約10カ月間止まっていた米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事が、…
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約10カ月間止まっていた米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事が、再開された。
今月20日の最高裁判決で沖縄県側の敗訴が確定してから1週間。前知事による埋め立て承認が復活したのを受けて、政府がさっそく工事を始めた。
県の理解を得ぬままに工事再開を強行した政府。与えられた知事権限を行使して抵抗する構えの翁長知事――。
政府と県の対立は、3月に両者の裁判上の和解が成立する前の状態に「逆戻り」してしまった。極めて残念である。
この1年、沖縄では米軍基地による過重な負担を痛感するできごとが相次いだ。
5月には20歳の女性が殺害された事件で、元米海兵隊員で軍属の男が逮捕された。政府は7月、全国から集めた機動隊員を投入し、米軍北部訓練場のヘリパッド工事に着手。抗議する人々に機動隊員が「土人」「シナ人」と暴言を吐いた。
12月には懸念されてきたオスプレイの事故が起きた。県民の反対にもかかわらず、米軍はわずか6日後に飛行を再開し、政府もこれを容認した。
いずれも米軍基地がない地域では起こりえない、重大な基地被害である。日米安保の抑止力のために、平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされる。全国の米軍専用施設の面積の7割が沖縄に集中することの不条理を、改めて思い知らされる。
その不条理は、普天間から辺野古への基地の県内たらい回しでは決して解決しない。地元の理解を欠いたままでは米軍基地の安定的な運用も望めない。
その現実を、政府は真正面から受け止める必要がある。
想起すべきは、3月の和解の際、福岡高裁那覇支部が政府と県に示した次の見解だ。
「本来あるべき姿としては、沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意して、米国に協力を求めるべきである」
国と地方の争いの解決に当たる第三者委員会も6月、普天間返還という共通の目標の実現に向けた真摯(しんし)な協議を政府と県に促した。
確かに普天間返還こそが両者の共通目標のはずだ。その原点に、立ち返るべきだ。
だが繰り返し対話を求める県に対し、政府は後ろ向きとしかいえない姿勢に終始してきた。
事態打開には、政府がまず工事を止め、県民との信頼を回復する糸口をつくる必要がある。
自民、公明の与党も手をこまぬくばかりでいいのか。「辺野古が唯一の解決策」と言うだけでは展望は開けない。
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