というのは建前で、実際は、家族や友達とパーティーを開いて楽しんだり、実際は恋人とセックスしたり、気になる人を誘ってセックスしたり、クリボッチを回避するための協定を結んだ人と流れでセックスしたりする祭りである。
十二月の初め。
俺は友達も恋人もいたことがないDKだ。スクールカーストの底辺常連客だ。当然容姿が悪いし運動も苦手だし、身長165cmの低身長だ。おまけに肌が汚いので清潔感皆無だ。
自称進学校に入学したはいいが、授業に全く付いていけず早々に落ちこぼれた。
うちの両親はクリスマスを祝うような人達ではないためクリスマスパーティーを開いたことはないし、プレゼントも貰ったことが無い。クリスマスにいい思い出は無い。
いま教室で容姿の優れた友達達と話しているのが如月美紀。スクールカースト上位のグループの中心人物の黒髪ショートの清楚な女の子だ。
スポーツ万能、容姿端麗のEカップ、学力は学年トップレベル、いつもニコニコしていて誰にでも優しく、漫画の世界からやってきました。と言われても信じてしまうほどの高スペック女子だ。おまけに親が金持ち。
将来、自分の息子に、「パパ~不平等ってな~に???」と聞かれたら
「パパと彼女の基本スペックの差のことを言うんだよ^^」と答えるだろう。
子供は、「なるほど。」とすぐに納得することだろう。
さっきから、容姿の優れた彼女たちが、チラチラこっちを見てくる。
どうせ、俺君ってキモイよね~とか悪口を言い合ってグループの結束をより強固なものにしようとしてるんだろう。
そんなことを考えていると、如月美紀がこちらに向かって歩いてきた。
「ねぇ、LINEID教えてくれない?」
健全な陰キャ男子高校生なら、えなに、こいつもしかして俺のこと好きなの?と勘違いするだろう。
俺は気付いている。これが罰ゲームだということに。
「じゃあ、じゃんけんに負けたら俺君のlineidを聞くってのはどう?」
「「「え~!?いやだ~wwwww」」」
「アー負けちゃったー」
「ほら、行きなよ(笑)」
「えー嫌だなーきもーいw」
こんな流れでLINEIDを聞きに来たのだろう。
「LINEダウンロードしてないから…」俺はキョどって声が裏返らないように気を付けながら言った。
「あははは!!!ウケるんだけど!今時LINE持ってない人なんているわけないじゃん!俺君って面白いね!」
「ははは…」
こういう人間をみると、世代間だけでなく世代内にも格差が歴然としてあるということを思い知らされる。
しかし、交換をしただけで、向こうからメッセージが来ることは無かった。やはりあれは罰ゲームだったのだろう。
こっちからメッセージを送ったら、笑いものにされるところだった。危ないところだった。
でも交換してよかった。彼女のLINEIDを見ると生きる気力が湧いてくる。
俺は可愛い女の子のLINEIDを持ってるんだぞ!交換をせがまれたんだぞ!だから俺はすごい!おらおらどけどけ愚民ども!かわいい子のLINEIDを持ってる俺様のお通りだ!と街中でも強気でいられる。
この世界に自分の存在が肯定されていると思えるから生きる自信が付くのだ。
あっという間にクリスマスイブになった。
夜七時。
俺は特に予定が無いし友達も恋人もいないので家でゴロゴロしていた。すると、
「いえーい俺君!クリスマスイブ、楽しんでる?(((o(*゚▽゚*)o)))」楽しそうに友達とはしゃいでる如月の写真がLINEで送られてきた。
取り合えず早くなんか返信しなきゃ。ラインどころかメールすらまともにしたことないから、どう返信したらいいのかわからない。
よくわかんないから取り合えず「こマ?」っと…。
「ん?なんか使い方おかしくない?Σ(・□・;)」
「マ?」
「あ、それは正しい(/・ω・)/」
「なんか用?」
一瞬ドキッとした。落ち着け。これは罠だ。
俺の如月への好意的な態度をシャンパンのつまみにしようとしているに違いない。
「やっぱり空いてるってw予想通りw」
「ちょwこいつ誘いに乗ってきたんだけどwきもーいw」
