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王道でいこう! 作者:鮭秋刀魚
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奪う者、奪われる者でいこう…

朝が来てテントを片付ける
ちなみに俺はリムの裏拳をくらって、朝リムに起こされるまで眠っていたらしい
自分でやっといて起こす時に俺に
「なぜこんな所で眠っている!ちゃんと寝ないと疲れがとれんぞ!!」
と叱られた、理不尽すぎるよ…トホホ



あれから二日
盗賊に襲われたとされる、村の近くまで来た(盗賊達が移動した情報を近くの村で聞いた)
「なんか村の方から煙が立ちこめてません?」
遠目からだが火事でも起きたのか?
「ん…そのようだ。盗賊連中がやったんだろう」
特に気にしてない風に話すリム
見せしめってことか?しょうもない連中だ
「急ぎましょう!」
「そうだな…」

村の入り口まで来た
入り口には男二人がいた
一人はビクビクした様子でもう一人が強気だが内心ビクビクしているのがわかる
「な、何か用か!この村にはもう何もない!引き返せ!」
げっそりとした顔で相当参っているみたいだな
「落ち着け、我々は冒険者だ。」
動揺している男を諭すリム
見た目、子供と女だというのにこの反応、盗賊達はどんな酷い事をしたんだ?
「冒険者?ギルドの連中め!必要ないと言っているのに余計な事を!」
クソッと悪態つく男
必要ない?どういう事だ?
「ギルドから派遣された訳ではないが…「はぁ?だったら何しに来た!去れ!!」
言葉を遮られてリムがイラついているのがわかる
「おい…助けてやろうと言うのだ…早く話を聞かせろ!!」
殺気だって男達を威圧する
これじゃあ俺達が悪者みたいだな…

「リムさん、落ち着いて。」
「うるさい!このマヌケども…!」
ヒィと悲鳴をあげガクガクと震える男達
なんとかリムをなだめ話を進める
「俺達はギルドから派遣されたわけじゃないけど、その人達より期待出来ると思います」
「本当に必要は…い、いやわ、わかった…案内する…いやします」
怯えたようにチラッとリムを見る男
案内しなければ殺されるだけだからな…哀れすぎて涙が出る

村を歩くと所々家が焼かれ暴力を振るわれたのか顔や身体にアザが出来ている村民が多い
歩いている俺達を見る、村民達の目は何処かトゲがあるように感じる
この世界に来てこんな目を浴びせられたのは初めてだった
なんだか申し訳ない気分にさせられる…
「アカシャ、気にするな。その感情に意味はない」
村民達の不の感情に呑まれそうになる俺にリムが声をかけてくれた
「う、うん…」
辛うじて返事を返したがやっぱり嫌だだな、こういう人間の視線は…

「こちらです。どうぞ…」
先ほどと違い、敬語になっている男
何故か燃え尽きて炭になっている家に案内された
皆、普通に入っていくので俺もそれにならって入っていく
辛うじて家の形を保っているがいつ崩れるのかわからない、何か焼けた変な匂いがする
灰家に入ると村長らしきに人間と小さな二人の子供そして…
人間の丸焼きがそこにはあった。
「ゔっ…オエェェェェ…」
俺は吐いた。家に充満していた変な匂いは人間が焼かれた匂いだったのだ…
今朝食べた、コンビーフが勢いよく出る
焼かれたソレは逃げられないように犬の首輪を首に付けられ、抵抗したのか身体が変な状態でピタッとがそこで止まっている

「さて、話を始めようか?必要はないとはどういう事か?何があって、盗賊達は何処へ行ったのか聞かせてもらおう」
吐いている俺を無視し会話を進めるリム
何も感じないのか?いや慣れているのか…
俺の周りの世界が優しかっただけで本来こういう事が横行しているのが当たり前かもしれない
「冒険者と聞いておりますが本当に我々には必要がないのです。ですからこの村を忘れ帰って頂きたい」
「村をここまでされて必要ないとは…まあいい、関係ないな。私達は盗賊を狩りに来たんだ、お前達の意思関係なくギルドから賞金が出る。それだけだよ、我々がここに来たのは」
そう冷徹に吐き捨てるリム
「…。さすがにここで話すのは貴方方に申し訳ない…場所を変えましょう。お連れの方は大丈夫ですかな?」
有無を言わせないリムの様子に諦めたのか、俺に気をつかいながら灰家から場所を変えようとただす村長らしき人

「フン!これか?問題ない。さっさと案内しろ」
鬼かこの人は…恨めしそうにリムを見る
「わかりました。レリ、ルリもう良いだろう?シーリンとハサンを眠らせてやりなさい」
シーリンとハサン?この子達の両親か?遺体は一つみたいだが…よく見ると子供達の近くにもう一人分の遺体があった
「うん…ルリ?いこ?」涙に濡れそれでも、もう一人の子を諭してその場を離れようと(うなが)すレリという子
「ママァ…パパァ…おやすみなさい…」
グスッと大量に涙を流し続けるルリという子
それを見るだけで心に来る…
痛いな心が…
痛い…

