これからどうなる?この先どうする?徹底追跡“おカネ”報道SP
追跡!タワマン“空中族” バブル超えの不動産マネー
「おカネ」にまつわる報道のあれこれを、スペシャルゲストと徹底追跡します!
まずは、不動産のお話。
1980年代終わりに、バブルの時代がありましたよね。
みんなこぞって不動産投資に走ったけど、結局、焦げ付いたあの頃。
ところが今、不動産マネーはあのバブル期を超え、あふれちゃってるんです。
「コップから(金が)あふれてきますよね。
このコップからあふれた水(金)を飲むんです。」
都心のマンションは一部で価格が高騰。
新築時より2億9,000万円も値上がりした物件もあるんだとか。
高騰するタワーマンションに狙いを定め、転売を繰り返して大金を稼ぐ人も。
その名も「空中族」!
さらに、マンションを何部屋も買って人に貸し出し、家賃収入で暮らす「メガ大家」なんて存在も!
今、不動産投資ってそんなにもうかるの?
まず、タワマンを転売する「空中族」の実態を探るべく、東京の湾岸エリアに向かいました。
三井不動産リアルティ 佐藤達也さん
「こちらが先日、成約したばかりの物件。
価格が…1億9,800万円。」
富士山が望める地上44階のタワーマンション。
空中族が転売したばかりでした。
値上がり益を手にした空中族は、より高額な物件を求めて姿を消した後。
三井不動産リアルティ 佐藤達也さん
「(空中族の)判断の早さに驚かされ、非常にそのあたりの動きに驚かされる。」
空中族に話を聞いてみたい。
次に訪ねたのは、今、話題の豊洲にある大手不動産会社。
タワマンの買い換え相談が3割増えているといいます。
相談者
「(価格が)上がっているという話も聞いたもんですから、住み替えのメリットがあるのかなと思って。」
まさにタワマンを転売しようとしている真っ最中。
担当者
「これぐらい新築分譲時から(価格が)上がっていると。」
相談者
「690万円!」
値上がり幅は短期間で600万円以上。
いました、空中族です。
相談者
「私は1度買い替えを経験しておりまして、今回は2度目です。
次は3棟目になります。」
彼らは、値上がりしやすい都心のタワマンを次々と購入しては売却。
ステップアップしながら短期間に莫大な利益を手にします。
中には4棟のタワマンを渡り歩き、5,000万円近い利益を得たという人もいました。
相談者
「私としては非常にありがたい話。
駅前の開発であったりとか、視野に入れながら考えて次を選びたい。」
バブル超えの不動産マネー サラリーマンが大もうけ!?
一攫千金のマンション投資。
その熱は今、元手の少ないサラリーマンにまで広がっています。
小郷
「こちらでは今、サラリーマンのためのマンション投資セミナーが開かれています。
大盛況です。」
東京で開かれたセミナーには、定員を超える100人以上が詰めかけました。
元サラリーマン
「1戸1戸積み上げていくごとに、自分の将来が少しずつ見えてくる。
あとは幸せへの道へ到達すると。」
参加者の注目を一身に集めたのは、元サラリーマンのこの男性。
ワンルームマンション15戸を購入して他人に貸し出し、家賃収入で年間1,200万円を得ています。
給与が伸び悩む中、こうしたサラリーマン大家を目指す人が増えているといいます。
小郷
「今日はどうしてこのセミナーに?」
参加者
「将来的な資産運用のひとつとして不動産を考えているので。」
会社員
「ワンルームであれば10部屋くらい持ちたい。」
元サラリーマン
「総資産は2億1,000万円。
もっとたくさん持っている方はいる。
“メガ大家”さんみたいな。」
追跡!“メガ大家” サラリーマンが荒稼ぎ!?
メガ大家!?
サラリーマン憧れのメガ大家ってどれだけすごいの?
取材を始めて2週間。
メガ大家の1人に会うことができました。
安藤新之助さん(仮名)、44歳。
「あなたがメガ大家でいらっしゃいますか?」
安藤新之助さん
「私がメガ大家です。」
この間まで年収430万円のサラリーマンだったそうですが…。
なんと9棟ものマンションを所有する、メガ大家に!
年間の家賃収入は?
年間1億円以上!!
サラリーマン時代の20年分です。
安藤新之助さん
「まさか自分がここまでいけると思ってなかった、正直。
家賃収入6,000万あれば合格かなと思っていた。
ひとつの目標にしていたけど、気が付いたら超えちゃった。」
なぜ普通のサラリーマンが、多額のマンション購入資金を調達できたのか。
追い風となったのは、金融機関からの潤沢な融資マネーです。
1棟目のマンションは自己資金ゼロ。
1億1,000万円を全額ローン。
2棟目のマンションは、5,600万円のうち9割以上をローン。
こうして9棟の購入資金、合わせて13億円を金融機関との交渉の末に引き出してきたのです。
さらに…。
安藤新之助さん
「(金利を)1%以上下げていただいた。」
マイナス金利が導入された今年(2016年)、銀行に掛け合い、金利を通常の半分以下に引き下げてもらいました。
おかげで銀行への返済額を抑えることができ、年間の手取り収入は4,000万円を超えています。
老後の資金が心配で始めたマンション投資。
もう不安はなくなったといいます。
安藤新之助さん
「非常に追い風。」
「感じますか?」
安藤新之助さん
「すごく感じますね。
投資額13億円いってますけども、まだまだもっと上はいます。」
まだ上が!?
それって、「ギガ大家」!?
