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堺・男児不明事件 保護できなかったのか

 堺市の4歳男児が約3年前から行方不明となった事件で、大阪府警は傷害致死容疑で逮捕した父親の供述から大阪府南部の山中を捜索し、子供とみられる遺体を発見した。

     痛ましい事件に胸が締めつけられる。児童相談所や自治体が生存確認に手立てを尽くせば、男児を保護できた可能性もある。行政機関の対応や連携のあり方を検証すべきだ。

     男児の母親も保護責任者遺棄致死容疑で逮捕され、「夫は何度も暴力を振るっていた」と日常的な虐待をうかがわせる供述をしている。遺棄時期などで供述に食い違いがあり、捜査で真相を解明してもらいたい。

     男児は生後間もなく児童福祉施設に預けられ、2歳になる直前の2013年12月、両親が引き取り、大阪府松原市で暮らし始めた。ところがそれ以降、男児に関する情報が行政機関の間で共有されず、男児の所在をつかめないままだった。

     松原市は昨年6月、3歳半健診の案内を通知したが、両親は受診を延期すると電話で6回連絡し、同年12月、堺市に転居した。その間、松原市の担当者は家庭訪問などの安否確認をせず、松原市が堺市に「保護の必要な子供がいる」と連絡したのは今年3月になってからだ。

     乳幼児健診は虐待の予防や早期発見につながる。大阪府は指針で、受診しない子供がいれば保健師が訪問するなどして安否を確認するよう求めている。虐待を防ぐために策定した指針が形骸化しているのではないか。指導を徹底してほしい。

     昨年2月には、男児の妹の体にやけどの痕があるのを医師が見つけ、大阪府富田林子ども家庭センター(児相)と松原市が協議し、母親によるネグレクト(育児放棄)と認定した。男児への虐待も疑うべきなのに、市の担当者は両親から「祖母宅にいる」と聞いただけで、男児の所在を確認しなかった。

     男児が施設に預けられたのは、両親が別の詐欺容疑で逮捕されたためだが、両親はその後、乳児だったおいの行方不明に絡んで死体遺棄容疑で書類送検され、時効で不起訴となった。児相は経緯を把握していたが、男児の妹を巡る協議の場でも松原市に説明しなかった。児相、自治体ともに虐待への危機意識が足りなかったと言わざるを得ない。

     厚生労働省が7月に発表した全国の不明児25人の中に男児は含まれていなかった。昨年6月時点で乳幼児健診を受けていない子供らが調査の対象で、男児の3歳半健診は翌7月以降だったため外れた。関係機関が情報を共有して虐待を防ぐのが調査の狙いだが、対象から漏れるケースは他にもあるはずだ。調査方法の見直しも検討すべきだ。

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