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豊洲再検証 無責任の連鎖が見えた

 東京都の豊洲市場(江東区)の建物下に盛り土がされなかった問題で、都が再度の検証結果を公表した。

     盛り土をする方針は、2009年2月の新市場整備方針で最終的に決まり、当時の石原慎太郎知事が決裁した。ところが、11年8月に開かれた中央卸売市場の新市場整備部の部課長会で、盛り土をしない方針が実質的に決まり、翌年5月に最終的に確定したという。

     専門家の意見を踏まえ、都政トップが決裁した整備方針が、都庁の技術部門の判断で秘密裏に覆ったことには驚いてしまう。小池百合子知事は、この間市場長を務めた中西充副知事ら市場長経験者2人を含む関係部署の幹部8人を責任者と名指しし、処分を検討する考えを示した。責任は免れないだろう。

     検証からは、官僚組織が都のトップや議会を無視して重要課題を決めていく不透明な都政運営の構図が見えてくる。地下のモニタリング空間を作るに当たり、都側の提案なのに、専門家による技術会議が提案したように会議録を捏造(ねつぞう)していたことが判明した。議会にも虚偽の答弁を繰り返していた。都のガバナンス(内部統制)の欠如は深刻だ。

     なぜ、こうしたことが起きるのか。背景をさらに検証し、抜本改革につなげるべきだ。

     再検証によっても、09年2月からの2年半の間に、誰がどんな理由で盛り土をしない方向性を先導したのかは判然としなかった。「部長級職員が、地下にモニタリング空間を設置することを前提に基本設計の作業を進めた」とあるだけだ。

     時期も特定せず「段階的に盛り土をする方針が変更された」とした最初の報告書に比べれば前進だが、全容解明にはまだ遠い。都庁内部の自己検証の限界を示したとも言える。

     この間、知事だった石原氏の責任も大きい。どんな報告を受けていたのか。当時のトップとして「記憶にない」では済まない。

     石原氏は、公開の場での聞き取りを小池知事に要請されたが拒否している。質問状に対しても具体的な回答はないという。都民に対し、公の場で説明する責任を果たすべきだ。

     市場関係者や都民にとって最大の関心事は、豊洲市場の安全性だろう。都の地下水モニタリングで、環境基準を超える有害物質のベンゼンなどが検出された。建物下の空間の大気からは国指針の最大7倍の水銀も検出された。耐震性への疑問まで出ている。

     鮮魚や青果を扱う大規模市場としての役割を果たせるのか。小池知事は移転について近く選択肢を示す方針というが、できるだけ早く方向性を決めるべきだ。

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