穢戯し神の神託 ━ 鬼 ━
2016.9.17誤字修正
神山の麓にある鬼の郷は長の強い結界に護られている。だが神山の中腹、枯れの谷の小さな村、村というのもおこがましい、粗末で小さな家が6軒あるだけのそこに結界を張れるものなどいなかった。神山の頂上に至る途中の休憩所としての役目をになうための村は魔物の襲撃にあいあっけなく蹂躙された。消して弱くはない村人だが闇に落ちた地龍には敵わなかった。
谷の防人であった鬼族の夫婦は子を地下にある食料庫に押し込め「何があっても外には出るな」と言い含めた。
子供の自分にはなんの力も無く足手纏いと言うことは承知している。ただじっと父母がこの暗くて狭い食料庫の戸を開けてくれるのを待つだけだった。激しい地鳴りと衝撃音にぎゅっと眼と耳を塞ぎ小さく蹲り過ぎるのを待つ。
どれくらい時が経ったのろうか、戸の隙間から光が差し込み、ギシリ、ミシリと音を立て重い扉が取りさらわれた。
「いたぞ、子供だ」
若々しく凛とした声の主の姿は逆光と長く暗闇にいたせいでよく見えなかった。
「手を」
言われるがまま細く白い手を伸ばすと、硬く力強い手に握られ引き上げられた。ただ力尽くで引き上げられたのでは無く、術による風邪がふわりと小さなこの身を持ち上げた。
明るさに慣れず眼を擦る。
「名は、歳はいくつだ」
コシコシと眼をこすりながら問われたことに答える。
「朱莉、十二」
「そうか、朱莉か、良い名だ。俺は鐳鋠だ、よろしくな。歳は十六だ」
そう言って朱莉の頭をクシャリと撫でる。父母以外に朱莉の頭に触れるものはいなかったので、朱莉はビクリと身を震わせた。
「若、他にはいないようです。その子が唯一の生き残りのようで……角なしですか?」
『角なし』その言葉に朱莉の身はまたもビクリと震える。鐳鋠は朱莉を抱き上げ目線を自分の高さに合わせにっこりと微笑むと、また頭を撫でた。鬼族でありながら角のない頭は、他の鬼族に忌まれ父母ですら滅多に触れず、ましてや他に触れた者など皆無であったのだ。
「おう、十二だそうだぞ。な、朱莉」
「え、十二…」
鬼の一族に稀に産まれる『角なし』は鬼としての身体的特徴、生命力、剛力と体躯を持たず、人族に似た姿を持つ。鬼族でも他種族、主に人族と交わる者もいるが、人族の血を多く引いた半族とは異なり、色素の薄い白い肌、銀の髪、赤い瞳を持って産まれるため『半族』と『角なし』は明確に区別される。何より『角なし』はその脆弱さゆえ十を越して生き抜く者はない。
だが朱莉は十二、『角なし』としての限の歳を越しているのだ。
「そのような報告は聴いておりませなんだ、まこと『角なし』でしょうか」
男の言うことはもっともだ、短い命ゆえと優しかった枯れの谷の者は、十を超えてからは誰も近付かなくなったのだ。
「ああ、朱莉からはちゃんと鬼の気が感じられる、間違いなく鬼族だ、でなければ俺は見つけられなかったぞ」
朱莉は何度も瞬きをし、自分を抱き上げる青年ー鐳鋠ーを見つめる。鬼族特有の赤黒い肌より、褐色に近い肌と多くの鬼族の持つ黒髪と違い陽の光を集めたような金の髪、他のものに比べやや小柄な体軀も多くの鬼族とは異なった姿をしていた。そして鬼族の証である額の両端から伸びる角。鐳鋠には額の上から伸びる一回り大きな角の他に耳の上にも角があり、計四本の角を持つ上位鬼であった。
ある時、朱莉は鐳鋠に言ったことがある。
「鐳鋠はずるい、私は一本もないのに四本もーっ」
