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THE CHARM PARKが語るアメリカにも響いてきた日本の音楽3選

THE CHARM PARKが語るアメリカにも響いてきた日本の音楽3選

THE CHARM PARK『A REPLY』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:岩本良介 編集:矢島由佳子、飯嶋藍子
2016/12/27
  • 2

人のアイデンティティーとは一体、何によって規定されるのだろう。出身地? 血筋? 学歴や年齢? もちろん、それらも大切だけど、でも本当に大切なのは、「今、その人が何を考え、何をしているか?」ではないだろうか。

人には、生きていくうえで選べないことがたくさんある。しかし、だからこそ、その人が自分で選んだもの、感じたこと、見てきた景色、出会った人たちから学んだこと……それらの方がずっと、その「人」を表すと思う。だって、目の前にいる好きな人の親が誰なのかとか、どこ出身なのかよりも、その人が今何を食べたがっているかの方が、重要じゃないですか?

THE CHARM PARK――まるでバンド名のようだが、たったひとりの青年。彼が作り出す、様々な楽器が色彩豊かに躍動するそのサウンドスケープは、壮大な風景を描きながら、彼自身の深い心象も映し出す。

長らくアメリカで暮らしながらも、日本の音楽に惹かれ、日本を活動の場に選んだTHE CHARM PARKの音楽は、まるで彼の生き方そのもののように、様々な景色と言葉を巡り合わせながら、ただひとつ、ひとりの人間の深い孤独と強い生き様を伝えている。彼の音楽を聴くと思う。音楽はどんなデータよりも強烈に、その人のアイデンティティーを強く反映するものなのだ、と。

複雑なアイデンティティーがあるなかで、日本の音楽を聴いたとき、すごくアットホームな感じがした。

―CHARMさんは何歳までアメリカにいたんですか?

CHARM:8歳から24歳までアメリカで過ごしました。小学校3年生から高校まではロサンゼルスにいて、そのあとはボストンの音大に通って、卒業後はまたロスに帰ったっていう感じですね。

THE CHARM PARK
THE CHARM PARK

―日本に来たのは、音楽活動が目的だったんですか?

CHARM:そうですね。大学を出たあとにデモを作り始めて、日本のオーディションにメールで送っていたんです。アメリカでオーディションがあっても、僕の音楽とはあまり合わない気がして。

もともと、僕は日本の音楽が好きだったし、周りの友人たちからも、僕が作った曲のことを「日本っぽいね」と言われることが多かった。そうしたら、本当に日本で反応してくれる人たちがいたんです。

―そもそも、日本の音楽に惹かれたきっかけは何だったんでしょう?

CHARM:そこですよね……。自分でも不思議なんですよ(笑)。

―(笑)。

CHARM:僕は、出自は韓国だけれども、アメリカ人という複雑なアイデンティティーがあって。コンプレックスというほどでもないけど、自分の存在に根っこがない感じが、常に頭のなかにあるんです。

日本では、「邦楽」と「洋楽」に音楽をわけるじゃないですか。それでいうと、僕はロスで暮らしていたときから、自分にとって何が「邦楽」で何が「洋楽」かわからなかったんですよ。

―CHARMさんにとっての「邦楽」と「洋楽」というのは、言い方を換えると、「自分の音楽」と「他者の音楽」ということですよね。それがわからなかった。

CHARM:韓国の音楽が自分にとっての「邦楽」なわけではないし、アメリカに住んでいるからアメリカの音楽が「邦楽」かといえばそうでもない。そんななかで日本の音楽を聴いたとき、すごくアットホームな感じがしたんです。

―最初に響いてきた日本の音楽は何でしたか?

CHARM:X JAPANの“WEEK END”は、僕にとっての日本の音楽の原体験です。「こんな音楽があるんだ!」って、衝撃を受けたのを覚えています。僕が小学4年生くらいの頃に、兄が先にX JAPANにハマっていて、ギターソロのハモりを練習するために、僕もギターを弾かされていたんです。それがとても楽しくて。

THE CHARM PARK

―日本のミュージシャンのなかには、海外での活動を夢見る人たちも多いですけど、アメリカで暮らしていたCHARMさんから見たら、日本のバンドの方が魅力的だったんですね。

CHARM:そうなんです。僕のなかではアメリカのロックより、圧倒的にX JAPANの方がかっこよかった。ビジュアル系は、他の国にはない日本独自の面白い文化だと思います。特にX JAPANは、アーティストとしての方向性が最初から形になっていて、ずっとブレずに新鮮でいられるところが本当にすごいなと。

―ビジュアル系を聴いていることが多かったんですか?

CHARM:いえ、大学に入ってから、くるりの“東京”が好きでよく聴いていて。これは歌詞に惚れました。大学で日本語を少し勉強していたので、意味を読み取りながら言葉の響きを聴いていたら、すごくいい歌詞だと思って。日本語って、英語より言い方のバリエーションが多いんですよね。英語はストレートでわかりやすいけど、日本語は言い回しが細かくて面白い。

あと、日本語の歌詞は、同じフレーズを繰り返して歌うと、すごくいいですよね。同じ言葉を繰り返すことで強調されたり、重ねることで感じることが違ってきたりする。そのやり方に気づいたときは感動しました。

―くるりの“東京”は、日本では特に地方から東京に出てきて生活している人に響く歌詞だと思うんですよ。CHARMさんも、故郷から離れた心境に響くものがあったんですかね?

CHARM:僕も上京しましたからね(笑)。大学進学のときもロスからボストンに行っているので、知らない街にひとりでいるときの心境に響いた部分はあったかもしれないです。

―そこで感じる切なさは世界共通なのかもしれないですね。他に、アメリカにいたCHARMさんにまで届いた日本の歌ってありますか?

CHARM:あとは大橋トリオの“A BIRD”もよく聴いていました。北米で一番、大橋トリオを聴いている自信があります(笑)。なので、今は憧れの人と音楽ができて、夢が叶っているんですよ(CHARMは大橋トリオの“りんごの木”で詞を共作し、ライブでもサポートを務めている)。

大橋トリオは、メロディーや構造はJ-POPだけど、そのなかにアメリカの音楽っぽさもある。そのバランスが、アメリカから日本に来て生活している僕にぴったりハマっているなと思います。

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リリース情報

THE CHARM PARK『A REPLY』(CD)
THE CHARM PARK
『A REPLY』(CD)

2016年12月14日(水)発売
価格:2,160円(税込)
TRJC-1066

1. Rolling On
2. To Whom It May Concern (Interlude)
3. A REPLY
4. 誰か
5. そら
6. Sincerely,
7. P.S. (Interlude)
8. Harmony

プロフィール

THE CHARM PARK
THE CHARM PARK(ざ ちゃーむ ぱーく)

2015年リリースの1stミニアルバム『A LETTER』から本格的な活動をスタート。ほぼすべての録音を自身で行い、英語詞と日本語詞を絶妙なブレンドで独自の世界観を築いている。また劇団キャラメルボックスの劇伴や映画のサウンドトラックなどの他に大橋トリオのツアーサポートや共作、南波志帆のサウンドプロデュースなどサイドワークでも大いに注目を集める。2016年12月に発表された2ndミニアルバムは全国のFM局で大量オンエアされた他に、Apple Music「今週のNew Artist」にも選出されて幅広い音楽ファンに浸透しつつある。

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