東京も地方も過熱!? バブル超えの不動産マネー
その人物は、より「うまみ」のある場所を新たな投資の舞台にしていました。
九州・福岡。
地元の不動産会社に迎えられたこの男性こそ、その人。
首都圏に18棟の高級マンションを持つ資産家です。
資産家 塩田真人さん
「東京は今もう高くて、ビジネスでは買えない。
福岡はまだまだ賃料も上がっていく。
地方都市の中では一番ですね、ダントツに一番だと思います。
実は今、福岡など地方の中核都市のマンション価格が東京を上回る勢いで急上昇。
将来性が高いと見込んでいるのです。
資産家 塩田真人さん
「(物件が)解禁になったら、(情報を)一番でいただければと。」
この日は、わずか3時間で2棟のマンションの購入を即決。
こうした強気の投資を支えているのが、メガバンクです。
大手銀行員
「いい物件ですね。
なかなか見ない、こういう角地に。」
資産家 塩田真人さん
「これはもう強い、是が非でも。
内定早めにいただければと。」
大手銀行員
「スピード勝負でやらせていただきます。」
大手銀行員
「銀行としては非常にありがたい。
非常に優良な資産家さんでいらっしゃる。
これからもずっと長くお付き合いさせていただきたい。」
一部の産業では、思うように伸びていない銀行からの貸し出し。
その一方で、建物や土地などの担保が確実に取れる不動産にマネーが集中しています。
新たな不動産マネー!? 中国人 マンション爆買い
さらに取材を進めると、新たなマネーの流れが浮かび上がってきました。
中国の不動産バブル崩壊を警戒する中国人富裕層による投資。
より安全だと考える日本の地方都市に、軸足を移し始めていました。
中国人
「上海に比べたら全然安い。」
豪快な買いっぷり。
「だいたい買われるのは、このようにキャッシュ(現金)ですか?」
雷国 潘献国 代表取締役
「そうですね、キャッシュばかりです。
ほぼキャッシュです。」
こうした爆買いの背景にも日本のメガバンクの存在があることを、不動産会社の中国人担当者が明かしてくれました。
三好不動産 中国人担当 臧泓宇さん
「(日本の)メガバンクは今まで私のところで実際融資を受けた(中国)人がいますので、貸しているのは貸しています。
非居住者にも融資できるところ(銀行)があります。」
これまで銀行は、日本に住んでいない外国人への融資を敬遠してきました。
保有する資産などを確認するのが難しいためでした。
しかし今では、審査の上で億単位の融資に踏み切るケースも出始めています。
三好不動産 中国人担当 臧泓宇さん
「融資があるのとないのとでは、全然やっぱり違う。
そこは非常に(融資は)大きいと思います。
我々としては銀行にもっと(外国人)投資家に貸してほしい。」
不動産バブル? サラリーマンが大もうけ!?
池上さん:たいへんな不動産マネーですよね。
かつてのバブルを思わせるような動きになっています。
これについて日本銀行は、全体としては過熱の状況にはない。
ただし、一部で高値の取り引きも見られ、注意深く点検する必要があると指摘しているんですが…。
ということで皆さん、今のこの状況はバブルなんでしょうか?バブルじゃないんでしょうか?
デーブさん:本当のバブルだったら、お立ち台とかないと実感がないんです。
だから非常に部分的なバブルで、全面的にみんなが実感するようなものではないと思いますよね。
むしろ困ってる人のほうが多いです。
堀江さん:これからじゃないですか。
前のバブルの時って、日経平均が4万円近くをつけて…。
池上さん:3万9,000円を超えましたね。
堀江さん:それぐらいまでいったあとにNTT株を買ったりとか、うちの母親はそうなんですけど、宅建の免許取りたいとか。
うちの親は300万円で高値づかみして大損してたみたいですけど。
優木さん:実際のバブルを知らない世代なので、直前がどんな空気になっているものなのかって肌感覚で全然分からないんですけど、やっぱりお金持ちの人たちがどんどん投資をして、それで最後はじけちゃったっていうような、バブルはそういう、派手なイメージがあるんですけど…。
堀江さん:優木さんは、不動産やられます?
優木さん:やらないです、全然。
堀江さん:優木さんが(不動産投資を)やりだしたらヤバイ。
優木さん:今回もそうですよね、平均的な年収の方々が、普通は着実にやっていくタイプの人たちが手を出してきてるから…。
堀江さん:まだでも、そこはね、最終段階ではないと思います。
池上さん:これを見て、あーじゃあ自分もやろうかってなると、ちょっと気をつけたほうがいいんじゃないかというふうに思いますけど…。
あと、バブルというのは日本でもアメリカでもそうなんですが、はじけて初めて気が付くんですね。
バブルの最中は「空前の好景気」といって、なんとなくこれまでの従来の経済学で説明がつかない場合は、これを「空前の好景気がまだ続くんだ」という経済学の理屈を言いだす人もいるんです。
こういう学者が現れたら、ちょっと気をつけたほうがいい。
ちなみに、以前この「クローズアップ現代+」でこの空中族を初めて5月に取り上げていて、堀江さんはそのときにツイートをしている その内容を覚えている?
堀江さん:覚えてないですね。
“ほんと素人って不動産好きだよねぇ笑。
ババ抜きって分かっててやってんのかなあ?”
堀江さん:不動産業って、基本的にバブルが来て、そのあとはじけて、自己破産したりとか会社倒産させたりする人もいれば、その前に売り切って逃げられる人もいるんですけど、そこはだから、どこまで欲をかくかみたいなところがあって。
デーブさん:だけど、生活費を稼ごうとしたらもうアウトですよ、正直言って投資っていうものは。
競馬と同じですよ。
だからその分、失ってもいいんだったらいいんですけど。
よっぽどのプロ、堀江さんみたいに経験豊富な人は別ですけど。
非常にリスクが高い。
堀江さん:いや僕、だから不動産怖いですもん。
なんでかっていうと僕の周りに、空中族じゃなくてそれこそ投資の超プロで、めちゃくちゃ、しかも厳しいんですよ、投資に対するスタンスが。
銀行とのやり取りとか、不動産業者とのやり取りとか、カリカリにやりますからね。
そんな人たちと、この人たちよく戦えるなと思って。
怖くて僕できないです。
僕だから不動産のプロじゃないんで、不動産のプロの人たちたくさん知ってますけど、えげつないですもん、怖い怖い。
絶対僕は対抗したくないです、あの人たちに。
この今の不動産市況がどこまで続くのか誰も分からないという話も出ていましたが、実態はどうなっているのか、小郷キャスターからデータをお願いします
小郷:ちょっと気になるデータがあるんです、こちらをご覧ください。
首都圏のアパートの空室率なんですが、しばらく横ばいが続いているんですけれども、去年(2015年)の夏ごろから急激に空室率が増えているんです。
需要以上に物件の供給が増えていて、いびつな構図になっていると懸念する声もあるんです。
不動産投資のリスク サラリーマン大家の選択
不動産マネーが流れ込む一方で、空室率が30%を超えている福岡市。
それでも、不動産投資に乗り出すサラリーマンは少なくありません。
市内の中小企業に勤める吉田雅也さん(仮名)です。
年収はおよそ350万円で、30代になってもほとんど上がっていません。
7歳と3歳の子どもの養育費をまかなうため、去年、不動産投資を始めました。
