜなら第一に、普通の人間は誰しも自主努力だけで簡単に自分を変えることは出来ない。心に大きな影響をおよぼす何らかの出来事がない限り、自分の価値観、行動パターン、好き嫌い、リスク感(安心や不安の感じ方)などを自発的に切り替え、習慣を崩し、突如として革新的行動に出ることなど容易にできない。組織も同じなのである。
昔の書評記事も良ければどうぞ。