去年もやったこれを今年も書いてみようと思います。昨年は小説3作を紹介していたようです。今年はAdventCalendar、やりそびれちゃったな。
2016年はなんだかいろいろあって、小説をあまり読めなかった気がします。疲れていたのか考えるのがつらかったのか、よく漫画を読みました。その中で3作。
「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」永田カビ
「あげくの果てのカノン」米代恭
「先生の白い嘘」鳥飼茜
「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」永田カビ
試し読みなどはこちら。
感想も書いていますが、衝撃的すぎて読み返すのが辛いと思えるときもあったほどの一冊。鬱と摂食障害、家族との関わり、性的なものへの興味、さびしい、死にたい、という気持ち。確実に自分の中に「ある」感情をここまで鮮やかに鋭く表現してくれた作品をわたしは知りません。まるで自分が体験したことのように胸のうちを切り裂かれて、その中から彼女が取り出した言葉と最後のページで見える希望が本当にまぶしく思えます。
彼女のその後の物語はこちらで。
「あげくの果てのカノン」米代恭
試し読みなどはこちら。
「SF×不倫」と銘打たれていますが、どちらかというとヒロインであるストーカー気質なかのんちゃん(気質というかストーカーなんだと思うんですが)の心の動きは、恋する誰の中にもあるものなのでは……と思えるほどかわいらしい。「SF」という設定があるからこそ恋の奇妙さが浮かび上がるというか、設定の妙を感じます。1巻のラストで「どうなっちゃうの〜〜〜!」と思って慌てふためいて、そして2巻でついに奥様登場で、きっちり「SF」と「不倫」を踏んでいっているのもすごいなと思います。
「コンビニ人間」の村田沙耶香さんとの対談もおもしろかったです。
「先生の白い嘘」鳥飼茜
試し読みなどはこちら。
「地獄のガールフレンド」で鳥飼茜さんを知ってその後にこちらを読みましたが、女性3人で喧々諤々とルームシェアしながら男について女についてを描く「地獄の〜」よりもっと鮮烈で重く、暴力的で、でも嫌悪感なくスッと自分の中に入ってくる作品です。
「セックス」という暴力について、性別の非対称性について、それを乗り越えていこうとする人たちの様子は読んでいて痛々しいし、さらにそれをリアルに描いているキャラクター造形の凄み、というのに圧倒されます。(暴力やレイプのシーンもあるので苦手な人はご注意ください)
2巻の巻末にある萩尾望都さんのコメントもすごいので、抜粋。
彼ら登場人物の立ち位置も関係も、
これまで存在していたのに誰も語ってこなかったものだ。語られてやっと見えるものになる。
ぎりぎりのところで語られている彼らの言葉は強い。あるときはおずおずと、
またはきっぱりと。暴力的に。攻撃的に。羨望と侮蔑。どれも言葉としては深い。
そして、新しい。そして痛く恐ろしい。
これほどの言葉を生み出す鳥飼茜という作家はすごい。
萩尾望都さんはこのコメントの文末をこんな言葉で締めくくっていて、わたしも心から同感です。
そして、暴力的なのに、品がいいです。
という感じで
今年読んだ中で特に忘れられない3作でした。
このエントリを書くにあたりいろいろ思い返したりしていたのですが、この3作も、どこか共通点があるような気がします。自分の変化に呼応して、読みたい作品も変わるのかもしれません。
あとはKindle unlimitedで土山しげる作品を読み漁ったりもしているのですが、まあこれは各自お読みいただければ……。わたしは食キングと喰いしん坊!、荒野のグルメがめっちゃ好きです。荒野のグルメは感想も書いているのでよろしければ。
「荒野のグルメ」が良すぎて最高だった話 - インターネットの備忘録
今日はそんな感じです。
チャオ!