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<匠地技>ビロード 滋賀・長浜(5)

ビロードの和名は「天鵞絨」。天鵞には中国語でハクチョウの意味があり、琵琶湖で羽を休める姿は冬の風物詩のひとつだ=滋賀県長浜市で

写真

◆産地に映える 優美

 ビロードは、漢字で「天鵞絨(てんがじゅう)」と書く。「天鵞」とは、中国語でハクチョウのこと。

 滋賀県長浜市沖の琵琶湖の一部は、近畿地方有数のコハクチョウの越冬地。秋の深まりとともに、北極圏から続々と飛来し、四百〜六百羽が一冬を過ごす。

 「琵琶湖は餌の水草が豊富で、波が穏やか。立って休める浅瀬が多いのも、コハクチョウが好む理由です」。市湖北野鳥センター職員の植田潤さん(47)は話す。

 稲刈りが終わった後の二番穂も、好物。近くの田んぼでおなかを満たし、夕暮れ時、ねぐらである湖へ帰る。オレンジ色に染まる水面に、一羽、また一羽。湖畔にできた人垣からは無数のシャッター音が聞こえる。

 毎年、双眼鏡をのぞきこんで観察している植田さんは、コハクチョウの魅力の一つを「色」と語る。

 「羽が、つやつやと光を放つんです。色も明る過ぎず、黄みがかった、にじむような白。どこか温かみがある」

 「天鵞絨」と書いてビロードと読む、その心は。ハクチョウの羽のように、滑らかで優美な織物−。

 かつてのビロードの一大産地に、偶然にも降り立つコハクチョウ。それは母なる湖からの、心憎い贈り物。

 (写真・今泉慶太、文・渡辺大地)

      ◇

 一月から始めた匠地技は、今回でおわります。

 

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