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2004-11-01

[] 在日の生活保護の受給率は高い?

ちょっと酷い話。去年の(今年と勘違いしてました。訂正します。)9月頃、2ch ハングル板で在日韓国・朝鮮人の生活保護受給率が非常に高いという話が出ていたようです。以下がまとめサイト。

http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/2487/

これは驚くべき事実! と思いきや、どうも怪しいので調べてみました。このサイトは「在日韓国、朝鮮人の5人に一人は生活保護受給者」であると主張しているのですが、これは以下の数字が元になっています。

生活保護人員数  (厚生統計要覧13年度)

日本人             1,148,088人

日本国籍を有しない外国人  421,651人

これはにわかには信じがたい数字です。ここで参照されている統計要覧の元データは以下のものと思われます。

これによると、平成13年度の全国の被保護実人員として 1,148,088人、平成13年度の外国人の被保護実人員として 421,651人というデータが出ていて、上の数字とは一致しているように見えます。

しかし、よく見ると、全国のデータの表の上には(各年度1か月平均)という注意書きがあります。そして、外国人の表の被保護実人員の下には「1か月平均」という欄があり、上の数字の約12分の1にあたる 35,138人という数字があるのです。これは一体どういうことでしょう?

結論から言うと、まとめサイトの筆者(やそのネタ元の人)は外国人の被保護人員だけ12倍に水増しした上で比較しているのです。勘違いなのか悪意があってのことかは知りませんがこれは酷いデマです。

生活保護の被保護実人員というのは毎月の生活保護を受けた人の数を累計した延べ人数です。人口あたりの保護率を求める場合はこれを12で割った1ヶ月平均の人員を人口で割ります。第3−5表では表内に保護率を計算しているので最初から1ヶ月平均の値が書いてあるのでしょう。

となると、外国人の被保護人員についても同様に計算しないと比較になりません。上の第3−10表によると、平成13年度の1ヶ月平均の被保護人員である 35,138 人を、平成13年の外国人登録者の総数の 1,778,462人(参照: 平成13年末現在における外国人登録者統計について)で割って*1、被保護率は約 2.0% になります*2

確かに日本全体の保護率 0.9 % に比べると倍以上と高いのですが、5人に1人 ではなくその1/10の 50人に1人 です(これは外国人全体での割合です。在日限定の割合については追記その2を参照)

これは外務省の人種差別撤廃条約第1回・第2回定期報告(仮訳)別添6.被保護外国人数の傾向ともだいたい一致します。ただしこの表は何故かあちこち文字化けしてるので注意。保護率がパーセントになっていますが、正しくはパーミルでしょう。平成9年度の全国の被保護人員 405,589人というのも、上の第3−5表と照らし合わせると 905,589人です。

以上についてまとめサイトの著者に連絡しようと思ったのですが、連絡先がどこにも見当たりません。どうしたらいいんでしょ?

via: 「生活保護」「在日外国人」でぐぐれ (自アン_)

追記

とりあえず http://d.hatena.ne.jp/http?//www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/2487/ でヒットした日記にトラバ飛ばしておきます。

反論等ありましたらよろしくお願いします。

追記その2: 実際の「在日の」保護率について

id:kerberos さんによると誰かがこのエントリをネタにしたスレを立てています。そこの書き込みによると、この件はハングル板で10日程前には既出だったようです。

http://society3.2ch.net/test/read.cgi/korea/1098348592/100-377

とりあえず「5人に1人はウソ」というのは認められた模様*3。あとは在日韓国・朝鮮人に限ると保護率はどうなるかという話になっています。

件のまとめサイトでは一見それを計算しているように見えて実は外国人全体の保護率を計算しており、このエントリでも比較のためそちらを計算したのですが、ハン板的にはそっちが問題ということで、焦点は、

  1. 分子はいくつか。国籍毎の保護人員のデータが必要。
  2. 分母はいくつか。生活保護を受けられる人(定住者)に限るべきでは?

というあたり。

1 については公開されているデータに該当するものが見当たりませんが、厚生労働省にメールで問い合わせて回答を得たという人が公表したデータが以下に転載されています。

このデータ自体の信頼性は未検証ですが*4、特に怪しい点も見当たらないのでとりあえず信用することにします。

これは被保護世帯数と世帯人員の構成の表で6人以上世帯の部分が曖昧になるため求めるデータとは微妙に違いますがそれでも概算はできます。平成14年度のデータだと*5、世帯人員を足し合わせて概算すると 26,765人 / 625,422人 で約 4.3 % です*6

2 は「1990年、厚生省より、生活保護対象外国人は定住者に限る、非定住外国人は、生活保護法の対象とならないと口頭で指示が出されている」ため、分母がもっと小さくなる(保護率が増える)という主張があります。

