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教育関係シリーズ
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2013年7月16日

幼児期に向上能力の体得を

戸塚ヨットスクール 戸塚宏校長が沖縄で講演

 戸塚ヨットスクール(愛知・美浜町、戸塚宏校長)は2年前から沖縄県名護市の屋我地島で幼児・小学生を対象にした「ジュニアヨットスクール」を開校、ウインドサーフィンを中心とした海洋訓練を実施している。「本能を誘発し鍛えることができるのは小学生低学年まで」という考えから、子供の本能を鍛え人間力を培うための教育をするのが目的だ。戸塚宏校長は6月30日、宜野湾市で「幼児期に一生が決まる」と題して幼児期教育の重要性について講演した。以下は講演の要旨。
(那覇支局・豊田 剛)

立ち向かう行動促す

ウインドサーフィンで恐怖克服


幼児期の教育について講演する戸塚宏校長56月30日、カルチャーリゾートフェストーネ(宜野湾市)で1
 戸塚ヨットスクールで30年以上、問題児を見てきた中で、進歩、向上の能力がないという共通点を見つけた。人間としての必要な能力が著しく欠けているのは、進歩を教育の手段としていないからだ。進歩の能力が分からない大人は、子供にその能力を身に付けさせることはできない。

 沖縄での合宿では、コーチがウインドサーフィンを指導している。コーチは自分の経験を活かして教えている。自分ができないことを他人に教えることはできない。

 教育の目的は、知育、徳育、体育の三つである。知育は論理的思考を身に付けること。徳育は人間性、すなわち、進歩する能力を身に付けること。そして、体育は行動力を付けること。感情と意志が強くなければ行動しない。だから成長しない。

 ところが、大学入試では、体育がない。文部科学省は、体育とは何かを知らずに体育科を置いているようにしか思えない。学校で教えられているのはもはや競技としての「スポーツ」で厳格な意味での「体育」ではない。教師はどのような目的で体育を教えたらいいのか分からないため、生徒・児童はどうしたらいいのか分からずにいる。今は、体育は入試に関係のない無駄な時間に過ぎなくなってしまっている。

 昨年12月、大阪の高校生が教師から体罰を受けて自殺した事件が起きて以来、「体罰は悪だ」と日本中が大騒ぎした。体罰は、相手の将来のことを考えて行うことで、子供の将来や利益のためにやるのである。一方、自分のために行うのが暴力だ。きれい事ばかりが先行し、体罰の定義すら分からない無責任なマスコミが世論を作ってしまっているのは遺憾だ。

 たとえ日本経済が駄目になっても将来を担う人材がいるから問題ない。しかし、「知行同一」という言葉があるように、教育はそうはいかない。教育で駄目になってしまえば人材がいなくなってしまい、日本の復活の道はなくなる。

 そこで、日本を復活させるだけの人間を作るのが「徳育」である。最も教育の成果が上がる時期、言い換えると、進歩能力が身に付きやすいのは幼児期だ。ウインドサーフィンの訓練では小学生よりも幼児の方がすぐに習得し、著しい進歩を果たした。

 3歳で最初の反抗期が来るが、これは母親に対する反抗で、安全で居心地の良い母の元から子供社会へ飛び出して行く。自分を成長させる機会を求めているのだ。いじめたりいじめられることによって子供が強くなり、進歩する。「子供の喜ぶ顔を見たい」という願望は親のエゴであり、結果的に子供を甘やかすことになる。「子供に失敗させてはならない」という考えでは子供を駄目にしてしまう。

 ウインドサーフィンが教育に向いているのはなぜか。それは海の中で生きるか死ぬかの極限状況に至るからだ。子供たちはまず、恐怖を覚える。現代の子供のほとんどは逃げようとするが、逃避してしまえば進歩しない。また、助けてしまえば進歩の能力が身に付かない。

 怖くて泣いていても助けなければ、「なにくそ」という思いになり自分で克服するようになる。これは、「最も質の高い不快感」である。いったん進歩の能力が身に付けば、必ず何かに立ち向かう行動を起こすようになる。

 進歩は、一生懸命に努力することである。ただし、“正しく”やること。そのためには善悪の判断が必要だ。スポーツでは正しい行動をすれば結果が出る。先生(リーダー)の言うとおりにするとうまくいき、進歩し、先生を尊敬する。

 リーダーの役割は、子供を進化させ、かつ、守ってあげること。そうすれば子供はリーダーを敬愛する。リーダーは子供に好かれようとするのではなく、憎まれ役になるべきである。

 最近は子供の権利ばかりが主張される。役人たちは、「子供の権利が侵害されているから保護する必要がある」と言う。子供に認める権利は大人と同じでないことを認識しなければならない。

(本紙掲載:7月15日)


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