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クラフィ/Aliceの夢の物語 作者:無名のサイヤ人

第1章 Aliceの人々

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 起きなさーい! という声と、ドンドンとドアを叩いく音が部屋中に響き渡る。
 あまりのうるささに朝から不機嫌になる俺は起きて、 「うっせぇなぁー……」と愚痴りながらドアを開けた
「うるさいはないでしょ、うるさいはー!」
「ん……? あんた誰?」
「式部よ式部! 今日はカーマさんところに行くんでしょ!」
「あ、そうだった」
 ここが別世界だということを思い出した俺は頭を振り、眠気を覚ます。
「さて、行くわよ! 助手クン!」
「は、はい……」
 相変わらずテンションが高い式部。
 朝はとてもテンションが低い自分と真逆だ。

 俺達は街を歩いている間、カーマについて話していた。
「カーマってどんな人なんだ?」
「カーマさんは愛の神。全ての人々の愛や恋について知っていて、彼が愛について語り出すと夕方まで終わらないのよ」
「え、つまり夕方まで俺達は話を聞かなければいけないのか……?」
「ええ、そうよ。助手なんだからそれぐらい我慢できるわよね?」
「う……」
 ついて来なければ良かった。と俺は少し後悔する。

 ふと、俺は例の彼女の事を思い出す。
「愛の神…か」
「もしかして、あの金髪の女の子との相性はどうかとか聞こうって考えてる?」
「なッ…!」
「ふふっ、図星みたいね♪」
「う……」
 考えていた事と全く同じのことをズバリ当てられて俺は苦い顔をする。


 しばらく歩いているうちに、神秘的な神殿に着いた。
「着いたわよ」
「ここにカーマがいるのか…」

 すると、ギギギギ。と大きな音をたてながら神殿の大扉が開き、俺達はさらに奥へ進んで行き、広間のようなとこに出た。

 そこに、片手に弓を持ち、黒髪の中に赤髪が混じっており、パーカーの下にTシャツを着て、ジーパンをはいている青年がいた。
 そう、まさしく彼こそが愛の神・カーマだ。
「ようこそ、僕の神殿へ。何の用かな?」
「私は小説をかいている、紫 式部という者です。こっちは助手の……」
「風間 遥人です」
「小説の参考にしたく、カーマさんのところへやって来たというわけです」
「なるほど……いいだろう。聞かせてあげよう、愛の素晴らしさを! まず、愛にはいろんな愛がある。」
 カーマは薄く笑いながら話し出す。

 しかし、そんな彼の目には「悪」というものが芽生えていた。
「どの愛もほんとうに素晴らしい……だが人々はその愛を無駄にしているッ!愛とは、その愛す人を従わすためにあるのだ!! だから俺はその愛を無駄にしないため、愛す人を奪った!」
「愛す人を……奪った?」
 その言葉に俺は眉を寄せる。
「もしかして、あなたの隣にいる女性はシヴァさんの嫁のパールヴァティさん!?」

 カーマの隣には、槍を持った薄花色の髪のツインテールで薄暗い目をした美しい、細身の女性が立っていた。
「ああ、そうだ」
「他人の嫁を……奪っただと!?」
 唖然とする俺と式部。

 そこに、何者かがやってくる。
「カァーマァ───ッ!!」
 その何者かがカーマの名を叫びながら、神殿の大扉を吹き飛ばす。
「!?」
 式部と俺は、同時に後ろに振り向く。
 そこにはTシャツのうえに半袖のパーカーを着た、黒っぽい肌に白髪長髪の大柄でカーマより身長が少し高い、若い男が威勢よく立っていた。
「来たか……シヴァよ!」
「パールヴァティを……返しやがれぇ!!」
 大きな氷柱を4つほど作り、カーマに投げつけるシヴァ。
「…っ!」
 素早く動き、その攻撃をパールヴァティが槍で打ち砕く。
「よくやった。パールヴァティ」
「……全ては……主のために………」
「パールヴァティ……貴様ッ!パールヴァティに何をしたぁッ!!」
 怒りで周りが見えなくなったシヴァはカーマの首根っこに飛びかかろうとした。
「聞きたいか?お前とパールヴァティは結婚したはいいが、お前は山にこもってしまった……その後パールヴァティが俺のところへ泣きついてきたんでな。少し細工をしたんだ」
「なんだと……!?」
 邪悪に満ちた目をするカーマ。
 一方シヴァは、さっきまでの怒りは消えて、後悔と無力感で心がいっぱいになった。

 勢いを無くしたシヴァに、カーマが何かを命令する。
「そうだな……パールヴァティを返して欲しかったらおれの仲間になれ!」
「仲間に……!?」
「まず手始めに、あの2人を倒すんだ」
  カーマはその長い指で、神殿の端の方に避難していた俺達を指した。
「え!? 私達!?」
「貴様達は知りすぎたからな……俺達のことを!」

