子供にはサンタが来たが、ぼくには来なかった。であれば自分で自分にプレゼントするしかない。家族に内緒で、ひとり映画館に行くことにした。
候補は次の5作品。
- 君の名は。(男の子と女の子が入れ替わっててんやわんやする話)
- PK(神様がたくさんいるインドで、神様を探す青年の話)
- ポッピンQ(15歳の女の子5人が、異世界に行って歌って踊る話)
- この世界の片隅に(戦時中、日常を懸命に生きた女性の話 ※声がのん)
- ローグ・ワン(スター・ウォーズ3と4の間で、反乱軍が奮闘する話)
一年の疲れやストレスが吹っ飛ぶ、ハチャメチャの映画が観たかった。自分の中では、「君の名は。」か「ローグ・ワン」のいずれかにしようと思っていた。
しかし、気になる記事を読んだ。コメントを読んだ。
とにかく泣き映画でした。泣きすぎて頭痛くなった。
というくらい泣ける映画。何度も観たいとおっしゃっている。はてなブックマークのコメントでもレコメンドいただいた。
今夜は、家族に内緒で映画に行こうと思う。個人的に観たい映画まとめ - ホビヲログb.hatena.ne.jpこの世界の片隅には絶対見に行った方がいいと思います!
2016/12/26 12:28
今夜は、家族に内緒で映画に行こうと思う。個人的に観たい映画まとめ - ホビヲログb.hatena.ne.jp『pk』は良かったけど『きっと、うまくいく』のほうが面白かったな。やっぱり『この世界の片隅に』を観たほうがいいよ。今観るべき映画です。
2016/12/26 17:04
そこまで言うなら「この世界の片隅に」にしよう。
「この世界の片隅に」を観ることにした。 pic.twitter.com/2TiFdAQlfr
— ホビヲ (@hobiwolog) 2016年12月26日
しかし、ぼくには一抹の不安があった
ぼくは、2Dアニメより3Dアニメ、3Dアニメより実写が好きだ。情報量の少ない線画に対し、貧乏性な脳が満足しないのかもしれない。大人になってから、2Dアニメ映画で感動したことがほとんどない。※「プリキュア」を除く。
そして、戦争映画が大嫌いだ。戦場を描く作品も、戦時中を生きる市井の人々を描く作品も苦手だ。勝っても相手は負けている。人の死が重い。大きな音が苦手。お金を払って、どうして辛い思いをしなければならないのか。
ついでにいうと、最も嫌いな映画は「火垂るの墓」だ。
そんな人間が、「この世界の片隅に」を観て、まっとうな感想を書けるのだろうか。不安に思いながら席につく。「君の名は。」の予告も流れる。正直、こっちにしとけばよかったかなぁ、と思ったりもした。
本編がはじまった。
「この世界の片隅に」の感想
描かれる戦前の日常。主人公がのんっぽくて、のんそのものに思える。空想家で絵を描くのが好きなおっとりした女の子が、やさしい人々に囲まれ生きていく。素朴なシーンの連続。小姑の存在も、悪役として登場させるような理不尽さはまったくなく、むしろ共感できる。人間関係も、日常の出来事も、景色も、空の色も、すべてがリアルだった。
そんなリアルな描写と、のんの空想が交差するB29の空爆シーン。街が破壊され、人々が死んでいく中、青空はのんの絵の具で鮮やかに彩られる。このシーンを描くために、映画化されたのではないかと思うほどに、悲しくも美しいシーンだった。
その後の衝撃的なシーン以降は、左隣の女性が気になって仕方なかった。嗚咽し、鼻水をすすり続けていた。二つ目のポケットティッシュを鞄から取り出したのをみて、彼女はリピーターで泣くつもりで来たのだと確信した。気づくと後ろの女性も「うっうっ。。。」と唸っている。自身が、ちょっとウルッときて、泣けるかも(大人になってから映画で泣けていない)と思ったのに、周囲で嗚咽されたら、そういう気分じゃなくなってしまう。
正直言って、後半は辛かった。だから、戦争映画は苦手なんだ。
家族に内緒で映画に行った結果
ハチャメチャに楽しみたかったのに、勢いで「この世界の片隅に」を観てしまい、戦争という重いテーマを胸に家路につく。 https://t.co/Ar11s6scbn
— ホビヲ (@hobiwolog) 2016年12月26日
ひとりで映画を観て、ハチャメチャに楽しみたかったのに、ものすごく辛くなってしまった。こんなはずじゃなかったのに、どうして戦争映画なんて観てしまったのだろうか。
後悔しながら帰宅した。
ドアを開け、家に着くといつもどおりの日常があった。家族の笑顔があった。
「お前たち、いつまで起きてるんだああああ!!!」
と言いながら、なんだかウルッときた。
あたりまえの日常が大切に思えた。
ぼくは、やっぱりアニメと戦争映画が苦手だ。でも、「この世界の片隅に」を選んで正解だった。楽しい映画を観るだけでは得られない、大切なものに気づけたので。
おすすめしてくれた人、ありがとうございます。
そして、これから観に行こうという人へアドバイス。泣きやすい人は、ポケットティッシュふたつあったほうがいいかも。