俺は騙されないぞ。彼女どころか友達すらいない歴=年齢の人間不信が板についてる筋金入りの陰キャを舐めてはいけない。
「えー残念(´・ω・`)俺君とデートしたいなーって思ってたのに」
「それ、罰ゲームで書かされてるんだろ?そういうのいらないから」
「罰ゲーム?なにそれ?(・・?」
「あの時、LINEIDを聞いたのはゲームに負けたからだろ?」
「んー(-ω-;)なんかいろいろ誤解されてるね私(;゚Д゚)」
どうやらLINEで本性を現す気はないようだ。
どうせ騙されるならとことん騙されてやって、最後に化けの皮を剥いでやる。
「クリスマスにデートの予定があるっていうのは嘘だ。明日、俺とデートしよう」
「ほんとうに!?やったー(^▽^)じゃあ、明日の午前十時に〇×駅で待ち合わせね!」
クリスマス当日、朝七時。
夢の中でサンタクロースとトナカイがセックスする夢を見ていたら、現実世界のLINEが鳴った。
「おーい!起きてるかー!朝だぞー!('ω')ノ」
如月美紀からだ。これが女の子からのおはようLINEか…女の子が自分の人生の貴重な時間を割いて自分で考えながらスマホをタップして俺だけのためにわざわざ書いてくれた文章か…。感慨深いものがある。
うわ、こいつ既読スルー?最近ちょづいてね?と思われないように急いで返信した。
「爆睡中です」
「起きてるじゃんΣ(・ω・ノ)ノ!」
「なに」
「昨日、クリスマスデートの約束したじゃん!?忘れちゃったの?(´;ω;`)」
「あぁ、あれネタじゃなかったのか」
「ネタじゃないよ!午前10時に〇×駅の前で待ってるからね!遅れたら激おこだぞー(#^ω^)」
「うん。すぐ行く。走っていく!」
「ちょ!まだ早いよ(;゚Д゚)私も準備してないし(*ノωノ)」
さて、出かける準備をするか。
あれ…ユニクロかジーユーの服しかない…。デートにこれは失礼じゃないか?
ワックスとか付けたほうがいいのか?香水は?ネックレスは?救急キットは?
いや、余計なことは止めておこう。初心者が余計なことをすると大体失敗する。料理と同じだ。
結局、全身ユニクロの安っぽいコーデになった。
風呂に入ったし、歯は磨いたし、爪は切ったし、フリスクは噛んだ。ハンカチとティッシュは持ったし準備オーケーだ。
午前九時。
以前はカップルを見るたびに殺意と嫉妬の感情に振り回されていたけど、今は違う。
カップルを見ると心がポカポカし、自然と笑みがこぼれる。みんなが幸せになればいいなーと思う。
そうだ。どうせ騙されるなら思いっきり騙されよう。一生に一度だけのクリスマスデートなんだし目一杯楽しもう。
午前十時。
「だーれだ!」
「き、如月」
胸が背中に当たってる。異常に早くなっている心臓の音を聞かれて、(うわ…何こいつ、女の子に触れられたくらいで興奮してんの?…もしかして童貞?きっも…)と思われないように、急いで手を払い、振り返った。
「よっ!待った?」
彼女は、なんかクリーム色のニット?みたいな良い感じの奴を着てる。スカートはいい感じの短さの黒っぽい奴。
靴も黒のいい感じの奴。全体的にふわっとしてていい感じで可愛い。
「いや、今来たところだ」
「そっか!よかった!じゃあ…行こっか!」
「どこにいくんだ?」
「近くにあるのか?」
「うん!すぐそこにあるよ!行こ!」
そうしてショッピングモールに向かって歩くこと五分。
「ねぇ、手、繋ぐ?」
「お、おう」
「そっちじゃなくてこっち!」
如月は俺の指と自分の指を絡めるように手をつないだ。これが巷で噂の恋人つなぎか。
如月は、おばあさんの声真似をしながら、にやけ顔で言った。可愛い。
「つーか、なんで俺を誘ったんだ?俺みたいなクラスで目立たない奴より、もっといい奴いただろ」
「んー何となく?今まで話したことない人とデートするのって面白そうじゃない?」
「え?デートしたことない?へー!じゃあ人生初デートだ!おめでとう!」
「あ、ありがとうございます…」
「どういたしまして~。えへへ~」
「ねぇ、知ってる?」
なんなの豆しばなの?
