こちらの記事の続きになります。
私は夜中に車を走らせ、
「彼女の実家」に向かっていました。
目的は?お母様に3つの事を伝える為です。
■彼女が浮気をしていた事
■彼女と別れる事
■これまで良くして頂いた事のお礼
安物のスーツとネクタイを付けて
一応の正装はしてきました。
気が重い。
「娘が浮気していた」なんて話しを聞きたい親は居ません。
しかし、私の口からハッキリと話すしかありません。
ふぅ、と深呼吸をして家のチャイムを鳴らします。
事前に連絡はしてあったので、
お母様は、すぐに「ヌッ」と顔を出しました。
言いたくはないが、言わなければいけません・・・
緊張しながらも、私は伝えるべき3つの事を淡々お話しました。
話しを聞いた、お母様の反応は?
「ああ、そうなんだー」
と、それだけでした。
(娘の浮気に関して謝りもしないのか・・・)
とも内心思いましたが、
彼女はすでに自立した一人の大人です。
親御さんに謝罪を強要するべきではありません。
玄関先で失礼かと思いましたが、
私はそのまま話を続けました。
そして私の気持ちと、これまでのお礼を述べると
頭を下げて、素早くその場を失礼する事にしました。
お母様はずーと黙って、置物のように話しを聞いていました。
何だか少し眠そうです。
しかし、私がその場を立ち去ろうとした瞬間
お母様が私の腕をガシッと掴んできたのです。
(あっ・・・・)
お母様がニヤリと笑います。
その瞬間、私の頭の中に
ヤッくんと元彼女の顔が思い浮かびました。
彼女との別れ話の結末
ここでいったん、話を最初にお話した、
「彼女の浮気の発覚」まで戻します。
浮気がバレた彼女は「チッ!」という舌打ちと共に
私との「別れ」を宣言してきました。
私は何と答えようか悩みました・・・。
彼女のことはまだ愛している。
しかし、浮気は許せない!
私は別れたくないのだろうか?
考えがまとまりません・・・。
部屋に長い沈黙が続きます。
彼女は、私と付き合ってから止めていた
「タバコ」を目の前で吸い始めました。
「お前とは別れるんだから、もう関係ないだろ!」という事でしょうか?
彼女が別れたい「理由」
それは「私の甲斐性が無い」からです。
他にも理由はあったのでしょうが、これが大きな理由だと思います。
なにせ、私の収入はせいぜい「月に10万前後」
(※個人事業主扱いなのでここからさらに税金や保険料が引かれます。)
最近彼女はブラック企業の仕事を辞めてアルバイトを始めていました。
アルバイトの月収は「15万円」
私が毎日14時間あまり、必死で飛び込み営業などを行って
稼いでいる金額よりもずっと多いのです・・・・・。
彼女は
「アルバイトって固定給もらえるから安定感すごいよ~」
と心の底から喜んでいました。
彼女はもう、ブラック企業の洗脳が解けていたのです。
私達のいた会社は「完全歩合制度」なので、
契約が無ければお給料も0です。
一緒に超ブラック企業で働いていた時は何も言わなかった彼女も、
私にブラック企業を辞めるように説得してきました。
しかし、私はどんなに貧しくてもブラック企業を辞めませんでした。
やめたくありませんでした。
その事で「言い争う事」が何度もあったのです。
そのたびに、よく頭をボコボコと殴られました。
なので、彼女が浮気してしまう気持ちは
痛いほど理解が出来ました。
(貧乏はツライ)
お金は大事です。
甲斐性の無い私が・・・・
浮気した彼女を責める事が出来きるのでしょうか?
私は決断しました。
(よし・・・・・荷物をまとめて出ていこう)
そう決意して、勢いよく立ち上がったその瞬間、
彼女が突然叫びました。
「やめて!お願い殴らないで!」
私はビックリしました。
さっきまで高圧的な態度だった彼女が
急に涙目になりプルプルと震えています。
(なんだ??どういう事だ???)
