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【社説】

ベルリン・テロ それでも寛容保つ決意

 にぎわいに満ちたドイツの首都ベルリンのクリスマス市(いち)は一転、惨劇の場と化した。寛容政策に付け込んだテロは、絶対に許されることではない。

 旧西ベルリンの中心街。愛らしいクリスマス用品や、ホットワインの薬味の香りが誘う、心和ませる場所であり、時だった。

 突然、突っ込んできたトラックになぎ倒され、十二人が犠牲となり、四十八人がけがをした。

 メルケル首相は「ドイツで保護され、難民申請した者の犯罪と確認されれば、ひどくつらいことだ。本気で保護を求めている人には忌まわしいことだ」と、苦渋の表情で語った。

 残念なことに、首相の言葉は半ば的中した。

 容疑者は、難民申請をして却下されたチュニジア人(24)。逃亡先のイタリアで射殺された。

 ドイツで戦闘員を勧誘していた過激派組織「イスラム国」(IS)のグループに属していた。ジャスミン革命後の二〇一一年にイタリアに入国、暴行などの犯罪で服役後、ドイツ入りした。一時、警察の監視対象だったが、テロ計画の証拠は得られなかった。

 寛容政策を掲げるドイツには昨年、約八十九万人が押し寄せた。西部ケルンでの女性への暴行、南部バイエルン州での列車やコンサート会場でのテロなど、相次いだ難民申請者による事件で、メルケル首相への批判は強まった。

 今回の事件は、首相へのさらに大きな逆風となる。

 反難民を掲げる新興政党「ドイツのための選択肢」は州議会選で躍進し、来年秋の総選挙でも議席をうかがう。

 テロ予備軍への監視は必要だ。一方で、排斥がエスカレートすれば難民らは孤立する。

 社会分断の溝は深まってテロの温床が広がる。それこそ、テロリストの狙いだろう。

 難民イコール悪なのではない。事件の背景を解明し、テロへといざなう悪魔の声こそ、断たなければならない。

 「自由で共存できる開かれた社会のため、力を尽くしたい」。メルケル首相は事件後も、寛容政策を続ける決意を表明した。

 ISの性的奴隷にされていたイラクのヤジド教徒は、ドイツで保護された。ISの非道と女性や子どもたちの救済を訴え、欧州議会は人権への貢献を評価しサハロフ賞を贈った。

 寛容政策に大義はある。

 

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