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天皇陛下の退位をめぐり政府が設けた有識者会議は、今の陛下に限って退位を…
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天皇陛下の退位をめぐり政府が設けた有識者会議は、今の陛下に限って退位を可能とする法律の制定を提言する方向で、議論をまとめつつあるという。
将来にも適用される恒久的な制度にするには、退位を認める要件を定める必要があるが、それは「なかなか難しい」(御厨貴〈みくりやたかし〉座長代理)との説明だ。
だが「一代限り」というのは国民の大方の意見に反する。有識者会議自身が行った専門家ヒアリングの内容を踏まえたものともいえず、賛成できない。
会議に先立ち朝日新聞の社説は、皇室典範を改正して制度化するのが筋だが、特別立法も一概に否定できないと書いた。
典範を不磨の大典ととらえ、手をつけることに強く反対する人々がいる。論議が暗礁に乗りあげ、結果として退位の道がふさがれてしまっては、高齢社会における象徴天皇のあり方という、提起された重要な問題がうやむやになりかねない。
ならばまずは特別法で手当てをし、引き続き典範改正にとり組む。そんな手法もあり得る。ヒアリングでも複数の専門家が同様の2段階論に言及した。
一方、有識者会議がとろうとしているのは、将来のことは将来考えるべきだとして、当座の対応にとどめる立場だ。根本において考え方が異なる。
要件化は本当に困難なのか。
ヒアリングで退位を認めるべきだとした論者たちは、ほぼ一致して「高齢」「天皇の意思」「三権の長などで構成する皇室会議による承認」の三つを要件とする見解を示した。
もっともな指摘である。これをもとに議論を深めれば、退位を制度として導入しつつ、懸念される外部からの強制や天皇の恣意(しい)による代替わりを防ぐことは十分可能ではないか。
にもかかわらず、ヒアリングの後に2度、他の論点もふくめて合計わずか3時間半の話し合いで「難しい」と結論づけるのは、最初からその気がないためだと疑わざるを得ない。
要件を定めないまま退位の前例だけ残し、後はその時々の対応にゆだねれば、強制や恣意が入り込む余地はむしろ広がる。そう考えるのが自然なのに、有識者会議の議事概要を見てもそうした観点からの検討はない。退位制度は設けないという立場から、説得力に欠ける発言をくり返している感が強い。
一代限りの特別法は、当初から政権内で取りざたされている案だ。典範改正を避けたい官邸の意向に沿い、結論ありきでことを進めるのであれば、「有識者」の名に値しない。
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