あれから6年が経ち、いつ尽きるかもわからぬ命に怯えていた。だが兆しは見えず今日に至る。そしてながらえた命を、恩を還すために朱莉は自らの意思で此処に、神山の頂上にある神殿の祭壇に闇を払う贄としてここにいる。
6年前、闇に堕ちた地龍は発端でしかなかった。闇は多くを飲み込み広がってゆく。
獣だけで無く、人族や獣族、精霊族、鬼族の者も闇に堕ち命を蹂躙し、さらに闇を拡げて行く。このままでは世界が闇に蝕まれてしまう。
闇を打ち払う為、神の導きにより人族の青年は聖剣と聖盾を手にし、獣族の娘は聖獣をその身に降ろす器となり、精霊族の少年は四精霊の魂を得る。
鬼族の若長はさらなる力と無限の治癒力、膨大な鬼の気とそれを操る力を手に入れねばならぬ。
神山の神殿に一族の者の魂を贄として捧げ、そしてーーー
神の信託を受け神殿の祭壇に座っているとどこからか風邪が吹き銀の髪をなびかせ去っていく。
一族の中で戦う為のなんの力も持たぬ『角なし』である自分が、この歳まで生きながらえたのは意味があったのだと、無意味では無かったのだと朱莉は微笑む。
「何故笑う、朱莉…お前は…怖くはないのか」
振り向くとそこに鐳鋠が、悔しさに顔を歪ませていた。
「俺が、もっと強ければ…もっと…」
鬼族の中で一番の、歴代の長をしのぐ力を持つ鐳鋠ですら敵わぬ闇。その闇を払う力と、それを得る方法を神が信託として4種族に知らしめた。すでに人族、獣族、妖精族の三人は力を手に入れ、あとは鬼族、鐳鋠が力を手に入れれば、闇の元凶を討ち滅ぼすことができる。
朱莉は両手でそっと鐳鋠の頬を包み優しく撫でる。
「私は嬉しいよ。『角なし』で役立たずの私が、闇を打ち払う力になれる……ううん、違う。鐳鋠の…、鐳鋠の力になれることが凄く嬉しい」
そう言い鐳鋠に微笑みかける。
「朱莉…」
鐳鋠は自分の頬を包む朱莉の白く細い手を己の大きく硬い手で握りしめた。
「だから…ねえ、鐳鋠。私を…
私を喰らって」
白き娘の魂を捧げその身を喰らえ
神が鬼族に示した神託
鐳鋠は朱莉の手を引き寄せその身を抱き寄せる。柔らかな小さな唇に己の唇を押し付け、喰み吸い付く。
小さく開かれた隙間から舌を差し込み、朱莉の舌を嬲り、吸い、甘い唾液を啜る。朱莉は細く白い手を鐳鋠の髪に差し込み、絡め引き寄せる。
「あぁ、ふ、あ…」
吐息と舌と互いの唾液が絡み、交じり静寂に包まれた祭壇に水音を響かせる。二人はそのまま祭壇に身を横たえお互いの身体を確かめ合うようにさすり、撫で、包む。肌けられた朱莉の胸元に鐳鋠は顔を埋め、ハリのある双丘を揉みしだく。
「あっ、やぁ…」
小さく色付く頂きを指で潰し、弾くと朱莉の口から声が漏れた。もう片方の頂きを舌で円を描くように嬲り鐳鋠の唾液でテラリと光る蕾を喰み吸い上げる。鐳鋠によって与えられた刺激は朱莉の躰内を電流のように駆け巡り秘めた場所をぬるりと濡らす。
「んん、ら、鐳鋠…」
白い肌が紅潮し、潤んだ朱莉の瞳が艶かしく鐳鋠を煽る。
指と舌とで刺激を与えられた二つの蕾は紅くそそり勃ちぷっくりと存在を主張する。
「朱莉、朱莉…俺の…朱莉」
鐳鋠の手は朱莉の背と腰に回され、いつの間にか衣類を剥がされた朱莉の裸身は隙間なく鐳鋠の身体に押し付けられる。胸の膨らみは鐳鋠の厚い胸板に押し潰され、頂は鐳鋠のそれに擦り付けられる。合わされた唇は離れることを拒み、絡みあい、ちゅく、ちゅ、と音を立て、溢れたどちらのものともわからぬ唾液が朱莉の顎を伝い滴り落ちる。朱莉の両手は鐳鋠にしがみつくつこうとその広く逞しい背を彷徨う。