吉田さんが投資した物件は、福岡市内の中心部から10キロ近く離れた郊外にあります。
価格は1棟まるごとで5,500万円。
それでも中心部より割安感があったため、思い切って2棟分を購入しました。
吉田さんの背中を押したのは、地元の銀行からの融資。
総額1億円を全額ローンで借り入れました。
吉田雅也さん
「事前に業者と銀行で(融資の段取りは)大体決まっていた。
正直、全く迷わず(物件)見ずに決めてもいいのかなぐらいの(感じ)。」
吉田さんは今、投資する物件をさらに増やそうと考えています。
吉田雅也さん
「入居者が出て行ってしまったら、やっぱり手出し(赤字)になっちゃうので、他(の部屋)でカバーできるように。」
賃貸物件の供給が増え続ける今、もう1棟物件を買い増すことで空室が出た場合の損失を取り返すつもりです。
吉田さんは妻と相談し、購入資金5,000万円を新たに借り入れることに決めました。
吉田雅也さん
「増やすなら今かな。」
妻
「もう始めてしまったら、あとには退(ひ)けない。
逆に増えなかったら、もっと不安になるかも。」
不動産投資のリスク サラリーマン大家の涙
金融機関からの莫大な融資マネーが流れ込む不動産市場。
しかし、投資家の間ではすでに焦げ付きが生じていることがわかりました。
“投資用物件を持っていて、ちょっと採算合わなすぎて売却しようと。
管理費が滞納して、銀行(への返済)も滞納しかけています。”
ここでは、空室などで赤字に陥ったサラリーマン大家からの相談が急増。
去年よりも6割多い、年間120件に上っています。
女性会社員
「こんにちは。」
関東の地方銀行などから総額1億円の融資を受けている、50代の会社員の女性です。
年間の赤字は75万円。
所有する投資物件のローン返済が苦しくなり、センターに駆け込んできました。
女性会社員
「明日は何が起こるかわからない不安がある。
一刻も早く(借金から)きれいになりたいのは本音。」
相談員
「残りのこと(借金は)真剣にいきましょ、真剣に。」
女性は当初、東京郊外のワンルームマンション2戸を強く勧められて購入。
しかしその後、周辺に新たな物件が次々に建てられました。
都心から離れた郊外にある女性の物件では、空室が発生。
止むなく家賃を下げた結果赤字が出てしまったといいます。
マイナス分を埋めようとマンションをさらに4部屋買い増したものの、赤字が拡大。
それでも、銀行はお金を貸し続けてきたといいます。
女性会社員
「私が言うのも何ですが、これだけローン組んでいて、すごいですよね、(審査が)通っちゃうのが。
私の何を信用したのかな。」
相談の結果、女性はマンションすべてを売却することを決断。
手元に残ったのは600万円以上のローンだけでした。
子どもに借金だけは残したくない。
女性は体が動く限り働いて、返済を続けていくつもりだといいます。
女性会社員
「自分に(借金が)返ってくるだけですよね。
働いて、もちろん働いて払っていくしかないんだと思います。
だってそれしかない。」
バブル超えの不動産マネー 銀行の役割とは?
池上さん:とにかく銀行にお金預けても、全然利子がつきませんからね。
生活のためにちょっとなんとかという、この人たちの気持ちはとってもよく分かるんですよね。
一方、投資っていうのは、結局、自己責任だろうっていわれてしまう。
年収数百万円のサラリーマンに、じゃあ数千万円のローンを貸した、貸し手の責任はどうなんだということ。
これも問題になりますよね。
銀行側の姿勢はどうなんだ、という議論ですよね
優木さん:でも先ほど出た方なんかは年収350万でって…それを普通に返すことを考えたら、5,000万の借金ってすごい額じゃないですか。
それでも銀行っていうのは貸してくれるんですね。
池上さん:マンションを買うお金でしょ。
ということは、そのマンションが担保になるから。
いざという時はマンションを担保として取ってしまえばいいって思っているわけですけど、それは、どんどんマンションの値段が上がっている時にはその発想はいいんですけど、下がりだしたら担保にならないんですよね。
では、銀行は今どういったところに融資をしているのか?
小郷:銀行の貸出金の伸び率を、産業別に見たグラフです。
不動産への融資のマネーはこの赤い線で示したところなんですが、2014年ごろからぐんぐん伸びて、今、全産業を上回っているんですね。
銀行は、担保を取っているし物件が収益性に問題がないかきちんと評価しているとしていて、ただ闇雲にお金を出しているわけではないということなんですね。
一方、金融庁は、銀行が担保にこだわるあまりに将来性のある企業にお金を貸さない、「金融排除」が起きているのではないかと懸念しているんです。
堀江さん:うちも全然融資が受けられないので、思いますよ。
ロケットの会社があるんですけど、多少(融資を)受けてるんですけど、やっぱりなかなか製品、ロケットの場合は「打ち上げロケットの成功」なんですけど、成功するまでお金が借りられない。
デーブさん:堀江さんの場合、服装のせいじゃないかな?
堀江さん:関係ないから、社長、別にいるから!
デーブさん:確かに、日本ではベンチャーには冷たいって世界中が言ってるんですよね。
為末さん:どうなるか分からないものには貸しにくいんですかね?
目に見えてどうとか…。
堀江さん:そういうところに査定能力がないわけですよ。
不動産は目に見える担保がある。
優木さん:今後の日本の経済を回していくうえで、やっぱりそこに投資してほしいのに、そこの査定をできるプロの人たちが今いないというか、プロ意識がないというのは困りますよね、今後の日本のためにね。
池上さん:つまり金融の貸し出す人のプロ意識が、あるいはプロじゃないんじゃないか。
私たちだって、不動産で値段がこれぐらいですよ、じゃあ7掛けでお金貸しましょうって、素人でもできてしまうようなことをやってるんじゃないかと。
金融機関はお金を貸すというのは、“目利き”にならなければいけないわけですよね。
だから、まさにリスクはあるんですけれども、これから伸びる産業に投資することが必要だと。
例えば産業別の伸び率で見ますと、今、医療・福祉っていうのがやっぱり、これから非常に大切になるわけですよね。
あるいは製造業、日本がこれからものづくりをどれだけやっていけるかという問題はあるんですけど、どんどん下がっていますよね。
本来、マイナス金利というのは、本当に必要としている分野、あるいはこれから発展しそうな分野にお金を回そうということでやったわけですが、それが十分機能していないということですね。
結局、金融機関は非常に安易に走ってしまうんじゃないか。
こんなことをやっていたら、やはり日本に未来はないと思います。
次の気になる“おカネ”は、こちらです
税収5兆円の東京都 私たちの“血税”の行方は
税収5兆円を超す東京都。
今年就任した、小池知事。
都民の税金が適正に使われているか、根本的な見直しに踏み切ると宣言しました。
小池百合子知事
「“ワイズスペンディング”ということばがありますが…。」
ところが、ここにきて改革の進め方にさまざまな立場から反発が出ているんです。
国際競技団体 幹部
「(五輪施設の)コストが高すぎるという非難をうけるべきではない。」
築地市場協会 会長
「(築地移転延期の)経費は日々どんどんかかってくる。
そういう中で一体どうするんですか。」
小池知事に直撃 税金“賢く”使えていますか?
