朴槿恵(パククネ)大統領を巡る疑惑で引き起こされた韓国の国政停滞が長期化しそうだ。どのような形であれ、決着までに数カ月はかかるだろう。
検察は、朴大統領の親友や前秘書官らを職権乱用などの罪で起訴し、大統領についても「相当部分で共謀関係」にあったと認定した。大統領側は事実無根だと反発し、検察の聴取も拒否する姿勢に転じた。
韓国では検察や国税庁などを一般に「権力機関」と呼ぶ。政権の意向に沿って動くという皮肉を込めた通称だ。任期終盤を迎えた政権は、権力機関を統制する力を失っていくのが通例である。それでも、大統領と検察の関係がこれほどの対決状態に発展することは今までなかった。
大統領退陣を要求する集会の参加者が数十万人になるような国民の怒りが、検察の姿勢をより強硬なものにしているようだ。
国民の怒りは、まったく専門性を持たない民間人が国政に介入したという疑惑に向けられている。
政府から独立した特別検察官による捜査も近く始まる。最長で120日かけて大統領を巡る広範な疑惑を捜査するという。
それでも、世論を納得させるような形で大統領を罪に問うのは簡単ではないだろう。そもそも大統領には在職中に一般犯罪では起訴されない特権が認められている。
野党が主張する弾劾も、手続きには時間がかかる。
国会での弾劾訴追には在職議員3分の2の賛成が必要だ。野党だけでは足りず、朴大統領と距離を置く与党非主流派の一部から協力を取りつける必要がある。
さらに、最長6カ月という憲法裁判所での審理が行われる。朴大統領の弁護人は徹底した法廷闘争を示唆しており、長期化は必至だ。弾劾が認められるにしろ、棄却されるにしろ、結論が出るのは早くても来年春以降とみられる。この間、韓国の国政は停滞することになる。
しかし、韓国の置かれた状況にそれほどの余裕はない。そうした時に解決策を探るのが政治の役割のはずだ。与野党ともそのことを改めて認識してほしい。
北朝鮮の核問題は現実の脅威となり、米国のトランプ次期政権の北東アジア政策への対応も考えねばならない。経済への悪影響も心配だ。
多くの韓国国民も不安を抱いているはずだ。それなのに朴大統領は、弁護人や報道官を通じて対決姿勢を表明するだけだ。事態打開への道筋を示そうという姿勢をうかがうことはできない。
朴大統領には、指導者として混乱を収拾させる政治的責任がある。自らの行動で、その道を探るべきだ。