 シヴァはゆっくり両手を広げ、大きな氷柱を作り出す。
「くっ、すまない……見知らぬ者」
「……あなたがやるっていうなら、こっちも容赦しないわよ」
 式部は、炎も凍る様なほど冷たい冷気を放ちながら巨大な氷塊を作る。
「はぁっ!!」
  水柱を式部にぶつけるシヴァ。
  それに続き、式部もシヴァに氷塊を投げつける。
  シヴァの水柱は、式部の冷気によって凍り、式部の攻撃はシヴァに直撃した。
「ちッ!」
  シヴァは、今度は巨大な氷塊を数個作り出した。
「氷同士のバトル……ふっ、楽しませてくれるわね!」
  式部も同じく、巨大な氷塊を数個作り出す。
 辺りにたちまち凄まじい冷気が漂よい、壁や床に薄く氷が張る。
「う、寒い……」
  俺はその寒さに思わず全身が震える。 息は白くなり、体感的には気温は10〜15度ほどにも下がっていた。

 2人共、余裕という顔をしていた。
「どっちが先に凍え死ぬかな……?はっ!」
「もちろん……お前だぁっ!!」
 2人はお互いの氷塊をぶつけ合う。
  すると床から高い天井まで届くほどの氷の柱ができ、式部とシヴァは氷越しにお互いの行動を見極める。
「………はッ!」
  シヴァは高速で式部の近くに駆け、氷塊を放つ。
  その氷塊が式部に当たる直前、彼女が目の前に氷の盾を作り出す。
「なッ!?」
「貰ったッ!!」
  式部は素早くその盾から飛び出し、渾身の氷塊をシヴァに放つ。
  シヴァは氷塊と一緒に後方に大きく吹き飛び、氷柱と氷塊に挟まれ胴体が氷で縛られた状態になる。
「く……ッ!」
「これで終わらせてあげるわ」
  そして片手を前に出し、とても巨大な氷塊を作る式部。

 勝利は確実 と思ったその時、彼女の右腕に痺れが走り、その痺れが一気に身体に渡る。
  途端に立つ力を無くした式部は壁に氷塊を放ってしまい、地面に倒れる。
 その氷塊は壁を破壊し、当たった辺りをたちまち氷漬けにした。
「先生っ!!」
「なに……、これ……っ!?」
「油断したな。バインドの矢だ」
そこには弓を構えていたカーマがいた。
「お前、卑怯だぞっ!」
  目をきっ とさせ、俺はカーマを睨みつける。
「勝てればなんでもいいんだよ!シヴァ、今度はそこのやつが相手だ。やれ」
「ッ……いくぞ」
  シヴァは走って俺に近づき、拳を俺にぶつける。

  紙一重のところで攻撃を避けるが、片方の腕で腹に思いっ切りパンチを入れられる。
「ぐはッ……!」
  俺は生々しい声を出し、吹き飛んで壁に激突すし、俺は床に四つん這いの形で倒れる。
「助手クン…ッ!」
  必死に動こうとする式部だが、さっきの矢のせいで思うように身体が動かない。

 シヴァは小さな氷塊を30個ほど作り出す。
「これもパールヴァティのためなんだ……すまない。青年よ」
  そう言って、その氷塊を一気に俺にぶつける。
  俺は氷漬けになり、この世界から消えた。

  そう思った一同だが俺は目の前に旋風を巻き起こして氷塊の突撃を防いだ。
「なにがパールヴァティのためだ……本当に愛しているなら、カーマを倒してでも取り戻すだろうがぁ!!」
  俺は一瞬腕を後ろに引き、前に突き出して氷塊を四方八方に打ち返した。

  俺は即座に体勢を立て直す。
「今度はこっちから行くぞっ! まずはカーマッ!貴様からだッ!!」
「ッ!!」
  突風のように駆け、爆風と氷塊に怯んだカーマに近づく。
「甘いッ!!」
  カーマはとっさに矢を5本一気に射る。
「甘いのはそっちだァッ!!」
  俺は飛んでくる5本の矢を風の様に避け、腕に爆風を取り巻き、拳をカーマにぶつける。

  するとその爆風は神殿の壁や屋根を粉々に吹き飛ばした。

 神殿を吹き飛ばした俺は、瓦礫の上に立っていた。
「ははっ、ざまぁ……見やがれ……」
  強大な力を一気に使い、疲れきった俺は足から崩れ倒れた。
「じょ、助手クン…っ!」
 痺れが収まってきた式部が、片足を引きずりながら俺に駆け寄る。

 シヴァが瓦礫の中から出て、ホコリをはらう。
「ふぅ、まさかそんな力がそいつにあったなんてな……」
「あら……?私は一体……」
  衝撃のおかげで洗脳が解けたパールヴァティが気がつく。
「パ、パールヴァティ、すまなかった。お前の気持ちも知らずに山にこもって……」
「シヴァ様……」
  2人は本当の愛を語り、抱きしめ合った。
「いいですなぁ~!いいネタになりそう!」
  空気を読まずにメモ帳に書き取る式部。
  あまりの恥ずかしさに、シヴァとパールヴァティの両者が顔を赤くする。

 俺の攻撃をモロにくらったカーマが、床だった所に仰向けに倒れている。
「う………ぁ、あれ……僕は?……なんでこんなに神殿が……」
  目を覚ましたカーマは、辺りの壊れ様に驚く。
「あなた、覚えてないの? この人とあなたが闘ってこんな荒れたのよ」
「その人と……? 覚えてない……女性の声が聞こえてから、記憶が抜けてる……」
「女性? もしかするとカーマさんもその女性に操られていたのかも……」
「操られた……?僕はそんなに酷いことしたのか?」
「ええ、実は………」
 式部がさっきまでの事を話し出す。
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