みんなのクレジット代表取締役、白石伸生(Photo by Masahiro Miki)

既存の概念に捉われない金融サービスで急成長中の「みんなのクレジット」。

少額からの参加や高利回りを期待する一般投資家のニーズに応える一方、融資実行の早さで借り手のニーズにも応え、社会への貢献を目指す白石伸生社長に、ソーシャルレンディングの可能性を聞いた。


2015年初頭に日本にも到来したフィンテックの波によって、金融市場はそれ以前の時代では考えられなかった、クリエイティブかつイノベーティブなサービスが可能になりました。

私が立ち上げた「みんなのクレジット」は、投資家とお金の借り手をオンライン上で結ぶ金融仲介サービスです。アメリカでは、このソーシャルレンディングの企業が、中央銀行を凌ぐ勢いで成長しているケースも少なくありません。躍進の理由は、ソーシャルならではの特性を生かし、大規模な資金を短時間で集め、運用のスピードも早いことにあります。つまり、より多くの借り手に、より多くの融資を行えるからなのです。

日本の産業界を見渡したとき、新たなビジネスモデルを構築しても、なかなか中小企業には資金が集まらないという現状があります。政府系金融機関などは、創業支援を行ったり、さまざまな金融商品を揃えたりしていますが、不動産担保ありきという概念はなくなっていません。

このサービスを開始する前、私はもう少しリスクヘッジしたうえで創業者に支援できるかたちはないのかと考え、大手バンクや名だたる信用金庫、有力な地銀を訪問しました。このときフィンテックという言葉を知っていたのは、10社ほどしかなかったのです。そもそもソーシャルレンディングとクラウドファウンディングの違いさえもわかっていない。けんもほろろの扱いでした。

それでも、日本の金融業界もフィンテックの波で大きく変わるという確信は揺るがず、むしろ、とことん勝負してみたいという気持ちになりました。

地方に目を向けると、ITベンチャーも含めて新規事業の立ち上げがほとんどありません。既存企業も新たな開発のための資金調達は困難な状況です。ITの技術というのは、都市部だけに生かされるのではなく、地方社会、あるいはアジアの発展途上国で資金を必要とする人々に対し、積極的に支援していくことを可能にします。こうした地域で、開業や創業を促していく金融会社が求められているという現状があるからこそ、私はこのサービスを始めたのです。

みんなのクレジットが選ばれる3つの理由

2016年に立ち上げた当社のソーシャルレンディングサービスは、投資家に対しては融資金額の120%以上の価値の担保を全案件に設定し、平均7~8%という魅力的な利回りを安定的に実現する一方で、融資を希望する企業に対しても保有財産を杓子定規で判断しないことで門戸を広げています。

サービスを開始してまだ半年ですが、「みんなのクレジット」が注目される理由を自己分析すると、3つの理由が挙げられます。

1つ目は、広告宣伝戦略。現在当社はキャンペーンを行っています。例えばある案件に対して、10万円投資していただいたら1万円、50万円投資していただいたら3万円といったようにインセンティブボーナスをつけています。金利換算すると、それだけで6~10%(年利)になるので、そうした魅力が会員増の要因となっているのでしょう。

2つ目は、商品の差別化戦略です。金融庁から動産担保の認可、債権担保の認可を取得しています。不動産を持たない方々も気軽に相談できるというのが、訴求力につながっているのでしょう。

3つ目は、融資の実行速度が挙げられると思います。同業他社は3週間くらい掛かりますが、私どもは最短で4~5営業日で融資が可能ですので、債務者にとって大きなメリットになります。

試行錯誤しながらの出発でしたが、サービスを開始する前にひとつだけ決めていたことがあります。それはAIを使って、審査するというものです。「みんなのクレジット」は、ITの技術開発に力を注いでいる会社です。2017年9月から、全面的にAIを使用した自動融資審査システムに移行します。このシステムへ移行すれば、デフォルトのリスクはさらに下がり、資金調達の機会もますます増加することでしょう。

いまはまだ9割が不動産担保ローンをベースにした融資です。確かに堅調ですが、これでは進化は望めません。不動産ローンを3割に下げて、自動車や家畜といった動産を同じように3 割、売掛債権を4 割にしていくのが理想です。その際、デフォルトのリスクを減らすために活躍するのが、AIによる自動融資審査システムです。

1,000 項目に及ぶスコアリングモデルシートを作成し、ディープラーニングを使用して審査を実施するのですが、これを活用することで企業だけでなく、個人に対してもいま以上に資金を提供できるようになるだろうと期待しています。

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AIの活用で市場の動き、投資家の心が変わる

来年度には、まず個人向け融資を本格的にスタートします。日本でも格差社会が進行しています。セーフティネットがあるとはいえ、貸金業法改正によって、年収の3分の1までに借り入れ総額を制限する規制があるため、一時的にまとまったお金を借りたいという人のニーズには応えられません。

例えば、シングルマザーの子育てを例に出しましょう。子どもが成長すれば、当然、お金も掛かるわけです。子どもがふたりいて、中学、高校とダブルで入学金が必要になったとします。あくまでも一時的な出費です。こうしたケースの場合、学費ローンなども制度的にはあるのですが、実は審査に結構時間が掛かってしまう。

そんなときソーシャルレンディングなら3日で融資が実行できます。年利が15%だとしても、2カ月で全額返済すれば、実質金利はそれほどでもない。4月に借りたお金を6月のボーナスで返せると判断するお母さんは多いのです。個人的にもクイック融資はぜひ行いたいと考えています。

私がこのサービスを開始して気づいたのは、利益も重要だけど、自分の資金で誰かを助けられるならぜひそうしたいと考える投資家が多いことです。個人への融資はまだ試験段階ですが、誰かが助かり、自分も利息分を得られるのであればこれ以上のことはない、こうした人情の世界があるのも事実なのです。

今後のビジョンとしては、先進国で調達した資金を東南アジアで運用するマイクロファイナンスの実施を目指しています。すでにミャンマー、ベトナム、カンボジア、ラオスなど6カ国で免許申請に入っています。ソーシャルレンディングが文字通り社会性のある投資である以上、こうした国々のさらなる経済発展に貢献できるような仕組みを整えていきたいと考えています。

白石伸生◎早稲田大学政治経済学部在学中に起業。卒業後もベンチャー企業の設立・運営を手がける。2012年、ITソリューション、不動産開発などを行うブルーウォールジャパンを設立し代表取締役に就任。15年5月、同社の関連会社として、ソーシャルレンディングを行うみんなのクレジットを設立し、同じく代表取締役に就任。



みんなのクレジット
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