消耗度合いの把握が重要消耗品の交換でサイクリングを充実させよう 定期的な整備でバイクをリフレッシュ
サイクリングを楽しむうえで、バイクのメンテナンスは欠かせない。整備不良は安全性を損ない、時に事故につながる場合もある。そこで、消耗するパーツにフォーカスして、十分に手入れができていないクロスバイクを実際にリフレッシュしてみた。特にシーズンオフの間にバイクにしっかりと手を加え、気持ち良いサイクリングライフを満喫しよう。
スピードを出さなくても部品は消耗する
バイクを構成するパーツには消耗品が数多くある。今回は極度に使用した前後ブレーキシュー、チェーン、ブレーキワイヤーの交換を東京・秋葉原にある「RAMON BIKES」(ラモーンバイクス)にお願いした。同店に持ち込まれたのは、これらのパーツを購入後1度も交換していないというクロスバイク。
各消耗品が限界だったため、クリーニングしながらの重要な消耗品の交換となった。バイクを構成するパーツには消耗品が数多くあるが、特にブレーキ関連部品の消耗具合は安全性に直結するため、定期的なメンテナンスにて良い状態を維持する必要がある。
クロスバイクのオーナーは雨の日でも自転車通勤するヘビーユーザー。このため、フロントのブレーキシューは極度に磨り減って金属片がシューの内部に入り込み、ブレーキのたびにホイールのリムを傷めている。こうなると、効きが悪いだけでは済まない。ブレーキをかける毎にリム面が不均等に削れ、ホイールの寿命まで短くする。
また、チェーンについても、その伸び具合を計る工具「TL-CN41」を当てると、爪が3カ所チェーンのピンとピンの間に簡単に入り込んだ。新品であれば1カ所は入らないため、交換時期を過ぎてチェーンが伸びていることを意味している。ペダルを踏んだ際のダイレクト感や、変速性能を損なっていると村田店長は指摘する。また、伸びたチェーンはスプロケットやチェーンリングの歯先を偏磨耗させ、交換時期を早める結果を招くという。潤滑油切れでコマ毎の動きが悪いのも問題だ。
ブレーキのインナーワイヤーは、長年の使用で“クセ”がつき硬化。グリスが切れてうっすらと錆が浮いていた。また、アウターワイヤーの内部もグリス切れを起こしており、併せてエンド金具の錆びが付着したためか、インナーワイヤーは引きも戻りも動きが渋い。
「ブレーキの不備は運転者自身だけで無く、周囲の人間も危険にさらしますので、整備時には最優先すべき箇所。また、チェーンの不具合は、加速性能や変速性能を損うほか、ギア抜けなどの他のトラブルを誘発し、前後ギア歯を傷める要因にもなります。共に大変危険ですし、関連する部品を傷める要因となりますので、直さない方が結果的に不経済的です」と村田店長は指摘する。
「通勤などでは避けられない雨天走行ですが、想像以上に部品を消耗させます。レースなどの限界走行をしていなくても確実に各部の性能は低下していきますので、年に一度は車検を受けてほしいですね」と、ブレーキシューを新品と比べながら示した。雨の日に使用すると晴れている時以上に磨耗することも重要なポイントだ。
ひと手間かけて効果を長持ち
チェーンの伸びを調べる際に使用した工具はシマノ純正チェッカー「CN-TL41」、交換するチェーンもシマノ純正チェーン「CN-HG40」だ。「メーカー指定の工具を使用する事で、素早く、かつ正確に状態を判断できます。また、交換する部品もオススメはやはりシマノ純正。変速を含む駆動系部品を同メーカー同規格のグループセットで揃える事で、安定した性能と耐久性を得られますし、そのうえローコストなのも嬉しいですね。サードパーティの個性的な高性能部品も大好きなのですが、やはり普段使いでの安定感はシマノ純正」と語った。
アウターワイヤーをカットした際は、エンドの余分な表皮膜を綺麗に除去。ワイヤー層の切断面をヤスリで整え、ライナー切り口を千枚通しでラッパ口に広げるひと手間を忘れない。金属切断面の内側がインナーワイヤーと接触するのを防ぎ、確実な動作をさせるためだ。また、Vブレーキのワイヤー引き込み部(通称バナナ管)のインナーライナーも交換し、アールのキツくなる部分でワイヤーの動きが渋くなるのを防止する。
中に通すインナーワイヤーには、シマノの推奨グリスを使用。表面に擦り込むように、またアウターワイヤーの開口部とエンド金具内部にも心持ち多めに塗布する。潤滑だけでなく、ワイヤーや金具の錆びや水の侵入を防止し、スムーズなワイヤーの動作を長持ちさせられるという。
ブレーキスラッジやグリスなどで黒く汚れた前後のブレーキ取り付け部を洗浄し、新品のシューを装着。リムのブレーキ当たり面をラバー砥石でクリーニングし、全体を拭き上げたホイールを車体にセット。リヤスプロケットやチェーンリングなど、綺麗になった駆動部に、専用工具で新品のチェーンを繋ぎ止めた。最後に、ブレーキの可動部やスプリング、ディレイラーの可動部など金属同士の接触部分各部に注油し、フレームにワックスをかけて完成だ。
「換え時」の相談はショップまで
整備の結果、変速のスムーズさは明らかに向上。ブレーキング時の感触も明らかに良くなり、レバーの引きも劇的に軽くなった。店長の村田さんは「普段ブレーキをかけることも、変速することも何気なく出来てしまっているかもしれません。しかし、全てのパーツは常に消耗しています。徐々に性能は落ち、今回のケースの場合は安全性に悪影響を与えていました。消耗品は目立たない部分かもしれませんが、その状態はバイクの性能に大きく影響するきわめて重要な要素です。適切な時期に交換しましょう」と注意を促した。
では、“適切な時期”とはいつなのだろう。「整備の基本は洗車、拭き上げなどでも自然にバイク全体をチェックでき、問題があれば違和感とその変化に気付く事が出来ます。また、例えば、チェーンは専用工具で交換時期を知ることができますし、ワイヤーは1年に1度は換えてもいい。スパンを決めて、問題が起きる前に部品交換をするのも有効です。消耗が激しい部品だと、ブレーキシューはインジケーターも付いていますし、ワイヤーが伸びればレバーに“あそび”が出てくるので要注意です。わからない時や不安な時は、面倒でもお近くのショップに相談してください」とポイントを教えてくれた。定期的に専門店で点検し、必要に応じて消耗パーツの取り替えは必要だ。整備がしっかりと施されたバイクで、気持ち良くサイクリングを楽しもう。