私たちの税金は果たして賢く使われることになっているのか、東京都庁と結んで、小池知事に伺いたいと思います。
東京都 小池百合子知事:よろしくお願いいたします。
知事は就任後、この「クローズアップ現代+」に出演されて、“ワイズスペンディング=賢く税金を使う”ということばを掲げていましたけれども、就任から4か月、私たちの税金、賢く使われている実感はありますか?
小池知事:その部分もありますが、これまでのところ、いろいろと調べてみると、何ともったいないことをしているんだろうというふうに思うことが、しばしばありますね。
今、いろいろと分析もしております。
そして、少なくともこれからは、ワイズスペンディング、あんまり、カタカナばっかり使うなと言われるんですけれども、皆さんにお見せをして、情報公開をしたうえで、そして賢い使い方をしていきたいと思っています。
杉浦:こうしたコスト削減を目指す中、最初に手をつけたのが、2020年東京オリンピック・パラリンピックの会場問題です。
予算2,241億円にも上る、主な施設の建設費用に対して、知事は「都民ファースト」「ゼロベースで徹底的に交渉を行う」と宣言しました。
東京五輪“コスト削減” 舞台裏を追う
杉浦
「東京オリンピック・パラリンピックのバレーボール会場とされてきた、有明アリーナの建設予定地に来ています。
来年(2017年)の3月に着工予定ということで、まだ資材などはなく、ただのさら地です。
2020年にここで競技が行われるというのは、今の時点ではあまりイメージができません。」
就任後、小池知事がまず見直しを図ったのが3つの競技会場の整備費用。
ボートとカヌー、水泳、バレーボール、合計1,578億円にも上る予算を削減できるか、注目が集まりました。
ボート・カヌーと水泳、2つの会場については他の候補地も検討しましたが、結局、計画の規模を縮小することで、合わせて340億円あまりを削減。
最後に、そ上にのぼったのは、総工費404億円とされたバレーボール会場、有明アリーナ。
都の調査チームの試算では、既存の施設横浜アリーナを使えば7億円で済むとされたのですが…。
コスト削減を重視した横浜アリーナ案には、反対意見が相次ぎました。
その1つ、国際競技団体がNHKの取材に応じました。
すでに決定したはずの会場の変更に、難色を示したのです。
国際バレーボール連盟
ファビオ・アゼベド ゼネラルマネージャー
「私たちは、有明の計画がそのまま維持されるべきだと思っています。
横浜に関してはコメントしたくありません。」
競技の発展や選手のモチベーションのためには、開催地である東京で行うことに意味があるといいます。
国際バレーボール連盟 ファビオ・アゼベド ゼネラルマネージャー
「いま私たちが望んでいるのは、かつてオリンピックが行われた東京でバレーボールが成功することです。
バレーボールがオリンピック開催地の中心でプレーされることに意味があるのです。」
日本バレーボール協会からも選手の移動や今後の国際大会の招致に支障が出ると、懸念の声が。
さらに、組織委員会からは、大会後も遺産として活用することが必要だという声も上がったのです。
東京五輪パラリンピック組織委員会
森喜朗会長
「単にバレーボールの会場ということよりも、レガシー(遺産)としてしっかりしたものをつくりたい。
そういうのは日本のスポーツ界全体の意思でありまして、都知事もそのことについて判断いただけるものだと。」
最終的に東京都は、コスト削減したうえで大会後も有効活用できるとして、当初の有明アリーナ案を選択したのです。
小池知事に直撃 五輪会場“コスト削減”は
池上さん:五輪会場の見直しというところに、「あっ、よく切り込んだな」というふうに思ったんですが、結局それぞれの、さまざまな団体から反対があって、どうも準備不足のまま、小池都知事は切り込んでしまったのかなというふうに思うんですが…。
小池知事:いくつもの主体がありまして、例えばスポーツの国内の協会・連盟があって、それにさらに世界があって、そしてIOCという世界のオリンピックの委員会がありまして、国内的には組織委員会、それから文科省に、内閣府に、そして東京都。
まあ、ありとあらゆるところがありまして、これまでの方々は、そこを連携しながら進めてこられたことなんでしょう。
しかし、そのあと、どうやって本当に活用していくのかということで、あとの運営費のことまで考えなければならないので、そのことは東京都として、経営者として、しっかりそのところを考えていくと、高いところは削っていく、投資としてやるべきところはやっていく、そのメリハリをつけたということです。
池上さん:ずいぶん切り込んできたなと思う一方で、でも結局「えっ?この程度で収まってしまうの?」という印象を受けている人がいると思うんですけど、どうですか?
小池知事:そんなことないと思いますね。
「海の森」というボート・カヌーの会場ですが、最初69億で始まって、1,000億になって、それが490億になって、それをさらに今度は、300億円台、400億円ぐらいに収めるということです。
額が大きければ減る分が大きいし、少なくなればそこは削る分も少ない。
だけど、削るだけが能じゃないとは思っているんです。
例えば、LEDの電球にかえると高いですね。
しかしランニングコストは安くなりますね。
こういったことでメリハリをつけたつもりです。
為末さん:「アスリートファースト」っていうことばがあって、これ、すごく大事に、どの国もしてたりすると思うんですが、過去の五輪を見ていると、アスリートファーストを重視しすぎて、作った施設の運営費が全然まかなえなくて、なんかオリンピックやってよかったのかな、みたいなことになってるのをよく見るんですが。
小池知事:今のIOCのバッハ会長になられてから、オリンピックそのものの持続可能性、サステナビリティーということをおっしゃるようになりました。
その中に、既存の会場を使っていきましょう、有効に使いましょう。
つまりどんどんと新しいものを作って、そのあとが“夢の跡”みたいにならないようにということだと思います。
今こそ、民意のほうが重要だと思っておりますので、しっかり情報公開などもさせていただいた。
つまり、オリンピックっていう世界の祭典ですね、スポーツの。
その中で平和を確認し、前回のリオでは難民の方々もお出になりました。
いろんなユニバーサルな…またカタカナ言ってますね。
地球規模で、みんなで共有できる、そういうメッセージを確認できるという、4年に1回の祭典だと思います。
杉浦:税金の使いみちを巡る議論。
続いては、築地市場の移転問題です。
移転先の豊洲市場の安全性の確認が不十分だとして、知事は移転延期を判断しました。
盛り土問題などもあり、移転するとしても、早くても来年の冬になるとしています。
一方、延期によりかかるコストを誰が補償するのか、今、焦点となっています。
築地市場 移転延期へ 膨らむ“補償費用”
豊洲市場への移転延期で危機感が高まる築地市場。
