福島第一原発の事故費用のうち、東京電力が自前でまかなえない分は、手っ取…[続きを読む]
晩酌のお酒を替える人が出てくるかもしれない。お酒にかかる税が、10年が…
・最新の社説は朝刊休刊日を除き午前5時半ごろ更新します。(編集の都合などで遅れる場合があります)
晩酌のお酒を替える人が出てくるかもしれない。お酒にかかる税が、10年がかりで大きく変わる見通しになった。
ビールが減税になる一方、発泡酒と第3のビールは増税になる。醸造酒では日本酒が減税でワインは増税。酎ハイなどもワインとともに増税になる。
政府が決めた酒税法改正案が国会で可決されれば確定する。それぞれの店頭価格も、税の増減に応じて変わる見込みだ。
お酒は原料や製造方法で分類され、税額が決められている。区分はビール類と醸造酒、蒸留酒、その他の四つだが、さらに十数品目に分かれ、税額もバラバラだ。
欧米でもお酒に3~4区分ある国が大半だが、日本のような細かな分類は異例だ。今回の見直しには、区分ごとに税額をそろえていく狙いがある。
税金は強制的に徴収される。だから、特定の人への有利・不利がない「公平」、個人や企業の選択や活動をゆがめない「中立」、分かりやすく納税の手間もかからない「簡素」の三つの原則が大切だとされる。それに照らせば、酒税見直しの方向性は理にかなっている。
とりわけビール類については、主原料の麦芽の比率が低い発泡酒や、麦芽以外のものを使うなどした第3のビールが生まれ、税額の統一が課題だった。
メーカーは、税が軽い発泡酒や第3のビールで、ビールに似せた商品をつくる競争にしのぎを削ってきたが、海外ではほとんど出回っておらず、国際競争力の向上につながらないことが問題視されてきた。海外市場も意識した商品開発を促すためにも、細分化された税額をそろえるのは当然の流れだろう。
ただ、安さが人気の発泡酒や第3のビール、酎ハイなどが軒並み増税になるため、「大衆増税だ」との声も聞かれる。酒税全体では「増減税ゼロ」で、税額の変更は段階的に実施されるが、消費動向を注視していくことが必要だろう。
酒税が課されるようになったのは、酒は高級品だからというのが主な理由だった。広く普及したいまも税が残るのは、たばこと同様、健康への悪影響や周囲への迷惑を考慮してのことだというのがもっぱらの説明だ。
だとすれば、アルコール度数が高いお酒ほど税額を高くするのも一案だ。
今回の見直しが完了しても、アルコール度数が低いビールの税が、醸造酒などほかのお酒より突出して重いままだ。区分間の税額格差をどうするかが、今後の検討課題になる。