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激震トランプ 米露関係 原則曲げた協調は困る

 「新冷戦」と呼ばれるほど悪化した米露関係が、米国の政権交代によって好転するとの観測が高まっている。米国のトランプ次期大統領が選挙戦を通じ、ロシアとの関係改善に前向きな姿勢を見せてきたからだ。

     トランプ氏とロシアのプーチン大統領の電話協議では、双方が「関係正常化」を目指して努力することで一致した。世界の2大核保有国が関係改善を目指すことは歓迎したい。核軍縮の進展や国際情勢の安定のために、米露の緊張緩和は必要だ。

     しかし、これまで米国が主導してきた国際法の原則を曲げて、ロシアの力による現状変更を黙認するような「協調」では困る。

     トランプ氏は、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の一方的な編入を容認するかのような発言をしてきた。ロシアでは、実利主義のトランプ氏が、対露経済制裁の解除に動くのではないかとの期待が高まっている。だが武力を背景に国境線を変更し、ウクライナ東部の親露派武装勢力を軍事支援したことは、ウクライナの主権を侵害する国際法違反である。これに目をつぶれば、今後の国際秩序の行方に大きな不安を残すことになるだろう。

     特に欧州諸国の懸念は強い。ロシアの脅威に対抗し、北大西洋条約機構(NATO)はロシアに隣接するバルト3国などの防衛体制強化を進めているが、トランプ氏は欧州諸国が「相応の費用負担をしていない」と批判し、米軍を欧州から撤退させる可能性にも言及しているからだ。

     シリアでもトランプ氏は、アサド政権を支援するロシアとの協力に転じる姿勢を示唆している。イスラム過激派勢力と対決するために米露協調は必要だが、欧州とともに反体制派の後ろ盾となって進めてきた交渉の枠組みを破壊するようでは、混乱を深めるだけだろう。

     日露関係への影響も複雑だ。米露が接近すれば、日露接近への米国の警戒心は薄れるだろうが、領土問題では、日本を引きつけて米国を揺さぶろうというロシアの動機が弱まることにもなる。

     ロシアにも、トランプ氏の言動に一貫性がないことを指摘し、期待を戒める専門家は多い。米議会は対露強硬派の共和党が多数を占め、軍備強化を進める姿勢を崩していない。プーチン政権も当面、次期米政権の出方を見極めようとするだろう。

     懸念されるのは、米国の自国第一主義が世界に広がることだ。そうなれば、テロや難民をはじめ今の世界が抱える問題の解決が遠のく。それを防ぐための米露協調こそが求められている。

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