廃業に追い込まれる業者も出かねず、延期によって巨額の補償金が発生するとみられています。
築地市場協会 伊藤裕康会長
「経費は日々どんどんかかってくる。
そういう中で一体どうするんですかと。
(小池知事が)延期をお決めになったんですから、それは知事の裁量でですね、きちんとした補償はやるのが当然だと思います。」
都に補償を求める1人、仲卸業を営む伊藤晃彦さんです。
豊洲への移転に備え、冷蔵庫や水槽を新調。
店舗も拡大することになり4,500万円の借金をしました。
仲卸業者 伊藤晃彦さん
「そんな余裕のある中で購入したわけではないので。
本当、ギリギリの中で買った。」
返済額は、ひと月およそ50万円。
豊洲市場で営業を始めない限り、借金を十分に返済することはできません。
仲卸業者 伊藤晃彦さん
「豊洲に向けて店を広げたはずなのに、その広がった分の売り上げはないですから。
いまのところは、ただ借金を返している。
非常につらい状況であることは間違いない。」
業者への補償はどうするのか。
小池知事が補償の財源に充てるとしているのは、「市場会計」です。
市場会計は、主に都内にある11の市場の業者が納めている使用料や、閉鎖された市場などの土地の売却で得られた積立金からなります。
各市場の立て替えや、改修などに使われています。
この市場会計で築地の業者への補償をまかなえば、都民が納めた税金を使わずに済みます。
しかし、この方法に対し、築地以外の市場では反発が。
青果の取引規模日本一を誇る、大田市場。
仲卸組合の理事長を務める、平国秋さんです。
大田市場 新神田市場青果卸売協同組合
平国秋理事長
「冗談じゃないよと。
何で我々が一生懸命働いてね、我々の市場でためたお金を(補償に)使わなきゃいけないんですか。
これは東京都全体の問題ですから、市場だけの問題じゃなくて、やっぱり市場会計と分けてもらわないと困るわけです。」
延期によって膨らむ補償の費用。
整備費5,800億円をかけた豊洲市場の行方はどうなるのでしょうか。
小池知事に直撃 どうなる豊洲市場
堀江さん:ぶっちゃけ、豊洲移転するのをどんどん延期していくと、たぶん今ですら築地市場の重要度ってどんどん下がっていっていて、これ以上延期し続けると「豊洲に移る意味ないよね」みたいな感じにもなって、すごい中途半端なんですけど、もしそうなった場合って、豊洲、どうするんですか?
あの膨大な5,800億円使ってやったやつを、じゃあ損切りするのかみたいな話も、それもなんか選択肢としてはあるのかもしれないですけど。
小池知事:私はね、そもそも市場の問題というのが、これだけ流通が変わってきている中で、今後の将来性をどう見るのかっていうのは、実はたいへん重要な問題だと思っています。
おっしゃるとおり、豊洲に移転したとしても、今後の市場の扱い方っていうのは大きな課題だというふうに思っています。
いずれにしても、まず安心・安全性の確認というのは、これはもう日程も決まっておりますので、それによって、その結果しだいで進めていくということです。
優木さん:豊洲に移転するのをここまで今、延期してますけれども、今後、必ず築地から豊洲に移転するものなのか…。
もしかしたら白紙、「やっぱり豊洲に移転するのはなしにします」ということがありえることなのか、どういうふうに小池さんがお考えなのかなっていうのが、知りたいんですけど。
小池知事:まず基本的に、なぜ移転を延期したかということですが、やはり安心・安全の確認ということが十分にできていないということであります。
オリンピック道路を早く通さなくちゃいけないからといって、安全確認の最後のチェックがネグってしまうという話、そうではないでしょうと。
とにかく豊洲市場というのは、まさしく食を扱うところでありますから、それを確認するのにもう少し時間がかかりますよという話です。
杉浦:豊洲市場に関しては、税金の使いみちに関して、もう1つ見逃せない問題があります。
1,035億円、この数字は、主な建物の工事の入札の際に膨らんだ建設費です。
一体何が起きたんでしょうか?
豊洲市場 “不可解な”建設費
3年前、豊洲市場の主な3つの建物の建設工事で入札を実施した東京都。
予定価格は合わせて630億円でした。
ところが、参加した業者が辞退し、入札は不調に。
3か月後に行われた2回目の入札。
都は予定価格を400億円も引き上げ、1,035億円に。
ほぼ同額で落札され、落札率は99%を超えました。
短期間に何が起きていたのか。
業者の1人が、NHKの取材に対し「1回目の入札のあと東京都が業者側の希望通りに価格を上げた」と証言しました。
“「これじゃとてもできませんよ」「いくらならできるんだ?」「これでしかできません」といって、金額を伝えて、それが予定価格になった。”
それにしても、入札の予定価格を短期間で400億円も引き上げられるものなのでしょうか?
東京都の調査チームのリーダーを務める、加毛修弁護士が取材に応じました。
豊洲市場の入札に関し、その算出根拠を追求しています。
内部統制プロジェクトチーム 加毛修弁護士
「豊洲の問題もかなり分かってきたんだけど、やはり分からないのが、(予定価格が)なんであんな大きな金額になったのか。」
職員への聞き取りを行った際、予定価格が膨らんだ理由として挙げられたのが、「査定率」の存在でした。
査定率とは、建築資材などのメーカー希望価格を1としたとき、どのぐらいの割合で買えるのかを見積もった数字です。
例えば100円の資材が、市場では安く売られ30円で調達できるとすれば、査定率は0.3。
豊洲市場の入札では、この査定率が1回目はおよそ0.3。
2回目の入札で0.7にまで引き上げられました。
その結果、予定価格が400億円も膨らむことになったというのです。
内部統制プロジェクトチーム 加毛修弁護士
「(査定率が)0.7ということを言ってきてるけど、それも果たして正しいかどうか分からない。
トータルの金額を決めて、その中において従前の金額や何かを参考にして、当てはめ作業をやっていったのではないかと、そういうふうな気はしますけど、これは確認はできておりません。」
査定率を大幅に引き上げたことについて、東京都は次のように説明しました。
“豊洲市場の別の建物の工事が落札された際の査定率が根拠。
予定価格適正だった。”
専門家は、巨額の税金が投じられる公共事業の入札で、都は説明責任を果たしていないと指摘しています。
日本大学 有川博教授
「おそらく積算をきちんと内部でチェックするシステムがきちんと働いていない。
東京都の積算をつくる体制をきちんとしっかりしないといけないのと合わせて、プロセスの透明化を図るという手法が必要なんだろうと思います。」
小池知事に直撃 “不可解な”建設費
池上さん:入札がなかったら価格を引き上げるのは仕方がないなと思う一方で、その過程が非常に不透明ですよね。
これ、もっとみんなに見えるような形にする必要があると思うんですが、いかがですか?
