IT大手ディー・エヌ・エー(DeNA)が運営する医療情報サイトが根拠の不明確な記事を載せ、公開中止に追い込まれた。記事の正確さをないがしろにして、広告料稼ぎに走るようではビジネスといえない。
テーマごとに情報を集めるサイトは、「まとめサイト」と呼ばれる。近年、急成長したインターネット上のメディアである。だが、他社にも同じような問題が見つかり、非公開の動きが広がっている。
公開中止のきっかけになったこのサイトは、DeNAが運営する医療系サイト「WELQ(ウェルク)」だ。2015年10月に開設された。
外部筆者らに記事を募り、まとめ情報を無料で提供する。そして閲覧率をあげることで広告収入を増やす仕組みだった。月間の利用者は延べ約2000万人にのぼったという。
ウェルクでは、医師のブログを勝手に変え、それを読んだ日焼け患者がタオルを患部に直接あて、症状を悪化させた例があった。
特定の化粧品などの効果を保証して、販売のページに移動できるような不適切な表示も見られた。東京都は、医薬品医療機器法(旧薬事法)違反にあたる疑いがあるとして記事作成の経緯などを調べている。
また同社は、責任を負う編集部の機能が明確には存在しないことや、外部筆者が他人の記事を書き換える際、文言が同じにならないようにマニュアルで指示していたことを認めた。記事に多くのキーワードを盛り込むことで、検索結果の上位にくるように細工もしていた。
同社の他サイトでは、外部筆者が1文字0・5円の低単価で受注していた。まともな収入を得るには量をこなすことが必要で、他人の記事を書き換えるしかなかったという。
引用は本来出典を明記し、正当な範囲で行わなければならない。いずれも安易な運営であり、大がかりな著作権侵害になる可能性がある。
正確な記事を作るには、労を惜しまずに取材することが求められる。しかし、ウェルクはその手間ひまをかけず、書き換えが前提と受け取れるようなやり方で、記事を量産していた。情報の中身を問わず、収益を最優先するビジネスは成り立たない。
まとめサイトは、膨大な情報の中から役立つものを探すために生まれたものである。同社は「成長を求めすぎて、正しい情報提供への配慮を欠いた」と陳謝した。
ネットには、参加者全員が情報を共有し、見知らぬ者同士を結びつける力がある。一方で情報は玉石混交だ。広く情報を扱うネットメディア全体の自覚を求めるとともに、利用する側が情報の質を見極められる教育を進めなければならない。