なんとか自身で立ち上がる。これ以上助ける人達に情けない姿を晒したくなかった

比較的まともな状態の家に場所に移動した
少し心が落ち着いて来た
「私はこの村の村長をさせてもらっているラームと申します」
頭を下げる村長
「それで何があった?」
椅子に座り開始早々に聞くリム
「はい。三日ぐらい前に奴等は突然村に現れ、村の食料、金品、女を略奪していきました。当然抵抗はしましたが勝てず…我々にギルドには報告するな、貢ぎ物を毎月用意するようにと言い、村から去りました」
「お前達は何も対策はしていなかったのか?」
確かリムが言うには十日ぐらい前から盗賊連中が暴れてると噂が流れていたと言っていたな
うちの村でも噂が聞こえるならこの村の連中が聞いてない訳がない

「無論、我々も盗賊達の噂は聞いておりました。ただ我々の村には元冒険者のハサンと数人の元冒険者がおりまして、彼等も実際何回かこの村の危機を救っていましたので我々も強い信頼を寄せていたのです。」
ハサンていうのはさっきの子供達の親か…うちの村みたいにモンスターを自分の村で処理していたのか
彼等も村を救ってきた自負があるし、そこいらの盗賊にやられるとは思わなかったのかもしれない

「そして運悪く、その時モンスターが村の近くで繁殖しておりまして。その対応にハサンともう一人の方が村から離れました。勿論、村に数人の元冒険者達を残していきましたが奴等に殺されてしまいました…」
偶然、モンスターが繁殖して。偶然、離れていた時に村が襲われたのか?出来過ぎじゃないか?俺たちの顔で察しのか
「一部の村民が彼等を疑い名指しでハサンともう一人のケビンを批判しました。当然ハサン達は違うと反論し、自分達で盗賊達を皆殺しすると言い。実際に盗賊を数人殺した証拠を持って帰りました」
「皆殺しには出来なかったのか?」
「はい。ハサンとケビンだけではそれが限界だったと言ってギルドに応援を頼もうと告げました。実際にギルドから数人の冒険者を呼び、彼等と共に盗賊討伐に赴きましたが結局討伐出来ず。傷だらけの状態のハサンを連れ盗賊数人が村を訪れました…ギルドに通報したと激昂した盗賊のリーダーの男が、我々の目の前でハサンの左腕を切断しハサンを連れて彼の家に向かいました…その後は知りません…我々は余りの恐怖で家に閉じこもり耳を閉じました…」ガクガクも震える村長
俺は胸くその悪さを感じ顔をしかめる

「それから?」まだ何かあるだろう?と聞き出すリム
「っ…朝が来て盗賊達は笑いながら、もう我々には逆らうな、じゃなければまたこんな事が起きると告げ去りました。我々は去ったのを確認してハサンの自宅に向かいました…そこには焼かれた家と焼かれたシーリン、ハサンがいました」
「ん?その子達は何処にいたんだ?」
「盗賊達に気づいたシーリンが家の貯蔵庫に二人を押し込めたそうです…特別な作りになっているのか、貯蔵庫には傷一つありませんでした」
運がいいのか悪いのか子供達は生き残った

「それで?」意地悪くさらに聞くリム
「もう何もありません!!説明したはずです!だからこの村には冒険者は必要ないんです!帰ってください。お願いします!!」
頭を下げる村長、心からの願いなんだろう。それでは何も変わらないと分かるだろうに
どうするべきかなんて悩む必要もない、クズ共を片付けるべきだ
この村を喰い尽くした盗賊は次の村を、襲うだけだけだし
いずれうちの村まで来るのはわかりきってる
「話にならんな。」そう言って立ち上がって家から出ていこうとする
開いたドアの前にハサンの子供達がいた
「パパとママね?あいつらに酷い事されたの…いっぱい、いっぱい酷い事されたんだよ?」
レリが泣きながら説明してくれた話はとても人間がするとは思えない盗賊達の所業の数々だった
羽交締めにされたハサンの前でシーリンを数人で犯し。
シーリンの前でハサンの首を切り、そのままシーリンを犯し続けた
最後には首輪をシーリンに付け生きたまま燃やしたのだ



家から出てドアを開けると村の中心で亡くなったシーリンとハサンの火葬をしていた
二人の遺体はまだ人の形をしていたからだろうか?
その火を見つめる、二人の子供達。レリとルリ二人がどんな気持ちでその火を見ているのか想像も出来ない

リムがレリとルリを体に寄せ抱き締める

俺はそれを見て静かに心に火を灯す
「ゴミ共が…殺してやる…必ず一匹残らず苦しみを与えて殺す…」
こんな話どんな人間でも殺意がわく、この世界のありとあらゆる醜さを凝縮したものが奴等だ
冷たい炎がメラメラと燃えさかる
「必ず…奴等を…」
+注意+
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