小池知事:今、これまでどういうやりとりがあって、いつ誰がどこで何を決めたのか、改めて確認をしているところであります。
そういう中で、これまで情報公開で求められた公開資料が「のり弁」のように真っ黒けになっていたということがありますが、まず第一にやるべきことは、情報公開のルールをもう一度改めて確認をするということ。
それから2つ目には、入札の方法。
これについて、もう一度確認をするということです。
この豊洲の場合は、入札をしたけれども、「そんな値段じゃできませんぜ」ということで途中から価格が上がっていったということで、結局、多くの入札の件数が“1者入札”で終わってきたケースが多いんですね。
1者入札だけだったら、それはもう入札そのものをなくすといったような制度を取っている地方自治体もあります。
いろんなことを参考にしながら決めていきたいと思っております。
池上さん:小池都知事の名前で出る情報公開が、本当に「墨塗り」になっているのが多いんですが、それがもうほとんどなくなると考えていいんですね?
小池知事:そんなに(墨塗り)出してます?
池上さん:これまでも「のり弁(墨塗り)」で出てるところが、実は小池都知事の名前で出たものがあるんですね。
小池知事:そういうのもありますね。
基本的には、個人情報に関わるところということについては、やはりこればっかりはね、「のり」をかぶせることになると思いますけれども…。
できるだけ「のり弁」から「日の丸弁当」ぐらいにしたいと思います。
税収5兆円の東京都 私たちの“血税”の行方は
池上さん:これはね、私たちも反省しなければいけないなと思うところがあるわけですね。
ばく大な私たちの税金を使っている都庁、そしてその予算を最終的に決めている都議会が何をしているのかってことに、まだ関心が少なすぎたのではないかということですね。
今回のこのさまざまな出来事をきっかけに、みんながきちっと見ていかなければいけない。
さまざまな税金の使いみち、あるいは入札の様子、これもすべて情報公開し、本当に一部の人しか見ないかもしれないんですが、公開されているってことを知るだけで、みんな緊張して、むだづかいをしにくくなる。
これが大事なことなんじゃないかと思います。
続いてのテーマは、日本の将来を支えるためのお金。
キーワードは「生活費1日850円」です。
生活費1日850円 若者の未来は大丈夫?
日本の未来を担う若者たちが、たいへんな事態に?
奨学金を借りアルバイトをしても、経済的に追い詰められるケースが続出。
「一寸先は闇の状態ですね。」
卒業後、奨学金を返せず破産に陥るケースは、累計1万件。
「予定通り破産の手続きに入ろうと思っています。」
さらに、家族や親戚にまで破産が連鎖する事態も。
父親(連帯保証人)
「こんな金額なら、分割しても無理やと思いました。」
どうしたら解決できるのか?
実は、若者を支援し、しかも社会の役に立つ画期的な対策が。
もちろん、ぶりとも関係があるんですよ。
生活費1日850円 若者の未来は大丈夫?
このテーマについて、伊東キャスターです。
伊東:今や奨学金は、大学生の2人に1人が借りている。
優木さんも奨学金を借りて大学を卒業されたと。
優木さん:あったので行けましたね。
伊東:なぜこんなに増えてしまったのかといいますと、授業料を見ると、国立も私立もぐんぐん上がってるんですよ。
一方、見ていただきたいのは大学生の生活費。
1日当たりで見ると、昔は大体、堀江さんのころなどは2,000円台。
1日の生活費だったのが、今では850円ですよ、1日。
親に迷惑かけちゃいけないと思って奨学金を借りるんですが、そのことが親御さんや家族を巻き込んだ破産にまでつながっているというケースが増えているんです。
追いつめられる若者たち 奨学金で一家破産!?
奨学金破産に陥った美香さん(仮名・29)です。
大学を卒業してから7年後、苦渋の決断でした。
弁護士
「予定通り、破産の手続きに入ろうと思っています。」
母子家庭で育った美香さんは、高校と大学に通うため、およそ600万円の奨学金を借りました。
しかし、就職したのは非正規の保育士の仕事でした。
給与は、平均で月14万円。
家賃や食費、光熱費を支払うと、月5万円の奨学金を返済する余裕はありません。
弁護士
「心配なのは、今の残額330円ってなっているんですけれど、他に使っていない通帳にはどのぐらい入っています?」
美香さん
「全然入っていないです。」
美香さんには結婚を約束した恋人もいました。
しかし、破産によって迷惑をかけたくないと、婚約を解消。
自己破産したことでローンも組めず、クレジットカードも作れなくなりました。
しかし、それだけではありませんでした。
奨学金を借りる時、美香さんは父親を連帯保証人にしていました。
そもそも奨学金は、親に経済的な余裕がないため借りるものです。
美香さんの父親も失業していました。
しかし本人が自己破産すると、その親が返済を求められるのです。
美香さん
「借りたお金は返したい気持ちが強くて。
だけど父まで自己破産させなきゃいけないというのには戸惑いとかあったんですけれども。」
父親が自己破産すれば、今度は親戚の叔父に返済が移る可能性があります。
“奨学金破産” 大学中退でさらに深刻に
奨学金破産のリスクをさらに高めるのが、大学の中退です。
専門家の調査によれば、奨学金を借りて大学を中退した場合、5割を超す人が年収200万円以下にとどまっています。
2年前に大学を中退した、貴史さん(仮名・24)です。
奨学金500万円の返済が滞っていますが、今の年収は200万円。
返す余裕はありません。
大学で経営学を学び、将来、経営者になりたいと考えていた貴史さん。
しかし、進学を目前に控えた高校3年の冬に、父親がリストラに遭いました。
貴史さんの大学時代の手帳です。
家計を支えるため、奨学金を借りた上、アルバイトをほぼ毎日行いました。
しかし、それでも授業料が支払えず、大学4年の夏、中退に追いこまれました。
今も、繰り返し届く督促状。
毎月18万円の収入から10万円を親に生活費として渡しているため、返済の余裕はありません。
貴史さん
「借金500万あんねんなという感覚はありますね。
頭の中は真っ白ですね。
これからどうしていこうというので頭がいっぱいで。」
奨学金には10年間返済を猶予する仕組みもありますが、それでも返せなければ自己破産しかありません。
貴史さんが自己破産すれば、返済は父親に移ることになります。
大学生の2人に1人が借りている奨学金。
家族に負担をかけたくないと借りたはずの奨学金で家族も追い詰められている現実、あなたはどう考えますか?
