メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

高齢運転者事故 悲劇を繰り返さぬよう

 高齢運転者による悲惨な事故が相次いでいる。

     横浜市で先月、軽トラックが児童の列に突っ込み、男児が亡くなった。今月に入ってからも栃木県下野市と東京都立川市で、病院敷地内で車が暴走し死亡事故を起こした。運転者は3人とも80歳を超えていた。

     いずれも非常に痛ましい事故だった。相次ぐ事故を受け、安倍晋三首相はきのう、関係閣僚会議を開き、早急に高齢運転者対策をとりまとめるよう指示した。

     2015年末時点で運転免許証を持っている65歳以上の高齢者は約1710万人だ。これからますます社会の高齢化が進む中、根本的な対策を考える必要がある。

     警察庁によると、事故全体のうち、70歳以上が起こす割合は計12・1%を占める。他の年齢層が減少傾向にあるのに対し、横ばいで推移しているのが特徴だ。80歳以上だと若干、増加している。

     また、年齢層別の免許保持者10万人当たりの死亡事故を起こす件数(年間)で、80歳以上は10件を超える。他の年齢層は大半が1ケタ台前半だから、とても高い数字だ。

     横浜市の事故では、逮捕された87歳男性が、事故当時の記憶があいまいだと供述している。認知機能に問題はなかったのだろうか。

     認知症対策については道路交通法が見直され、来年3月に改正法が施行される。認知症検査が強化され、免許更新時の認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定されると、新たに医師の診断が義務づけられる。認知症ならば免許取り消しか停止だ。

     ただし、検査は3年に1度だ。認知症は突然に症状が進むことがある。年に1度など検査の回数を増やすことを検討すべきだろう。

     専門医だけでなく、運転適性相談窓口などで、本人や家族からの相談に応じる看護師や保健師の役割も大きいという。高齢運転者の認知機能への不安にきめ細かく対応するため、一部自治体は採用を増やし始めたが、厚く手当てしたい。

     自動車自体の対策も求められる。自動ブレーキや衝突警報の機能は既に一部実用化されている。自動車メーカーは、安全運転を支援する技術開発にさらに力を入れる必要がある。

     運転技能に衰えが出れば、免許の自主返納が望ましい。だが、車なしでも生活できる環境がなければ返納は進まないのが現実だ。公共交通機関が少ない地方はなおさらだ。

     現在、地域によっては、乗り合いバスやタクシーなど、車に代わって足を確保するための仕組みづくりが始まっている。必要な規制と地道な支援を一歩ずつ進めていくことが、この問題の解決に欠かせない。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 残業 「80時間超」公表対象 厚労省、来月から実施検討
    2. 北海道大雪 新千歳空港 中国人100人と警官もみ合い
    3. 北海道大雪 交通混乱…新千歳空港で6000人一夜明かす
    4. 福岡大付属高 セクハラの教諭を解雇
    5. 身元不明問題 「太郎さん」逝く 認知症対策を前進

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]