【町田徳丈、北京・石原聖】中国国防省が24日に発表した中国海軍の空母「遼寧」の遠洋訓練を巡り、防衛省は25日、遼寧が駆逐艦など5隻と艦隊を組んで同日、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過し西太平洋に入ったと発表した。海上自衛隊の護衛艦とP3C哨戒機が確認した。九州・沖縄から台湾やフィリピンにかけての中国の防衛ライン「第1列島線」を中国空母が越えたことが、海自により確認されたのは初。
同省によると24日午後4時ごろ、東シナ海中部を東進する中国空母や駆逐艦、フリゲート、補給艦の艦隊8隻を海自護衛艦が確認。このうち空母と駆逐艦3隻、フリゲート2隻の計6隻が25日午前10時ごろ、宮古島の北東約110キロの宮古海峡を東シナ海から太平洋へ南東に向けて通過した。日本の接続水域(沿岸から約44キロ)や領海(同22キロ)には入らず、空母からの航空機の発着艦もなかった。
25日午後には、艦隊のフリゲート1隻から哨戒ヘリ「Z9」1機が飛び立ち、宮古島領空の南東約10~30キロの上空を飛行し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)した。領空侵犯はなかった。防衛省によると遼寧の動きは中国国防省から日本の外務省に事前に連絡があったという。
遼寧の今回の動きについて、中国メディアは空母が遠洋に出る道が開かれたとし、今後訓練が常態化すると報じた。公開映像などから、遼寧に随伴する艦船の所属は「北海・東海・南海」で、中国海軍の3艦隊すべてから参加している。
一方、台湾の防衛当局は25日、「遼寧が(フィリピンと台湾の間の)バシー海峡を通過するか監視している」と述べ、中台などが対立する南シナ海への展開に警戒感を示した。
南シナ海では今月15日、米海軍の無人潜水機を中国海軍が捕獲する事件があったばかり。遼寧の動きについて中国の国際情報紙・環球時報(電子版)は、南シナ海で動く米国への対抗措置だとの見方を伝えている。また、中国が将来的に西太平洋上で実施をもくろむ海空軍合同訓練に向けた布石ともみられている。