日本の未来は大丈夫? “奨学金破産”続出のなぜ
池上さん:これは学生だけの問題ではないんですね。
親世代の収入が落ちているということが、やはり根本的な問題としてあるんだろうということです。
世帯収入が減る一方、教育にかかる費用は上がっています。
結果、これが子どもたちにしわ寄せになっているというわけです。
つまり経済格差が教育の機会均等ではない格差にもつながっているという、大問題になっているんです。
優木さん:私は、池上さんが言ったように、経済の格差が教育の格差になるはずがないという中で育てられて、親にも「うちは貧乏だけど、大学行くには奨学金があるから、奨学金を借りたら行くことができるよ」って。
それが家族を苦しめることになるという発想がなかったから、それは時代が変わったということなんでしょうかね。
ここでもう一方、ゲストをご紹介します。聖学院大学の藤田孝典さんです。
そんなに昔と今の学生の状況は違う?
藤田さん:ひと言で言うと、時代は本当に変わってるという状況ですね。
雇用が激変しているという状況ですので、非正規雇用や長時間労働、ブラック企業等で神経をすり減らしてしまって病気になってしまったりとか、さまざまな事情で返済が難しくなってしまうと。
実際に33万人ぐらい、返済ができない、滞納しているという方がいらっしゃいます。
優木さん:10年猶予があってもそんな状況なんですね。
堀江さん:「奨学金」って言っているから、名前・ネーミングがよくない。
英語だとたぶん「学生ローン」。
デーブさん:「奨学金」は、返さなくていいものですよね。
堀江さん:通常は返さなくていいのが奨学金なはずなんだけど、なんか奨学金という名の学生ローンみたいな感じになってる。
だからさっきの不動産の銀行と一緒で、返済能力があるかどうかもわからないのに5~600万円貸してるでしょう。
ここがたぶん1つの問題で、なんでそんなことになっているかというと、どんどん授業料上がってるでしょ。
池上さん:私が大学生の時、国立大学の授業料って年間1万2,000円だったんですよ。
伊東:このグラフにはないんですけど、これぐらいだったんですよね、本当に安かった。
池上さん:私立大学が大体8万円ぐらいだったんですね。
とにかく私立と国立の差があり過ぎると。
これをもっと縮めるべきだっていう議論があったんですよ。
確かに差は縮まったんですけど、国立大学の学費が上がることによって差が縮まってしまった。
本末転倒なんですよね。
優木さん:国立が寄せていったんですね。
デーブさん:ただもう1つ、同時に本当の奨学金。
つまり企業とかOBがたくさんお世話になった大学、あるいは援助とか、アスリートの奨学金、スポーツ関係はほとんどないんですよ。
非常にけちくさいんですよ。
堀江さん:そうなんだけど、高すぎるから、こんなのやっぱりもう…。
デーブさん:でも育てる意味では…。
堀江さん:いや、育てるのにね、教授のなんかよく分かんない給料とか払いたくないじゃないですか。
そこはもっといいものがあったら全然支援したいと思いますけど、これは明らかに高すぎですよ。
ネットではさまざまな意見があるんですが、実はこういう意見が多いです。
「そこまでして全員大学に行く必要あるんですか?無理に大学に行くことこそ問題なんじゃないか」
あるいは「学歴社会のシステムを見直さなければ、根本的な解決にならないのではないか」という声が案外多いんですが、そこはどうですか?
堀江さん:つまり、親とか先生が「大学ぐらい、高校ぐらい行っとけ」って言うんだけど、それは親世代の常識だから、今には絶対当てはまらないんですよ。
今だったら例えば、すしアカデミーに行ってすしの握り方を3か月とかで教われるんですね。
だから、そこそこセンスがあったらすし屋に就職するぐらいできるわけ。
そのほうが全然コスパいいし…って、僕なんかは思いますけどね。
手に職つけたほうが。
デーブさん:でもそれはやっぱり、すしの伝統があるわけですよ、意味がある。
堀江さん:いやいや、でも実際3か月で、すしアカデミーとか行くと…。
デーブさん:自分が行く、すし屋は違うでしょ?
堀江さん:そんなことないですよ。
実際、修業してない人のすし屋とかにも行ったりしてますね。
藤田さん:一般論として、中・高・大卒と比較すると、やはりまだ大卒のほうが生涯賃金が多いんですね。
堀江さんとかも、中退でも別に全然問題ないという状況があって、優秀な方はそれでいいんですが、大多数の学生は普通の学生なので、成功率が高いというんですかね。
ある程度、普通に暮らしていく上で(多く稼げる)可能性が高いとすると、まだ大学に行く意味があるのではないかと。
堀江さん:コスパで考えたら、やっぱりカネかけすぎですよ。
これが半分以下だったらね…。
為末さん:大学生になれる人って3分の1ぐらいでいいんじゃないかっていうね。
そういう国って多いじゃないですか、実は。
優木さん:「大学さえ行っておけば大丈夫」みたいなものは、もう崩壊してますしね。
為末さん:オリンピアンって、少ないから尊敬されるんですよ。
大学生って多すぎて尊敬されないじゃないですか。
藤田さん:他の国と比べたら、(日本の)大学の進学率って低いんですよ。
先進諸国の中ではまだ低くて、特に貧困とか生活に困っている世帯ほど、進学率が低いんですね。
だからやっぱり、行きたいと思う方が行けないというのは不公平なんじゃないかということで。
優木さん:優秀なのに、お金がないから行けないっていうふうに選択肢が狭まるのはよくないと思うんですけど。
堀江さん:東大ぐらい行けると、さっきのように年収低くても免除される制度があるから…。
優木さん:国立はかなりありますよね。
私も学費免除取ってたんですけど、国立大学は、優秀じゃなくても親世帯の年収も提出して、そしたら授業の判定とかも一応ありますけど、成績よりも親世帯の年収を加味して学費免除の制度ってあるから、救済してくれるシステムって調べれば結構あるんですけど。
伊東:国もようやく、給付型の奨学金を支給していこうということで動きだしました。
伊東:来年度以降、低所得世帯の学生に月3万円前後の支給が決まりました。しかし、成績などで線引きされ、給付は限定的です。
実は民間や自治体レベルでも、在学中に働きながら、民間企業でアルバイトしながら返済ができてしまうという、こんな仕組みがあったんです。
介護バイト×学生で“奨学金破産”を回避!
学生を支援しながら人手不足も解消?
そんな画期的な仕組みを取り入れている介護施設です。
奨学金を借りている大学2年生の佐々木零史さん。
入学してから2年近く、ここで介護のアルバイトをしています。
大学に通いながらアルバイトでたっぷり稼ぎ、卒業と同時に奨学金の返済が完了するって、いったいどんな仕組みなんでしょうか?