鐳鋠は朱莉の柔らかな下唇を人舐めした後、鋭い犬歯で傷をつけた。
「っつぁ」
痛みに思わず声を漏らした朱莉の唇から紅い鮮血が滴るさまを見ながら、己の唇を噛み傷をつける。両手を朱莉の頭の横につき、上から深紅の瞳を除けばそれは金の光彩を纏い縦に割れた瞳孔を覗き返す。
ポタリ、ポタリと鐳鋠のの唇から滴り落ちた血が朱莉の唇を二人の鮮血で紅く染める。
二人はお互いの瞳を見つめ合ったまま唇を重ね、血と唾液と魂を混じり合わせ味わう。
それは鬼族の婚姻の儀式であった。
一族で最弱、劣種である『角なし』の朱莉と、若長(現長の息子で次期長)であり上位種である鐳鋠。どんな惹かれあったとしても二人が結ばれることは族の未来の為みとめられるこは無かった。
だが闇を打つ力を得るために、今宵の一夜だけ二人に時間が与えられた。
一夜、僅かな時間二人は恋人で、伴侶で、番となることを許された。
明けの光が神殿に差し込む頃、悲鳴にも似た咆哮が山に響く。
もしも、その咆哮の主を探し神殿を覗くものがあれば、そこに銀の髪の首を抱き、両眼より血の涙を流す鬼を見つけただろう。そして神殿から聞こえる血を啜り、肉を貪り、骨を噛み砕く音に恐怖しただろう。
喰らうたびに鬼の額中央から黒く大きな角が伸びる。屍肉を喰らい終わった時、鬼の額には他の四本に比べ大きな角が力をはなっていた。
のちに救世の英傑と呼ばれる四人の若者が、神の啓示に従い世界に蔓延る闇の元凶を討ち祓う。
一人は人族の青年、聖剣と聖盾を手にした赤髪の騎士
一人は兎獣人の娘、その身にに四聖獣ー 玄武、朱雀、青龍、白虎を降臨させし桃色髪の巫女
一人は森妖精族の少年、四精霊ー サラマンダー、グノーシス、ウィンディーネ、シルフィードの力を纏し緑髪の少年魔術師
そして残るは鬼族の若長、強大な力と治癒力、鬼の気を操る褐色の肌に金の髪、五本の角を持つ戦士。
彼の持つ銀の髪で編まれた御守りは幾多の危機から彼を護り決してその身から離すことは無かったと言われている。
闇との戦いが終わったのちに鬼族の戦士は郷には戻らず姿を消した。
一説には彼は闇の力を得て騎士の青年と共に冥府の門をくぐったとも伝えられている。
実は神様がゲスい世界
☆聖剣と聖盾
最も近しい者の魂を神に捧げ肉体を素材として炉に生きたまま放り込み生成される。
人族の青年は両親を亡くし二つ下の妹と四つ下の弟と寄り添って生きてきた。
二人に楽をさせてやりたいという思いから騎士を目指して励んでいた。
そんな兄を思い、妹は兄を守る盾、弟は兄の力となる剣へと思いを込め炉に飛び込む。
☆四聖獣
獣人の娘は四聖獣の力を得る為その四肢を四聖獣に喰わせる。四肢を喰われる間、意識を失えば聖獣を従わせられない。生きたまま四肢を喰われ、その激痛と恐怖を魂に刻む。
☆四精霊
妖精族の少年は四精霊の魂を得る代わりに己の魂を四精霊に与えなければならない。
四精霊の力を得た結果、少年は魂を喰われ自我を失くしただ戦うだけの機械と化した。
ゲス神の目的は人の恐怖、苦痛、絶望を味わう事、その者が強ければ強いほどそれは甘露であった。
神に捧げられた魂は冥府へと落ちる。死を司る神は愛する者を求める彼らを黄泉へと招き捧げられた魂との再会の機会を与えるが………
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