しかしこれはその後の動きで基準が緩和されているようです。また自治体によっても対応は異なるようではっきりした数字はわかりません。

http://homepage3.nifty.com/amdack/case/case38-1.html より:

しかし、生活保護の予算抑制と非定住外国人(短期滞在及びオーバーステイの外国人等)の増加に伴い、1990年、厚生省より、生活保護対象外国人は定住者に限る、非定住外国人は、生活保護法の対象とならないと口頭で指示が出されたのです。本来は文書による変更通知が必要で、 382号通知が存続するにも関わらず、この口頭で出された厚生省の見解に従い、全国の自治体はそれ以後、非定住外国人に対する生活保護の準用を行ってきませんでした。このような状況の中、1997年、熊本市の日本国籍を持つ子を扶養する在留特別許可申請中のオーバーステイの外国人の母(その世帯)に対して生活保護を準用することが可能か否かの照会に対して、厚生省は、1996年7月30日の法務省の通達(日本人の実子を扶養する外国人の親へ定住者ビザの取得を許可する旨の通達)に基づき、定住者の在留資格がほぼ確実に取得できるとして、生活保護を準用することが可能と回答しました。しかしその後、厚生省は、在留資格が切れる前に在留資格の取得の申請をしていれば、在留資格が無くても生活保護準用の協議対象とすると、その見解の変更を行ったのです。そして昨年東京都は、色々な現状を踏まえ、都として一定の見解を示す必要性が生じたとして、日本人の子、日本人に認知された子を養育している等、在留資格取得の可能性が高いと判断されること、在留資格の取得申請をしていること、または取得申請を準備していることという条件を満たす外国人に対して、例外的に生活保護を準用するという見解を示しました。

もう一つ在日という用語は特別永住者を指すのではないかという意見。例えば外国人参政権問題などで保護率問題を扱う際にそこのところを厳密に区別して扱うならそれも正論でしょう。現実にそうなってるかは甚だ疑問ですが。

ただしその場合は分子のほうも特別永住者の被保護人員だけ区別して扱う必要があります。が、そういうデータは見当たらないのでとりあえず分子を補正せずに最大の値を見積もると、平成14年度の韓国・朝鮮籍の特別永住者は 485,180人ですから(「平成15年末現在における外国人登録者統計について」第9表より)保護率は約 5.5% です。

結局、平成14年度の「在日」の保護率は 4.3% 〜 5.5% の間(23人に1人〜18人に1人)と考えられます。だいたい 20人に1人だと思っておいてよいかと。そして平成14年度の全国の保護率は 0.98% です。これが多いのか少ないのか、多いとして何が問題なのか(弱者権力による不当な受給のあらわれと見るか、差別による不当な経済格差のあらわれと見るか、等々)は各自調査・判断してください。僕は在日問題には詳しくないので。

いずれにせよ「5人に1人」はその根拠も数字も全くのデタラメであり、これを無批判に紹介しているサイトはすみやかにお詫びして訂正すべきでしょう(黙って削除とかじゃなくて)。

*1:件のまとめサイトでは何故か 被保護人員 * (在日比率 = 在日人口 / 外国人人口) / 在日人口 というまわりくどい計算をしてますが同じことです。

*2:普通は人口千人あたりの割合(つまりパーセントではなくパーミル)で表すようですが、わかりやすいようにパーセントにしました。

*3:とはいえ、まとめサイトやそれをリンクしてるサイトはまだ放置状態ですが。。。

*4:こういうのは電子署名付きで回答して欲しいですね。

*5第3−10表が平成14年度分までしかないので。

*6:6人以上世帯を6人と計算(4.28%)。倍の12人と計算しても 4.34% で誤差の範囲。

abcabc 2007/12/29 08:20 民潭HPより
全国の民団団員数・国民登録者数と全体在日同胞数
世帯       109,518
http://www.mindan.org/mindan.php#08  

厚生労働省統計表データベースシステム
第14表 被保護外国人世帯数、世帯人員・世帯主の国籍別
韓国又は北朝鮮   21,333
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-kou44/data16/H16kiso14.xls

被保護世帯率 19.48%


日本国籍世帯数 51,102,005世帯
http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/020918.html

被保護世帯数  967,437
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-kou44/data16/H16kiso4.xls

被保護世帯率 1.89%

rnarna 2007/12/29 14:03 民団の統計には北朝鮮系の人が含まれませんのでそれを分母にすると被保護率を過大に見積もる事になります。せめて分母に朝鮮総連会員の世帯数を足すくらいはしないと意味のない数字です。
また、それぞれの集団で1世帯あたりの人数が違う場合は被保護世帯率を比較する意味がないので注意が必要です。