この仕組み、経済的に困っている学生と人手不足に陥っている介護事業所をマッチングします。
佐々木さんの場合、国からの奨学金は240万円。
入学金などは奨学金で借りることができず、介護施設から無利子で80万円を借りました。
その代わり、佐々木さんは人材が手薄な早朝の時間帯にアルバイトをします。
早朝は時給も高く、月に16万前後、収入があります。
そこから施設に返済をしていきます。
さらに、貯まったお金で奨学金も返済できる見込みです。
佐々木さんの出勤時間は朝6時。
週6日、朝の9時まで働きます。
大学2年生 佐々木零史さん
「今から寝たきりの方の歯磨き。
口腔ケアに入ります。」
佐々木さんの1日のスケジュールです。
通っている夜間大学は夕方6時から授業が始まるため、昼間の時間を勉強や趣味の時間に活用することもできるんです。
伊東
「朝起きるのが、今何時でしたっけ?」
大学2年生 佐々木零史さん
「最初の頃はやっぱりきつかったですけど、さすがにもう慣れました。
今はあまり眠いと感じるのは少なくなってきた。」
この仕組みを考案した、奥平幹也さんです。
介護現場で早朝や深夜の時間帯に人手不足となっている点に目をつけました。
人手は足りていないけど、時給が高いアルバイト。
お金に困っているけど時間は自由な大学生。
2つをマッチングできないか。
介護施設に学生を紹介 奥平幹也さん
「その仕組みであれば、こういう進学の問題も、今も大きくなってきていると思うんですね。
そこを解消しつつ、介護の現場に働き手もうまく生み出すこともできる。」
新たな仕組みを作ったあとも、奥平さんは月に1回面談を行い、無理なく学生生活を送れているか確認しています。
介護施設に学生を紹介 奥平幹也さん
「学校の方はどう?」
大学2年生 佐々木零史さん
「勉強の時間自体はとれているんで。」
佐々木さんは、ほかにアルバイトをする必要もなく、授業も順調だといいます。
将来は、システムエンジニアになりたいと考えている佐々木さん。
卒業したあとも、奨学金返済の心配をせずに済みそうです。
大学2年生 佐々木零史さん
「お金の問題も解決できますし、非常に助かったかなと思います。
今学校で学んでいる情報系の知識を生かしつつ、介護の仕事、介護にも関われる仕事に就ければいいかなと思っています。」
この取り組みは始まったばかり。
日本の未来を背負う若者6人が、夢を追いかけています。
ぶりで援助!? 会社が返済! “奨学金”ユニーク支援
伊東:実は、いろんなユニークな奨学金制度というのが今、民間や自治体レベルで始まってまして、こちら。
「ぶり奨学金」。
これね、すごい真面目。
ふざけてるものじゃないんですよ。
これは鹿児島県の長島町という所。
町には子どもが少ないと。
じゃあ子どもが町を出てUターンをしてくれたら、奨学金の返済を免除しますよと。
じゃあ、お金はどこから持ってくるのということなんですが、この特産のぶりが1匹売れたら1円、漁協が寄付する。
で、すでに200万以上集まってるそうなんですよ。
これは眼鏡企業なんですけど、ここでは社員たちが社会人になっても奨学金を返済している姿を見て、入社後、ある社内テストを受けて合格をしたら、毎月の月々のお給料分に奨学金の返済分を多く出しますよという取り組みまでしてるんですね。
池上さん:例えばヨーロッパ、北欧に行きますと、幼稚園から大学まで学費無料ですよね。
それが当たり前だというのがある。
例えば、フィンランドでは大学まで学費が全部無料なんですけど、いったい教育目標は何ですか?と聞いたら、それは「よき納税者を育てることです」と。
大学まで学費を無料にして、きちっと教育をさせて、ちゃんと就職をして所得税が払えれば、回り回って戻ってくるんだよと。
社会が育てるんだという発想が、日本の場合はないですよね。
伊東:では、教育にどれだけ公的な支出をしているか。
大体およそ30か国以上の国と比べてみると、日本はなんと最下位から2番目なんですね。
アメリカや韓国よりも低いという数値が出ているんです。
優木さん:子どもが減ってるっていうのも、2人目3人目って子どもほしいけど、その子の将来の教育費を考えると踏み込めないという、お母さん世代の気持ちもあるんじゃないですか。
だから大学まで、例えば、安心して、自分たちの家計とは関係なく行きたければ行くことができるっていう国になれば、それは少子化にも歯止めがかかるなと思いますよね。
為末さん:やっぱり頑張って行くという方に奨学金、ローンじゃなくてね、給付でやったらいいと思いますけれども、やっぱり大学に行く前にかなり決まってるんじゃないかという感じがしていて。
だから幼稚園とか最初のほうの教育を義務化して全部無料にするとか、もうちょっと、方向が決まる前の段階がある気がしていて、そこに対して思いっきりお金を突っ込んでやっていくということが、なんとなくその方が平等というか、すべてに行き渡るんじゃないかという感じはしますけどね。
藤田さん:大学に通うという中で、大学に通ったら、ちゃんと勉強ができる環境を整備してあげてほしいんですね。
大学生、今ほとんどがアルバイトに忙しくて。
学生さんたち、ブラックバイトっていうことばもできるくらい、過酷に長時間働いて生活費と学費を稼ぐという状況ですので、深夜労働とかで1限とか2限に出てこれないというケースもあって。
せっかく大学に行ったんだったら、ちゃんと集中して勉強できる環境は整備してあげたいなと思いますよね。
優木さん:本末転倒ですよね、そこまでして行ったのに何も学ばないで卒業しちゃったら。
デーブさん:ばかげてますよ。
若い時にもっといろいろなものを吸収してほしいのに。
最後に、私たちの将来を担う若者たちの明日へのヒントはどんなポイントがありますか?
池上さん:もちろん日本の国のお金って限られてるわけですから、借金もたいへん多い中で、どこに重点的にお金をつぎ込むかってことを考えなきゃいけないですね。
それはまた高齢者にもお金がかかる、医療費にもかかる、今まさに日本という国の集中と選択が問われてる。
そして、子どもたちが日本の未来なんだってことをもっと考えなければいけないと思うんですね。
収録後、皆さんに今一番気になっているお金について聞いてみました。
為末さんの注目は、部活を指導する先生の報酬、ゼロ円!
大変さを認めてほしいそうです。
堀江さんは、どーんと1兆円。
今話題の仮想通貨・ビットコインの時価総額に興味津々。
優木さんは…?
優木まおみさん
「野菜が50円上がっていたら気になりますね。
自分の地に足をつけた生活をしていくのが大事だなと思いますね。」
デーブ・スペクターさん
「気になるのは、優木まおみさん。
第二子が生まれるから、彼女のギャラが大丈夫かなって。」
池上彰さん
「1,000兆円ですね、国がかかえる借金。
もちろん今すぐどうこうなるわけじゃないですけど、こんなに借金かかえて将来どうなるんだろうなと。
心配ですね。」
不安もあるけど、未来への夢にもつながる大切なお金。
これからもしっかりと追跡していきます。