私は彼女に殴られた事は何度もありましたが、
私が彼女を殴った事など一度もありません。
(そうか・・・・もしかしたら)
彼女もまた
お母様にヒドイ虐待を受けて育ったのかもしれません。
悪いことをしたら殴られる。
憶測ですが
それがカラダに染み付いているのでしょう。
私は喋る気力も無いので、黙ってそれを見つめます。
すると、彼女はベラベラと一人で喋りだしました。
それは、殴られないように
私の同情を買おうとしているのがミエミエでした。
私は殴る気など全くありませんが、
黙って彼女の話に聞き入りました。
彼女は早口で喋り続けます。
(小一時間程、一人で喋り続けました。)
5人の男性と浮気をしていた事
でもそれは「一時の気の迷い」だった事
小さい頃からお母さんの暴力が酷く、逆らうと殴られていた事。
お金を稼ぐ為に、学校にも行かせてもらえなかった事
本当はもっと友達と遊びたかった事
お母さんの暴力で家族がバラバラになってしまった事
本当は隠れて兄弟で連絡を取り合っている事
お金の為にやりたくない事を、たくさんやらされてきた事
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うーん、長い。
たぶん、1時間程一方的な話を聞いていましたが
話の内容は大体こんな感じでした。
(すいません、あんまり覚えてません)
彼女は「身を守る為に」必死でアピールをしてきたのです。
つまり、彼女が言いたいことは
「全部お母さんが悪い、私は悪くない!」
と言うことでした。
いやいや・・・・例えお母様が酷い人だったとしても、
今、アナタがした浮気とは関係無いでしょう。
と、言いたかったのですが・・・・。
私は「何も言わず」
荷物をまとめでアパートを出ました。
「彼女と話し合いになる」とは、とても思えなかったからです。
ヤッくんも同じ気持ちだったのかもしれません・・・・。
そして彼女が必死に「言い訳」する姿を見た私は
すっかり愛情が覚めてしまいました。
あとはただ、ただ虚しいだけでした・・・・。
最後の戦い
お母様への「挨拶」を終えて、
帰ろうとした私の腕を、突然
お母様がガッと掴んできました。
走馬灯のように記憶が駆け巡ります。
頭に「殴らないで!」と叫んでいた彼女の顔が浮かびました。
顔面を打ち抜かれたヤッくんの顔も思い浮かびました。
お母様はニヤリと笑いました。
恐怖で足の震えが止まりません。
(殴られる・・・いや蹴られるかも・・・)
もしかしたら、スピリチュアルパワーで攻撃してくるかもしれな
私は「覚悟」を決めました。
しかし・・・・・・・・・・。
なんと・・・・・お母様が私の腕を掴んで、
胸をグリグリと押し付けてきたのです・・・・。
(ええ・・・・・)
スピリチュアルパワーの攻撃でした。
お母様は頬を赤く染め、目をトロンとさせながら
「よかったら、あがってかない?」
と小声で私に言いました。
(お母様は・・本気だ・・・)
お母様は興奮しすぎているのか、口からネチャネチャと異音がした。
ネチャネチャと何かを囁いていましたが、
よく聞き取れませんでした。
なぜなら私は
完全に頭に血が上っていたからです。
(このクソババア・・・・)
人に絶対に言ってはいけない、汚い言葉です。
しかし、私の頭の中で真っ先にこの単語が思い浮かんだのです。
どうかお許し下さい。
私が何より「腹が立った」のは
お母様の
「真っ赤な口紅」です。
最初は暗くて気が付きませんでしたが、
近づくとその真っ赤な口紅に目がいきます。
つまり・・・はじめから
今日、私と「寝る」つもりだったという事です。
ヤッくんに捨てられて、寂しかったのでしょうか?
いや、理由は何でもかまいません・・・・
(とにかく許せない!)
私はお母様が絡みついた腕を
勢い良くパッと振り払いました。
腕を振り払われ、プライドを傷つけられたお母様は
その表情を、みるみるうちに変えていきました・・・・。
眉間にシワを寄せ、ほほがピクピクとけいれんしています。
ですが、もう知った事ではありません!
私も完全に怒りが頂点に達していたのですから!
私はお母様の反撃を予測して身構えました。
しかし、お母様は動きません。
フゥーフゥーと深呼吸のような事をすると
お母様はまたニヤリと笑いました。
(大人の余裕を見せたいのだろうか?)
しかし、お母様は呼吸を整えながら話を始めました。
「あんた、あのアパートを借りているのが誰か知ってるの?」
(アパート?あの私達が同棲していたアパートの話しだろうか?)
一体何の話しをしているんだ・・・・。
私は答えません。
お母様は、話を続けます。
「あれはね、ヤッくんのお父さんが借りてるアパートなんだよ?」
ヤッくんの?お父さんが?
私には、何の話しなのかサッパリわかりません。
そして、お母様は勝ち誇った顔でこう言いました。
「で、あの子が家賃をどうやって支払ってたか、わかる?」
あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
血の気が引いていくのを感じました。
私は、彼女から「家賃」の話しを聞いた覚えがありません。
私たちは、
元々彼女が一人暮らしをしていたアパートに二人で住んでいたのです。
そして、お給料が入れば「全額」彼女に渡していました。
お金の管理は彼女がしていたのです。
「ウソだ・・・・」と言おうとしましたが
声が出ません。
プライドを傷つけられたお母様が
苦し紛れについた汚いウソに違いない!
きっとそうだ・・・・。
しかし思考が止まりません。
じゃあ・・・・ずっと彼女は、
ヤッくんのお父さんと関係があったという事?
私と付き合う前から?
付き合ってからも?
ヤッくんのお父さんと彼女は・・・
二人はどういう関係だったんだ・・・・?
彼女は・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(いや、もういいんだ・・・)
私はお母様に背を向けると、車に向かって歩きはじめました。
なぜだかフラフラしてしまい、
真っ直ぐ歩く事が出来ませんでした。
私と彼女はもう別れたのです。
だからこれ以上、何かを知る必要は無いのです。
いや、知りたくもありませんでした。
後ろで、お母様はまだ何か私を煽り立ててきます。
私は、振り返りませんでした。
何も考えたくありませんでした。
彼女ともお母様とも
それっきり会っていません。
誰も
何も
特をしない、
どうしようもない
私のこの話はこれでオシマイです。
ありがとうございました。