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除染に国費投入 国民の理解が大前提だ

 政府は、東京電力福島第1原発事故からの新たな福島復興指針を閣議決定した。

     事故の影響で立ち入りが制限されている帰還困難区域の一部を復興拠点と定め、来年度から国費を投入して除染とインフラの整備を一体的に進める。事業開始から5年後をめどに、住民に対する避難指示の解除を目指すという。

     原発事故で避難を余儀なくされた住民にとって、復興拠点の整備は帰還や地域再生の足場となるだろう。

     政府は、新たなまちづくりのための公共事業と位置づけ、東日本大震災の復興予算から費用を拠出する。山本公一環境相は「地元の方の強い要望を尊重した」と説明する。

     しかし、除染費用はこれまで、汚染者負担の原則に基づき、東電に請求するとされてきた。国費投入は事実上の東電救済策であり、国民に負担を転嫁することになる。

     そうであれば、投入の妥当性について国会で審議を尽くし、国民の理解を得ていく必要がある。国策として原発推進を掲げてきた政府の責任も、改めて問われよう。

     帰還困難区域は事故による放射性物質の汚染が最も激しいエリアで、県内7市町村の337平方キロに約2万4000人が暮らしていた。

     福島第1原発事故の除染は従来、汚染の程度がより低い地域を中心に進められてきた。今回の決定で、帰還困難区域の復興のステージが一歩前進することになる。

     来年度予算案では、復興拠点の除染費用として約300億円が計上された。5年間では総額数千億円規模となる見通しだ。

     政府は今月、除染費用の見積もりを当初の2・5兆円から4兆円に修正する新試算を公表したが、これには帰還困難区域の除染費用は含まれていない。

     復興拠点の整備が住民の帰還につながるかどうかは不透明だ。

     帰還困難区域が大半を占める大熊町、双葉町と復興庁が実施した意向調査では、帰還したいと答えた住民は1割余りにとどまる。帰還できるとしても事業開始から5年先で、住民の意向がさらに変わる可能性も否定できない。

     復興拠点の詳細な規模や場所は、復興庁が県や各市町村と協議中だ。住民の意向や、除染の効果などを見極めつつ、拠点の整備方針を柔軟に見直していくべきではないか。

     政府は、今年8月にまとめた「帰還困難区域の取り扱いに関する考え方」の中で、将来的には全域の避難指示を解除する「決意」を示している。そのための国民負担に関しても、今後、議論を深めていくことが求められる。

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