1 2008/10/07 06:02 50人に一人だろうが、60人に一人だろうが、
日本人口における在日の人数は200人に一人
受給率が高いのは明らか

エセ理系エセ理系 2009/04/18 23:19 ちょっと数字に違和感を感じたので計算してみました。

各年度1か月平均の生活保護人員数が
 日本人 1,148,088人
 外国人  421,651人

として、この数字を12で割った数字が本来扱うべき数値であり、
これを外国人登録者総数の 1,778,462人で割った値

 421,651÷12÷1,778,462=0.01976 (約1.97%)

が本来の生活保護受給率というのは良いんですが、
それと同様に日本人の受給率を(当時の日本人人口をざっくり1億人として)計算すると

 1,148,088÷12÷100,000,000=0.0009567 (約0.09%)

となり、文中で「日本全体の保護率」として挙げられている数値が
一桁違っているように見られるのですが・・。

また、そうすると全体の生活保護受給率があまりにも低く、

 (1,148,088+421,651)÷12÷(100,000,000+1,778,462)=0.001285(約0.12%)

実態に合っていないように思います。
(大阪市で4%、一番低いとされる富山市でも0.3%ほど
 ttp://www.academyhills.com/note/opinion/tqe2it000004c59y.html)

計算や認識に間違いが有りましたらすみません。

rnarna 2009/04/19 00:33 >>
各年度1か月平均の生活保護人員数が
 日本人 1,148,088人
 外国人  421,651人
<<

これはデマサイトに書いてあった数字で、「日本人」(正確には日本全体)の方は1ヶ月平均、「外国人」の方は延べ人数なんです。なので「日本人」の方は12で割らなくてよいのです。リンク先の厚生労働省の Excel 表でも平成13年の日本全体の被保護率は9.0/1000 (= 0.9%) となっています。

エセ理系エセ理系 2009/04/26 20:33 なるほど、納得しました。
レスありがとうございました。

あ 2009/08/29 15:44 >厚生労働省統計表データベースシステム
>第14表 被保護外国人世帯数、世帯人員・世帯主の国籍別
>韓国又は北朝鮮   21,333
>http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-kou44/data16/H16kiso14.xls
>被保護世帯率 19.48%

これ‰(パーミル)だったのを改竄して%にしてますよ。
ネトウヨの方たちはこういった改竄を平気でやるので気をつけましょう。

ちなみに沖縄の例
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-05-16-M_1-027-1_001.html
生活保護受給者が急増 20年ぶり高水準
雇用問題悪化 昨年12月から月200人ペース
 県内で生活保護を受給する人が急増している。2009年2月の受給者数は2万5091人で、
人口1000人あたり受給者の割合を示す保護率は17・89‰(パーミル)と、20年ぶりの高い水準になった。

rnarna 2009/08/31 01:38 >あ さん
ソースはこのあたりですか?

http://youmenipip.exblog.jp/6947520

このブログのコメント欄に同様の書き込みがありますが、パーミルがパーセントという問題ではなくて、分母となる世帯数のデータに民団の統計を使っているのが原因だと思います(「被保護世帯率」は政府統計の値ではなく、誰かが独自に計算したものです)。

http://www.mindan.org/mindan.php#08

これは民団に加入している在日韓国人世帯数を集計したものだと思います。朝鮮籍の人は含まれませんし、在日韓国人でもこれで全部とは限りません。だいたい政府統計で60万人くらいいる在日韓国朝鮮人の世帯数が11万世帯って変ですよ。

在日韓国朝鮮人の世帯数というのは何をカウントすべきかも曖昧ですが(韓国・北朝鮮以外の国籍の人が同居している場合どうなるのか? とか)とりあえず世帯主が在日韓国朝鮮人という世帯は、2007年の統計になりますが、30万世帯弱になるようです。

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02020101.do?method=xlsDownload&fileId=000001308444&releaseCount=1

で、コピペにあった被保護外国人世帯の統計の2007年版はこれ。

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02020101.do?method=xlsDownload&fileId=000003218814&releaseCount=1

「被保護世帯率」(世帯人員構成が変わると比較できないのであまり意味ない気がしますが…)は、22,918 / 296,670 = 7.7%

2007年の日本全体は、986,825 / 44,107,856 = 2.2%

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02020101.do?method=xlsDownload&fileId=000001160243&releaseCount=1
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02020101.do?method=xlsDownload&fileId=000003218803&releaseCount=1

rnarna 2009/08/31 02:02 僕:
> ソースはこのあたりですか?
って、よく見たらソースはここの最初のコメントか… (;´Д`)