福島県沖を震源とする東日本大震災の余震とみられる地震がきのうの朝発生し、沿岸各地や島しょ部で最大1・4メートルの津波を観測した。
マグニチュード(M)7・4は、東日本大震災当日を除き最大の余震である。東日本大震災以後の陸側のプレートの特徴的な動きに起因していると考えられる。こうしたタイプの地震は、今後もこの地域で続く可能性があるという。津波への警戒を一層強めたい。
津波警報や注意報が太平洋側の広範囲に出され、岩手、宮城、福島各県の市町村が、40万人を超える住民に避難指示や勧告を出した。
自治体の呼びかけに応じ、高台や避難所などに避難した住民は多かったとみられている。大きな津波が住宅地を襲うことはなかったが、津波が河川をさかのぼる映像が見られた。東日本大震災の教訓を生かし、早めの避難を心掛けた被災者は少なくなかったのではないか。
東日本大震災の時、気象庁の津波警報の第一報は「予想される津波の高さは3メートル」というものだった。これが住民の油断を招き、避難遅れにつながったと指摘された。
気象庁は震災後、警報や注意報で津波の高さを表す際、メートル表示だけでなく、「巨大」「高い」といった表現を取り入れた。
今回はテレビ報道も、ひらがなで「にげて」と呼びかけるなど、「簡潔で避難に結びつく表現」を試みていた。適切な情報伝達の方法をさらに考えていきたい。
防災の最前線に立つ市町村は今回の対応を十分に検証する必要がある。車での避難者が多かった一部地域では、道路が渋滞したという。また、高齢者ら要援護者の避難支援が機能したかも丁寧に確認すべきだ。
政府の専門調査会は東日本大震災後、津波が発生した場合、「歩いて5分で避難できるまちづくり」を目指すよう提言した。そういった視点から各自治体は今回の避難行動を見直し、課題があれば積極的に改善していく姿勢が必要だ。
今回の地震では東京電力福島第2原発3号機の使用済み核燃料プールの冷却系ポンプが自動停止した。プールの水位を調整するタンクの水位計が地震による水面の揺れに反応したためと考えられている。
タンクの水位低下によるポンプ停止自体は設備の安全を確保するには必要だ。冷却系の一時停止によるプールの水温上昇も今回は0・2度にとどまった。
ただ、多くの燃料が入ったプールの危険性は福島第1原発の過酷事故で改めて認識された重要ポイントでもある。東電も国も入念に安全対策を再点検すべきだ。