プラスワン・マーケティング(FREETEL)は12月2日、モバイル無線LAN(Wi-Fi)ルーター「ARIA 2」を発売しました。
ARIA 2はSIMロックフリー仕様で、日本国内で使われているLTE/W-CDMA(3G)の主要な周波数帯(Band)をカバーしていることが特徴です。その中には、UQコミュニケーションズ(以下「UQ」)の「WiMAX 2+」やWireless City Planningの「AXGP」で使われている「Band 41」も含まれています。
そのため、FREETELは発表時から発売日に至るまで、ARIA 2が「日本国内のどのキャリアでも使える」こと、特にUQのWiMAX 2+に対応したことを大きくアピールしていました。
しかし、WiMAX 2+ルーターに付随するSIMカード(以下「WiMAX 2+ルーター用SIMカード」)は、UQと同社のMVNOが販売する純正のWiMAX 2+ルーターと組み合わせた場合のみ通信できます。ネットワーク側で、利用している端末(ルーター)を判別しているのです。
ARIA 2は、“通信規格”としてのWiMAX 2+には対応していますが、“純正”のルーターではありません。よって、ARIA 2にWiMAX 2+ルーター用SIMカードを入れてもデータ通信できないはずなのです。しかし、発売前に公開されたARIA 2のWebサイトを見るとどうでしょう。「WiMAX 2+のSIMカードで使える」という旨が明記されていたのです。
不思議に思った筆者は、この件についてFREETELのカスタマーサポートや家電量販店の店頭で質問してみました。すると、一様に「WiMAX 2+契約のSIMカードで使える」という回答が帰ってきたのです。念のため「au回線を利用するMVNOサービス(『mineo』や『UQ mobile』)用のSIMカードではなく、WiMAX 2+ルーター用SIMカードで使えるのか?」と何度も確認しましたが、回答は変わりませんでした。
半信半疑ではありましたが、筆者はARIA 2をWiMAX 2+ルーター用SIMカードで利用できるように、FREETELがUQと何らかの形で合意したのだと理解することにしました。
筆者は、発売日(12月2日)にARIA 2を購入しました。さっそくWiMAX 2+ルーター用SIMカードを入れて……みたのですが、待てど暮らせどアンテナピクトが立ちません。
APN(データ通信の接続先)の一覧を見てみると、「UQ mobile」のAPNはプリセットされていましたが、WiMAX 2+ルーター専用SIMカードのそれはありませんでした。この時点でかなり“いやな予感”はしていましたが、「手動でAPNを入力すればつながるかもしれない」と一筋の希望を持って設定し……ましたが状況は変わりませんでした。
つまり、当初から思っていた通り、ARIA 2とWiMAX 2+専用SIMカードでは通信できなかったのです。
その後、この件についてFREETELのカスタマーサポートと数往復のやりとりをして、最終的に「ARIA 2はWiMAX 2+ルーター用SIMカードでは使えない」という旨の回答を得ました。FREETELが動作確認を行ったのは、WiMAX 2+ルーター用SIMカードではなく、au回線を使ったMVNOサービス(UQ mobile)のSIMカードだったようです。
発売後、ARIA 2のWebサイトから「WiMAX 2+」の記載は削除され、家電量販店の店頭における展示内容も変更されました。また、12月5日以前にWiMAX 2+ルーターからの買い換えを目的に購入したユーザーに対しては、返金対応も行っています。
ARIA 2を購入し、WiMAX 2+ルーター用SIMカードで接続できないことを確認できた後で気付いたことですが、プラスワン・マーケティングが6月に開催した「新製品・新サービス発表会」において、同社の増田薫社長は「UQは接続できる端末を(ネットワーク側で)コントロールしているが、ARIA 2は本当にWiMAX 2+ルーター用SIMカードで使えるのか?」という質問を記者から受けていたようです。この様子は、YouTubeにもアップロードされています。
また、ITmedia Mobileにおける発表時の記事を執筆した井上翔氏によると、この会の終了後に同社の広報を通して同様の質問を行ったところ、「改めてARIA 2でUQ回線の接続検証を行ったところ、正常に接続できることを確認できた」という回答を得たとのことです。
筆者の見立てでは、ここでいう「UQ回線」は「WiMAX 2+ルーター用SIMカード」ではなく「UQ mobileのSIMカード」のことであったのだと思われます。この動作確認時をもって、「WiMAX 2+に対応した」「UQのWiMAX 2+ルーター専用SIMカードでも使える」という“誤解”が同社の社内で広がり、結果として公式見解となったのでしょう。
やや厳しい言い方になりますが、発表から発売までに約6カ月の期間があったにもかかわらず、“誤り”を訂正できなかった同社は、日本のキャリアが提供するサービスの仕様や制限を正しく理解しているスタッフがいないか、いたとしても知識・情報としてうまく共有できない組織であった、ということになります。
「日本品質」をアピールする同社ですが、少なくともARIA 2にまつわる筆者が経験した商品説明やカスタマーサポートの対応については、“お粗末”であったというのが率直な感想です。
同社の増田社長は、この件を踏まえて「徹底的に体制を改善」したとしています。この言葉が本当かどうか、今後しっかりと見極めていこうと思います。
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