高額な薬価が問題となっているがん治療薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)の薬価が50%引き下げられることになった。当初は25%の予定だったが、不十分との指摘が政府内でも強く、異例の大幅引き下げとなった。
製薬会社側の反発は強いが、50%下げたとしても諸外国に比べてまだ高い水準だ。最近は高価格のがん治療薬が相次いで登場している。オプジーボの薬価引き下げは当然として、新たな薬価の設定ルールを早急に策定することが必要だ。
オプジーボは世界で初めて実用化されたがん免疫治療薬で、2014年に皮膚がんの一種の悪性黒色腫への適用が承認された。患者数が約500人と少ないため、一般より高い薬価が認められる「希少疾病用医薬品」に認定され、日本国内では100ミリグラム約73万円とされた。
ところが、その後に承認された米国では約30万円、英国は約14万円、ドイツは約20万円で、日本の方が2・5~5倍も高くなっている。
その後、日本では15年末に患者数も1人当たりの使用量も多い肺がんへの使用が承認され、今年8月には腎細胞がんへも適用が拡大された。国内の肺がん患者は約10万人で、その半数がオプジーボの適用対象と見込まれており、その全員に投与すると年間1兆7500億円に上る。
オプジーボの薬価が高いのは、日本で開発され、世界で初めて承認されたので他国の薬価を参考にできなかったためとされる。しかし、15年に肺がんへの使用が承認された際、「希少疾病用医薬品」としての薬価を見直すべきではなかったか。1人当たりの投与量は2倍、患者数も100倍に増える可能性があり、高い薬価に据え置いたままでは医療費が膨張するのは明らかだ。
薬価は中央社会保険医療協議会(中医協)での議論を経て2年に1度見直されており、本来なら次回は18年度に改定される予定だが、政府内では毎年の薬価改定を求める声も強い。少なくともオプジーボのような極めて高額な薬剤については、保険の適用対象が広がって売上高が急増したとき、すぐに価格を引き下げられるようにすべきではないか。
国内の医薬品メーカーは新薬開発の国際競争に勝つため、画期的な新薬で得た利益を研究開発費に回さなければならないとして、薬価の引き下げには反対の意向が強い。また、効能の良い新薬の開発は患者からも強く期待されている。
しかし、国民皆保険が危機に陥っては元も子もない。製薬企業の新薬開発意欲に配慮しつつ、薬剤費の膨張を抑える価格設定ルールについても真剣に考えないといけない。