動画広告はバナー枠と同じ感覚で置いてはいけない
動画広告が花盛りです。はっきり伸びている。広告手法として根づきはじめています。でも、私にはその多くがうまい形態になっていないと思えるのです。
だって、ニュースサイトの面白そうな記事を開いて最初のほうを読んでいると、その見出しに覆いかぶさるように枠が出てきて動画広告を流しはじめるんです。あるいは、記事を読んでるとその途中に枠が「うにょー」と出てきたり、記事の1ページ目の最後に動画広告枠があったりして、とにかく記事を読もうという気持ちを逆なでしてくるのです。暴力的でさえある。
例え、「うにょー」と出てくるのがガッキーと星野源が踊る楽しい恋ダンス動画だったとしても不愉快になるでしょう。「ちょっと待ってよ、俺はこの見出しが面白そうだと思って、記事を読みはじめたのに、邪魔するんじゃないよ」。
広告手法の中でも動画は強いパワーを持っています。だからちゃんと見てくれたらかなり効果を発揮するでしょう。でもだからこそ、見せるには“流れ“が必要です。読者に「まあ、そういう動画があるっていうなら見てもいいけど?」くらいな気持ちにはなってもらわないと。
私が思うに、ネットでの動画広告は、バナー枠を置くような感覚で見せてはいけないのです。そうしないと、動画広告が根づかない。テレビ放送は、何十年もかけて「民放の番組を見ているとCM入るよ」という文化というか常識を築き上げてきたのです。それに、肝心な場面でCMになると時に苛立ちはするものの、CM枠そのものは否定しない。そういうものだと受けとめられる。視覚の邪魔はしないからです。同じ画面にコンテンツと広告を同居させようとはしない。同居はできないのに、いまの動画広告枠は無理やり同居させようとするから不愉快なんです。
独立したコンテンツとして楽しめる、という点も重要。ネット上ではテレビCMよりもずっと「楽しめる」「興味深い」が重要です。あ、この動画は商品を押し付けようとしている。そう思われたらもう、閉じられてしまいます。興味を途切れさせることなく、商品への入口を提示しないといけない。
ここで、あえて怒る人が出てきそうなことを言います。この感覚、「ネット広告ネイティブ」の人はあんまりわからないんじゃないでしょうか。そんなややこしいこと考えなくても、商品名をボンと伝えて、購入ボタンを押してもらえるかどうか。そう考えがちではないでしょうか。
ネット広告とこれまでのマス広告は、根本的にちがっていたんじゃないか。それに気づいたのは、JIAA(日本インタラクティブ広告協会)が先日発行した「ネイティブ広告ハンドブック」を読んだ時でした。
この図は、ネイティブ広告ハンドブックP32の「図3」です。ぜひ全体をダウンロードして紙で見てほしいところです。(→ネイティブ広告ハンドブック2017 )
この図はつまり、「従来のネット広告は、すでに購買意向が高い人にターゲティングして表示するものでしたね」と言っています。そうですよね?まあ、ターゲティングできない表示もあるでしょうけど、できるだけ対象を絞り込む。ターゲティングのやり方がアドテクと呼ばれるもののほとんどだと思います。「購買意向が高い人に表示するのでネット広告は効率がいい」と捉えられていた。そして実際そうなのでしょう。
ほぼそこにネット広告の論理はあったため、何がなんでも「ターゲティングする→広告を表示する」だった。実際には、例えば私がAという車にとって格好のターゲットだったとしても、Aという車の広告をいつでも見たいわけじゃないんですよね。そもそも「いまこの瞬間のおれは広告を見たいわけではない」という時だってあるんです。それなのに、「ターゲティングして広告を見せてるんですけど何か?だってあんた、このクルマがほしい人でしょ?」と、しれっとやってのける。ネット広告ってそんな感じじゃないですか?
無神経なんですよ、簡単に言うと。ネット広告って無神経。それが、スマホの中の動画広告だと露呈しちゃうんです。無神経さが、むき出しになる。私はここがネット広告のターニングポイントで、根本的な姿勢を見直す時だと思うなあ。
見直すヒントが、『逃げ恥』にとっての恋ダンスにあるんじゃないかと思うわけです。
ネイティブ広告ハンドブックにはもうひとつ、紹介したい箇所があります。
「ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜」バックナンバー
- 朝日新聞の「テレビのネット同時配信全面解禁」という報道が生んだ、大きな誤解(2016/11/08)
- テレビの視聴率調査が変わった件、知ってます?知らないって人はやばいよ(2016/11/07)
- AbemaTVと『君の名は。』のプロモーションは似てるんじゃないかという話(2016/9/21)
- 都知事選、シン・ゴジラ、ポケモンGO、コミュニケーションは量より質の時代になった?(2016/8/22)
- 「AbemaTV」600万DL達成の鍵は?メディアにメディアが必要な時代(2016/8/08)
- 動画広告はうまく置かないとユーザーを不愉快にさせる。そこをクリアしたC CHANNELの発明(2016/7/19)
- テレビとネットの融合を訴えてきたけど、むしろひっつきすぎて不安になってきた件(2016/7/01)
新着CM
-
雑誌 100万社のマーケティング
小さな組織だからできるマーケティング戦略、大企業にはない戦い方がある!
-
クリエイティブ
移転に揺れる築地 新しい魅力発信プロジェクト
-
広告ビジネス・メディア
IT企業は多様な働き方に寛容的!? パパの家事・育児 — はてな
-
広告ビジネス・メディア(コラム)
『逃げ恥』のヒットから考える「広告とはそもそも、心を動かすコンテンツではないか」...
-
PR
販売促進
「使いやすい」「営業の強い味方」アイデアの幅広げ、提案の後押しに
-
マーケティング(コラム)
ピザ生産遅延、無料クーポン行列、集配遅延はなぜ起きたのか?
-
マーケティング
営業部隊の名称変更、Twitter Japanに聞く日本市場での戦略
-
PR
特集
世界の“今”をつなぐ Twitter〜ユーザーインサイトから導き出すマーケティン...
-
広告ビジネス・メディア
『逃げ恥』プロデューサーが語るヒットの鍵「楽しみ方は視聴者に見つけてもらう」