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来年度予算案 漫然と借金に頼る怖さ

 政府は2017年度予算案を閣議決定した。一般会計総額は97兆円台と5年連続で過去最大を更新した。膨張に歯止めをかけられず、巨額の借金を抱える財政への危機感が感じられない。

     新規国債の発行額はわずかに減らしたが、国債依存度は35%と依然高い。発行残高は865兆円に膨らみ、「借金漬け」に変わりない。

     今回の予算編成は、安倍晋三首相が思い切った改革に取り組める好機だった。夏の参院選で与党が大勝し、政治基盤が強固になったからだ。

     首相は参院選直前に消費増税の2回目の先送りを決めた。増大する社会保障費の安定財源がしばらく確保できなくなり、歳出改革の重要性は増していた。

     効果の乏しい事業は抜本的に見直す。日本経済を持続的成長に導く分野には手厚く配分して構造改革を促す。大胆なめりはりが求められたが、実際は既得権益に縛られた。

     代表的なのは5年連続で増加して6兆円近くを計上した公共事業費だ。これまで公共事業の多くはばらまきに終わった。厳しい財政の中、上積みする余裕はなかったはずだ。

     農業の公共事業である土地改良事業費は、16年度当初予算比で200億円増の4020億円を計上した。民主党政権が減らしたが、自民党は増額圧力を強めた。政府は16年度第2次補正予算でも1752億円を盛り込んでおり、大盤振る舞いだ。

     社会保障費は32兆円台と過去最大に達した。高齢化による伸びをある程度抑え、保育士の待遇改善など少子化対策を充実させる姿勢も見せたが、めりはりは十分と言えない。

     防衛費も5・1兆円と過去最大だ。安全保障を重視する政権の姿勢を反映したが、聖域化していいのか。

     新規国債の発行額を減らしたのは、16年度に落ち込んだ税収の回復を見込むためだ。円安による企業収益の改善で法人税収が増えると想定するが、円安が続く保証はない。

     政府が健全化の指標とする基礎的財政収支は10・8兆円を超す赤字で、5年ぶりの悪化となる。税収見積もりを高めても社会保障費などが増えるからだ。国・地方合計の基礎的財政収支の20年度黒字化という目標の達成は一段と厳しくなった。

     首相は「経済成長なくして財政健全化なし」との方針を掲げてきた。成長に伴う税収増を当てにして歳出抑制に及び腰だった。今回も改革に踏み込まず、漫然と借金に頼った。

     政府の危機感が乏しいのは、日銀の金融緩和で金利が歴史的な低水準にあるためだ。だが、金利上昇を抑え込む日銀の国債購入も限界がある。改革が手つかずのままの財政はいずれ行き詰まるはずだ。

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