「うちのクラスの斎藤さんって足立先生と付き合ってるらしいよ」
「へ、へ~…」
誰?容姿のいい人以外のクラスメイトの顔と名前がよくわからない。
覚えてないということは容姿がよくないのだろう。
「はい!着きました~。ここがショッピングモールです!そしてあの店が私のお気に入りです!さっ!行きましょ行きましょ!」
俺は如月に手を引かれて店内に入った。
「あ!これ可愛いー!欲しい~!あ、こっちもいいな~」
そして一つを手に取り、
「俺君!どうこれ?似合うと思う?」
「本当に!?俺君が似合うっていうなら買おうかな~。あ…」
「どうした?」
「このアウター十万円もする…」
「金持ってないのか?」
「一応持ってきたけど十万も持ってないよ…」
デートでいくら使うのか分からなかったので念には念をいれて五十万円持ってきていた。お年玉とおこずかいを集めたものだ。
なぜなら、一週間、一日に三回話しかけられたら脈ありという情報をネットで見て、容姿の優れた女の子に告白したら、それ以来、彼女は口をきいてくれなくなったし、クラス替えまでヤンキーにネタにされ馬鹿にされ続けたからだ。
「今買えなかったらもう二度と手に入らないかも…」
「そういうもんなのか」
「そうだよ俺君!人も服も一期一会なのだぞ!大切にしなきゃ!」
「でも金ないんだろ?」
「そうだけど…。あ~欲しいな~。もし買ってくれる人が居たら、その人のこと好きになっちゃうんだけどな~」
買お。
「…俺が買おうか?」
「ほら、あれだよ。クリスマスプレゼントってことで」
「本当にいいの…?」
「おう」
「うれしい!ありがとう~!」
ぎゅ~っと強く抱きしめられた。胸が当たっていたしいい匂いがした。勃起した。
「じゃあ、試着するね!」
しばらく待ってると
「俺君のもあるよ!はいこれ!着てみる?」
「いや、俺はちょっと…」
「着替え終わりました」
「おお!はやいね!」
「どうっすかね」
「うん!似合ってるよ!」
「じゃあ、また着替えるんで」
「まって!」
俺たちは店員に怒られる前に急いで着替えた。
そして、如月はアウターのサイズを確かめた。どうやら問題はなさそうだ。
「じゃあ、それ買って店を出ようぜ」
「うん!あ…これ可愛い!」
そのアウターの値札を見たら二十万円だった。
「さすがに二十万はプレゼントでき…」
「実は今日、家に親居ないんだー。一人で帰るのは、ちょっと寂しいかも…」
「ありがとうございましたー」
店員さんの明るい声を背中で聞き、俺は勃起しながら如月と店を出た。
「俺君!素敵なクリスマスプレゼントありがとう!」
「お、おう」
三十万円の出費は痛かったが、如月との夜の性の時間を買ったと思えば安いものだろう。
さてさて、どっちの家でしよう?それともラブホテル?あ、コンドーム買わなきゃな。あーでもいらないんじゃないかクリスマスだし。
なんにしろ、夜までまだ時間はある。デートしながらゆっくりと考えよう。
「あ!もうこんな時間!俺君といると時間があっという間にすぎちゃうね!じゃあね、俺君!今日は楽しかったよ!」
「え?もう?まだ昼だぞ?」
時刻は十二時すぎだった。
「うん。今日の夜、彼氏とクリスマスパーティーするんだ!」
「彼氏って…」
「読者モデルやってて、ちょーかっこいいの!このサンタコスは彼氏に頼まれて買ったんだ!似合うか不安だったんだけど、俺君が似合うって言ってくれたから安心して彼氏に見せられるよ!ありがとうね!」
「あぁ…」あぁ…
「あと、服のプレゼントもありがとう!彼氏がこういう服好きって言ってたから欲しかったんだけど、高くて手が出なかったんだよね~ありがとうね!じゃあね、俺君!ばいばーい」
そういって彼女は冬の街の雑踏の中に消えていったのでした。
しかし、彼女が消えても彼女の手のぬくもりと抱きしめられた記憶はアトピーゾンビの心の奥に、いつまでもいつまでも残り続けるのでした。おしまい。
自分で読み返してみたらきめええええええええええええ!!! 完全にキモオタの妄想じゃん。 完全感覚キモータじゃん。 おえええええええええええええええええ!!!