個人型DC、運用で差が出る金融機関の選び方
個人型確定拠出年金(DC)は自分で金融機関を選び、運用次第で老後に残せるお金が変わる仕組みです。どんな視点で金融機関を選び、どう運用をすればいいのでしょうか。今回は岡根知恵さんが発表します。
筧 愛称がiDeCo(イデコ)に決まった個人型DCは、金融機関選びが大切といわれますね。
岡根 はい。選ぶ際は大きく分けて(1)口座管理費用(2)低コスト投資信託の品ぞろえ(3)相談のしやすさなどサービス――の3つが大事だとされています。いずれも金融機関によって大きな差があるのが現状です。
宗羽 具体的にはどれだけ違うのか気になります。
岡根 口座管理費用から説明しましょう。安い例ではスルガ銀行や楽天証券(資産10万円以上)、SBI証券(資産50万円以上)が年2004円です。高い方は7000円台が目立ちます。例えば年7404円かかる金融機関があり、2004円と比べ3倍以上です。30年加入なら差は16万円強にもなります。
宗羽 口座管理費用が高いところはサービスも充実しているのですか。
岡根 一概にそうとは言えません。預貯金などを選ぶ場合は当面大きく増えないだけに、口座管理費用がなるべく安いところを選ぶのが大事です。
宗羽 僕はやはり投資信託で増やしたいです。
岡根 個人型DCは60歳になるまで資産を引き出せないので、長期で運用することになりますし、運用期間中は非課税です。投信を使って元本を増やしながら複利で増やすのに向いた仕組みとされています。
筧 投信といっても様々なタイプがありますね。
岡根 投信は大きく分けて、運用担当者の腕で市場平均を上回ることを目指すアクティブ型と、日経平均株価や世界の株価指数など指数への連動を目指すインデックス型に分かれます。確定拠出年金総合研究所の秦穣治理事長は「長期的にはコストの低さからインデックス型が有利なことが多い。主要4資産(国内外の株と債券)を中心に低コストのインデックス型投信がそろっている金融機関が選択肢になる」と言います。
宗羽 実際にインデックス型の方が成績はいいのですか。
岡根 長期ではおおむねアクティブ型を上回っています。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、2016年6月末までの5年間でアクティブ型投信は米国では96%、日本では60%の投信が指数に負けています。小型株などでは指数を上回るアクティブ型もかなりあります。
筧 でもどのアクティブ投信が値上がりするかを事前に見抜くのは簡単ではないので、自信がない場合はインデックスが向くとされていますね。年金運用をする機関投資家などでは資金の中心(コア部分)は低コストのインデックス型にして、資金の一部(サテライト)でアクティブ型を使って成績の上積みを狙う「コア・サテライト戦略」が知られています。
宗羽 インデックス型投信がある金融機関なら、どこで運用しても同じような気がします。
岡根 ところが大違いです。個人型DCで購入時の販売手数料は原則無料ですが、運用管理費用(信託報酬)が必要です。外国株で一般的な「MSCI コクサイ」という日本以外の先進国株の指数に連動するインデックス投信でも、信託報酬は金融機関で扱う投信によって様々です。ある金融機関の個人型DCでは年約0.23%なのに、別の金融機関は年約1.03%の投信を扱っています。
宗羽 かなり大きな違いですね。
岡根 仮に年4%で30年運用した場合、信託報酬の合計額は約131万円も違ってきます。金融機関選びでは口座管理費用の差に目が向きがちですが、投信で運用する場合は、長期では投信のコストの差の方が圧倒的に大きくなることを知っておくべきです。
宗羽 でも低コストの投信を扱う金融機関は少ないと聞いたことがあります。
岡根 従来は割高な投信しか選べない金融機関が大半でした。しかし5月の法改正で来年からの加入者拡大が決まったのを機に、商品の見直し競争が始まりました。この結果、主要4資産で信託報酬が0.1~0.2%台の低コストのインデックス投信をそろえた金融機関が続々と出てきました。一方、主要4資産で割高な投信しか選べない金融機関も多く残り、二極化が鮮明です。
宗羽 それは知りませんでした。
岡根 確定拠出年金教育協会の大江加代理事は「金融機関選びではサイトの操作性やコールセンターの対応、店頭での説明なども大切」と指摘しています。コールセンターだけで対応する例が多い中、例えば三井住友銀行やりそな銀行などでは多くの店頭で加入手続きや相談ができます。資産配分で悩む人が多いため野村証券、三井住友銀行などでは資産配分のシミュレーションを提供しています。
宗羽 金融機関選びの情報はどこで得られますか。
岡根 確定拠出年金教育協会の「iDeCoナビ」が便利です。口座管理費用や投信の信託報酬が簡単に比較できます。サービスについても店頭での加入手続きが可能な金融機関の一覧や、問い合わせ窓口が土日も受けつけているかなどの情報も得られます。
■資産全体で適正配分を
投資教育家 岡本和久さん
資産配分(アセット・アロケーション)は個人型DCの中だけではなく、課税口座も含めた全体で適正になるよう考えることが大事です。例えば株式と債券の2種類の運用を考えます。若い年齢では相対的にリスク許容度が高いので、例えば日本株インデックス投信と日本以外の世界株インデックス投信を合わせて8割で、債券型投信などが2割という配分にします。年齢が上がるにつれて、値動きの大きな株式投信の比率を徐々に下げていくのも選択肢です。
個人型DCでは長期的には大きなリターンを期待できる株式投信を中心に配分する方が、税制優遇のメリットを大きく使えます。債券型投信などは主に課税口座を使います。このように資産ごとに最適な置き場を考えることをアセット・ロケーションと呼び、効率的な資産形成のために重要です。(聞き手は編集委員 田村正之)
[日本経済新聞朝刊2016年12月17日付]
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